オーストラリア陸軍が新たに採用した装輪装甲車ボクサーの偵察仕様、ボクサーCRVが2020年10月末~11月上旬に実施された水陸両用作戦訓練「シー・ウェーダー」に参加。上陸作戦における運用試験を実施し、良好な結果を得ました。
オーストラリア陸軍の装備更新計画「LAND 400」。そのフェーズ2において偵察車両として採用されたのが、ドイツのクラウス=マッファイとラインメタルの合弁企業ARTECのボクサーCRV(Combat Reconnaissance Vehicle)装輪装甲車です。211両が発注され、2019年末に最初の車両が引き渡されました。
以来、オーストラリア陸軍では運用試験を重ねてきたのですが、今回は水陸両用作戦訓練「シー・ウェーダー」の機会を利用し、上陸作戦にともなう使い勝手を確認することになりました。
訓練地域は、クイーンズランド州カウリービーチ沖。海軍の強襲揚陸艦アデレードに搭載されたボクサーCRVが1両、第2=14軽騎兵連隊により上陸用舟艇に載せられ、海岸への上陸訓練に参加しました。
上陸用舟艇から下ろされたボクサーCRVは、装輪装甲車が苦手な砂浜においても問題なく走行し、軽快な機動性を示しました。
試験を実施した第2=14軽騎兵連隊A中隊長、エド・キーティング少佐は「この車両は世界で最も有能な騎兵連隊車両であるだけでなく、将来的な近代化計画にも対応する実戦的な能力をもたらします。これまで見てきたところ、ボクサーCRVは世界中どこへでも展開できると確信しています。砂浜での機動性は非常に印象的で、パワフルで上陸後の労力が少なくなった上、まだ能力をフルに発揮していないんですから。非常に能力の高い車両です」とコメントし、ボクサーCRVの機動性に驚いた様子。
またキーティング少佐は、乗員の訓練について「これまでのASLAV(ピラーニャI装輪装甲車)とは全く異なり、異なる能力を持っています。ですから運用を学ぶ際には、まずASLAVでも可能なことを習得し、その上でさらに先へ進むことが求められます。これまでのところ、クルーはボクサーCRVの多機能性に大きな感銘を受けており、素早く運用能力を習得しています。訓練に取り組む姿は非常に情熱的で、この車両が好きだということが伝わってきます」と語っており、ボクサーCRVが部隊で好意的に受け入れられていることが分かります。
これからオーストラリアでは夏を迎え、山火事が頻発するシーズンを迎えます。昨年末から今年初めにかけての大規模な山火事では、住民の避難や援助物資の輸送に水陸両用作戦のノウハウが役立ちました。
今回の水陸両用作戦訓練「シー・ウェーダー」は、戦技の向上だけでなく、本格的な山火事シーズンを迎えるにあたり、陸海軍の連携を確かめる側面も持っています。将来的には、このような任務にもボクサーCRVが参加することがあるかもしれません。
<出典・引用>
オーストラリア陸軍 ニュースリリース
Image:Commonwealth of Australia
(咲村珠樹)