小学校の国語教科書に載っていた「スイミー」を覚えていますか?小さな魚であるスイミーが仲間と群れを作って「大きな魚」となり、敵を撃退するというお話はファンタジックで、現実にはありえないと思えてしまいます。

 しかし、実際に魚の大群は大きな魚のように見えることがあるんです。水族館でその瞬間を捉えた写真がTwitterに投稿されました。

 オランダ生まれの絵本作家、レオ・レオニの代表作である「スイミー」。日本では、1970年代後半より谷川俊太郎さんの訳が小学2年生用の国語教科書に載録されていることもあり、多くの人に知られています。

 魚の群れが大きな魚のような形になった写真をTwitterに投稿したのは、小学校に勤務するじょうだんさん。旅先で立ち寄った福島県いわき市の水族館、アクアマリンふくしまで目にした光景とのことです。

 じょうだんさんご自身が小学生だった頃、国語の授業で「スイミー」を読んだ時は、魚の群れが魚の形をするなんて絵空事だと思っていたんだそう。6年生の組体操で、先生から「自分の位置が全体のどこになるか把握して」と指導されたことをひきあいに、次のように語ってくれました。

 「客観的に自分の位置を見れることって大人でも難しいのに、子どもの時は尚更です。それを魚が「僕は目になるよ」とかやっているなんて御伽話だと思ってました。なので、魚群はただ集まってるだけで形など意識してないと思ってました」

 じょうだんさんが立ち寄ったアクアマリンふくしまには、サンゴ礁の海を再現した大水槽があります。本館2階の高さいっぱいに広がる水槽には、体長6cmほどの小さな魚、キンメモドキが群れをなして泳いでいます。

 キンメモドキのような小さな魚は単独で泳いでいると、大きな魚に食べられてしまいます。このため、小さな魚は防衛策として群れを作り、容易に手出しできないよう工夫しているのですが、この光景をじょうだんさんは撮影したのでした。

 「写真を撮った時は、ただの魚群を撮ったつもりだったのですが、旅行が終わってから写真を見返したらまさかの魚の形になっていてびっくりしました。尾びれまで丁寧についていて、スイミーの事を思い出しました」

 群れは絶えず形を変え、あたかも巨大な生物が動いているかのよう。その一瞬、まるで魚のようなフォルムになった時を捉えていたのです。

 貴重な瞬間を撮影したじょうだんさんは、普段から小学校で児童に接していることから、写真と一緒に次のようなことを伝えたいと話してくれました。

 「子どもに伝えるとしたら、まずは魚群って本当にあるということ。魚でも1匹1匹が自分の役割を認識して全うしていること。これはクラスで自分の掃除当番とか給食当番だとか、全体のために働く時に伝えたいですね」

 また、自己評価が低くなりがちな子には、こんなことを伝えたいとも。

 「1匹は小さい魚でもこれだけ大きな魚になれるってことは、常に『僕なんか』と思っている子に伝えたいものです。周りを巻き込んでみんなで大きなことをやり遂げていくためにも。こちらの方が今の時代に合っているかもしれません」

 魚が大群で泳ぐ様子は、普段の生活ではなかなか目にすることがありません。魚の生態を見せようとする水族館の努力も、じょうだんさんが撮影した「スイミー」のような瞬間につながっているような気がしますね。

<記事化協力>
じょうだんさん(@joudan555)
<参考>
アクアマリンふくしま 公式サイト

(咲村珠樹)