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マイカーは元路線バス オーナーに聞く「普段どんな風に使ってるんですか?」

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 世の中には、バス好きが高じて自身でバスを所有する「自家用バス」ユーザーがいます。マイカーとなるバスは、人によって様々。

 その中で、小さい頃から憧れていた形式の元路線バスを手に入れ、愛車としている八良(はちよし)さんに、普段のバスライフをうかがいました。

  •  青森県八戸市出身の八良さんは、小さい頃に利用していた八戸市営バスがバス好きの原点という方。とりわけ富士重工(現:SUBARU)の車体を架装したバスが好きで、苦労を重ねて小学生時代からの夢だった富士重工「8E(R18型E)」車体の元路線バスを手に入れました。

     自家用バスユーザーの中には、普段使いの乗用車を所有している方もいますが、八良さんの場合はバスをメインの車として愛用。田舎ということもあるようですが「雨の日の買い物などに使っていることが特殊すぎると思います。都会じゃできないですね(笑)」と語ってくれました。

    スーパーへ買い物に来たところ(八良さん提供)

     元路線バスをマイカーにする際、八良さんが一番気を付けたのが「実際のバス事業者に迷惑をかけない」こと。「行き先幕は基本『回送車』表示で走っています。塗装も全国の事業者を調べて、かぶらないカラーリングを必死に研究しました(笑)」と、細心の注意を払っているそうです。

    カラーリングの様子(八良さん提供)

     それでも、遠くから近づいてくる姿は路線バスそのものなので、停留所では一瞬勘違いされることもあるんだとか。

     「ほとんどは『回送車』表示で気づいてくれますが、停留所で座って読書していた学生さんが慌てて立ち上がったり、先月は男性が手を挙げて乗ろうとしたり……そんな時は頭を下げて、申し訳なさそうに通過します(笑)」

     時にはバス会社に勤務するご友人が運転されることもあるそうなのですが、停留所に人を見かけると反射的に止まろうとしてしまうこともあるとか。つい、仕事で乗務している時のクセが出てしまうようですね。

     考え方によっては、バスというものは「巨大なワンボックスカー」と見ることもできます。広い室内空間ゆえ、ご友人の引っ越しなど、大荷物の移動を手伝うことも多いそうです。手すりに服をかけたり、床に置きづらい荷物は座席に置いたりと、柔軟に対応できる点も好評なんだとか。

    引越し荷物を積んだところ(八良さん提供)

     ご友人からは「荷台と違って、乗車空間に荷物があると安心だなんて言われます」と八良さん。自転車も楽々入る大空間の室内は、雨風をしのげるだけでなく、荷物の落下や盗難を防ぐ効果もありそうですね。

     また、八良さん自身はバスの車内を温室代わりにすることもあるといいます。寒い夜間、車内に野菜の苗を入れておき、霜などの被害から守りつつ育成する様子も見せてもらいました。

    車内に苗を置き霜害を防ぐ(八良さん提供)

     アウトドアでもバスは活躍。乗り入れ可能なキャンプ場で、オートキャンプを楽しむことも。バスの横にテントを設営すると、まるでテントとバンガローが併設されているかのようです。

    バスでのオートキャンプ(八良さん提供)

     八良さんにとって、現在の愛車は長年片思いを続けていた初恋の人のような存在。思い入れは深いようです。

     「やっぱり、夢見ていた富士重工の車体を身近に置いて眺めているだけで顔が緩んじゃいます(笑)。家で飲んだ後、酔い覚ましに8Eの座席に腰掛けてぼーっと過ごしたりします。これがまた贅沢な時間なんです」

    戦車を手伝うご友人(八良さん提供)

     バスを愛車にしたことにより、これまで以上に人との繋がりも増えたそうです。

     「まず友人たちが協力メンバーとして清掃やメンテナンス、カスタマイズなどを手伝ってくれていて、よく一緒にバスで出かけたりもします」

    車内で食事(八良さん提供)

     ほかにも、同じ自家用バスオーナーとの交流も少しずつ増えているとのこと。オフ会で楽しい時間を共に過ごす機会は、普段とはまた違った良さがあるんでしょうね。「道の駅などで休憩しているだけでも、本職のバス運転士の方や車好きの方と仲良くなれたりもします」バスは人との縁を繋ぐ存在のようです。

     とはいえ、バスをマイカーにするには、それなりの出費も必要。特に八良さんは、2003年にバス製造をやめた富士重工製の車体を探して手に入れただけに、いわゆる「旧車」を維持する苦労も加わります。

     なんでも、八良さんが所有しているような中型路線バスは、国内の中古市場で数が少なく、手に入れにくいんだとか。ようやく入手したこ8Eも、故障して廃車になるところを引き取ったので、その修理や現行の規制に合わせる改修に、ちょっと高めの乗用車が買えるくらいのお金がかかったといいます。

     日常的なメンテナンスはご自身やご友人の手で済ませるそうですが、その後もタイヤ交換を含め、経年車ゆえの故障が各所で発生し、随分と整備工場のお世話になっているといいます。ただ、旧車ならではの利点として、機械系の部品が多くパーツ代は最近のバスより若干安いことも挙げてくれました。

    日常的なメンテナンスは自分で(八良さん提供)

     もし、バス所有に興味を持たれた方がいたら、という問いには「バス1台をきっかけに楽しい出会いがたくさんあります」との言葉をいただきました。さらにアドバイスとして「故障や修理のことを考えると、車種に強いこだわりがなければ、新しめのバスの方が故障も少なく維持しやすいと思います」とのこと。

     最後に「これからも人との出会いを大切にしながら、自家用バスライフをエンジョイしていきたいです」と語ってくれた八良さん。YouTubeチャンネル「千城バス」も開設しており、自家用バスライフを動画でも発信しています。

    <記事化協力>
    八良さん(Twitter:@ilove7e/ホームページ:http://fuji8e.ko-me.com/)

    (咲村珠樹)

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