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北海道を襲う「物流2024・2030年問題」のリアル 背景と事業継続の糸口を聞く

 北海道の物流を取り巻く状況は深刻さを増しています。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に上限が設けられたことで全国的に「2024年問題」と呼ばれる輸送力不足が懸念されていますが、北海道では少子高齢化や人口減少、地理的な制約など特有の事情が重なり、より深刻な影響が出始めています。

 農産物をはじめ多くの産業を支える北海道での物流停滞は、地元だけでなく全国の消費者生活にも影響を及ぼしかねません。現状について、物流現場に詳しい関係者の声を聞きました。

  • ■ 36%の荷物が届かなくなる?北海道を襲う「物流の2030年問題」のリアル

     物流業界では、2024年問題に続き「2030年問題」と呼ばれるさらなる輸送力不足の懸念も指摘されています。少子高齢化やドライバー不足に物価高騰が重なり、2030年には全国で現在の約36%の荷物が運べなくなるとの予測も出ています。

     「さらにその中でも、北海道には特に大きな影響が出てきています」と語るのは、物流業界向け業務支援サービスを手がける株式会社Azoopの営業リーダー、山崎拓郎さんです。同社はトラック専門のネットオークション「トラッカーズオークション」などを運営し、現場の声を幅広く把握しています。

    物流業界向けに業務支援サービスを手掛ける株式会社Azoopの山崎拓郎さん

     じゃがいもや小麦、テンサイなどさまざまな作物の産地である北海道中川郡豊頃町の農家に生まれ、幼い頃からトラックやトラクターが動く様子を見てきたという山崎さん。間近に接してきた物流に対する思いから業界入りした人物です。

     山崎さんが現在接するのは、車両台数50台以下の中小物流事業者たち。「社長みずからトラックを運転し、配送業務を行うところがほとんど」という環境においては、さらに深刻な問題が浮かび上がってきているといいます。

    ■ 「もう継続できない」担い手不足と季節の壁

     「いま北海道の物流事業者さんの間では、『これ以上事業を継続できない』という声が上がっています」と山崎さんは語ります。

     こうした声は、各種調査結果からも裏付けられており、経済産業省 北海道経済産業局が2025年1月に行った調査では、道内の物流事業者の3割以上が前年に比べて輸送力の不足を実感していると回答。また国立社会保障・人口問題研究所の推計では、北海道の総人口は2020年から2050年までに約27%減少すると見込まれており、人材不足は今後さらに深刻化する恐れがあります。

     山崎さんは、「いままでお取引のあった会社さんと突然連絡が取れなくなったり、廃業や事業承継を理由としたトラックの買取依頼が非常に多くなりました。大半の会社さんは自転車操業状態です。仕事はあるのに、いまの北海道の物流業界ではそれをカバーしきれるだけのリソースが足りていない」と現状を明かします。

     すでにこの影響は、私たちの目に見える範囲にまで及んできています。企業間の輸送をはじめ、個人宅への配送にも遅延などがすでに起こり始めているとのこと。とくに北海道では、地理的・気候的な要因も大きいといいます。

     「積雪量が多くなる冬場は物理的にトラックを動かせず、ドライバーさんが一日中事務所にいる、ということも珍しくありません。他の地域に比べ、輸送による収益の機会が相対的に少ないのです」と山崎さんは指摘します。

    ■ 車両売却ルートの多様化で経営改善を模索

     こうした状況のなかで、物流各社はコスト削減や資産の有効活用を模索しています。山崎さんが所属するAzoopにも、トラック売却や経営改善に関する相談が多数寄せられているといいます。同社が展開する「トラッカーズオークション」では、買い取りから出品までを一括で担い、中間マージンや不透明な査定を減らす取り組みを行っているとのこと。

    運輸業者向けの業務支援サービスを行う株式会社Azoopの山崎拓郎さん

     「北海道では“縄張り意識”が特に強く、地元業者や、買取業者を子会社に持つ大きなグループ内で取引が完結してしまうことが大半です。私の実家も農家ですが、やはり車両を売るとなると、地元の業者か、購入したディーラーに頼むしかありませんでした。提示された金額で買い取ってもらう以外の選択肢が、そもそもないのです」と山崎さんは自身の体験も交えて語ります。

     こうした新たな仕組みや売却ルートの多様化は、物流業界全体の資金繰り改善に寄与する可能性があります。「事業を続けやすい環境を作ることが、巡り巡って私たちの便利な暮らしににもつながっていくと考えています」と山崎さんは話します。

     北海道の物流問題は、地域だけの課題ではなく全国規模で影響を及ぼす恐れがあります。現場の事業者による取り組みに加え、官民連携の支援策や輸送網の再設計など、総合的な解決策が不可欠です。

     輸送リソースの慢性的な不足は、すでに私たちの生活に直結する段階に入りつつあります。現場の知恵や新たな仕組みを組み合わせながら、持続可能な物流体制をどう築いていくかが問われています。

    <参考>
    「2024年問題」解決に向けて(国土交通省 東北運輸局)
    物流の2024年問題による輸送力不足の実態調査を実施しました(経済産業省北海道経済産業局)
    日本の地域別将来推計人口 令和5(2023)年推計(国立社会保障・人口問題研究所)

    <取材協力>
    株式会社Azoop

    (天谷窓大)

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  • 天谷窓大フリーライター

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