食品サンプルメーカーである「株式会社いわさき」の職人が、あべのハルカス近鉄本店で開催中の「おいしさのアート展2022」で見せた美技に目を奪われる人が続出。

 公式Twitterに投稿された海老天の食品サンプルの実演動画には、「凄い!」「美味しそう!」などの声が寄せられ、多くの人を魅了しています。

 「おいしさのアート展」は、いわさきグループ3社合同による食品サンプルの製作コンクール。全国17工場、約100名の技術者たちによって生み出された、本物と勘違いしてしまうほどリアルな作品からユニークで面白い作品まで70点以上が展示されています。

「おいしさのアート展2022」

リアルな作品からユニークで面白い作品まで70点以上を展示

 ここで実演をしていたのが、食品サンプル製作歴38年になる株式会社いわさきの製作本部長。ツイートによると、ビニール樹脂をホットガンの熱で散らしながら固めていく作り方は、食品サンプルの揚げ衣を作る際において現在主流の方法だそうです。食品サンプル作りですぐ思い浮かべるロウによる作り方は、昭和前半におこなわれていた手法とのこと。

食品サンプル製作歴38年になる株式会社いわさきの製作本部長

 動画では、本物の海老に衣をつけるように液状のビニール樹脂をコーティング。そこにホットガンの熱風を吹きかけていくと、風圧で液状だったビニール樹脂が固まりながらカリッと揚がった天ぷらの衣のように変化していきます。思わず「美味しそう……」と、口にしてしまうほどリアルな海老天の完成です。

本物の海老に衣をつけるように液状のビニール樹脂をコーティング

ホットガンの熱風を吹きかけていく

思わず「美味しそう……」と、口にしてしまうほどリアルな海老天の完成

 食品サンプル製作歴38年の製作本部長に話をうかがうと、今回実演したホットガン(プラスチック溶接機)の高温で、硬化していく材料を形を整えながらバランスよく散らしていく方法は、熱風の温度と風量が重要。熟練の技が必要なのだとか。

 さらに高電流と高温になるので、よほど慣れていないと取り扱いが難しく火傷の危険も。そのため一般の人への製作体験では行っておらず、おなじみのロウを使用した作り方を取り入れているといいます。

 大きさや形状、ボリュームなど、「同じ状態の物を安定して生産できるようになるのに、どれくらいの年月が必要か?」については、個人差があるので一概には言えないそう。ただし、「『美味しさ』の表現は、その人のセンスや器用さによる部分も大きい」と語ります。

『美味しさ』の表現は、その人のセンスや器用さによる部分も大きい

 ちなみにホットガンを使用する方法は、他社のサンプルメーカーも含め、ロウから塩化ビニールに素材が変化していった40年ほど前に確立したものだとか。揚げ衣の散らし方や、素材の粘度などはサンプルメーカーごとに違いがあり、「誰が開発したかは定かではありませんが、私がいわさきに38年前に入社した時には既におこなっていた記憶があります」と教えてくれました。

 このようなホットガンを使用した実演はもちろん、ロウによる製作体験もできる「おいしさのアート展」は、あべのハルカス近鉄本店で1月10日まで開催しているとのことです。

<記事化協力>
株式会社いわさき公式Twitter(@IWASAKI_SAMPLE)

(佐藤圭亮)