2018年3月、次期装甲偵察車としてラインメタルの「ボクサーCRV」を選定したオーストラリア陸軍。8月17日に総額33億オーストラリアドル(21億ユーロ:約2686億円)で、211両のボクサーCRVを発注しました。これは2019年~2026年の調達分を一括発注したものです。

 1990年代から運用されている、スイスのモワク製ピラーニャI装輪装甲車をベースに開発されたASLAV(Australian Light Armoured Vehicle)を置き換える目的で計画された「LAND 400 フェイズ2」。3月にラインメタル製装輪装甲車「ボクサーCRV」が、BAEシステムズ(パトリア)の「AMV35」とのコンペに勝利して選定されました。

 ボクサーCRVは、全輪駆動の8輪装甲車「ボクサー」をベースに、ラインメタル製WOTAN30mm機関砲(30mm×173)1門を備えた「LANCE」回転式砲塔システムを搭載した偵察戦闘車(Combat Reconnaissance Vehicle=CRV)。機動的に威力偵察を行う車両です。テクトニカ・オーストラリア製の複合センサーシステム「ALTERA」を装備し、可視光や赤外線といった画像情報だけでなく、音声の情報も収集することができます。

 得られた情報は、データリンクで自車および他の先頭車両や指揮所と共有されます。偵察で得られた情報をすぐに共有できるため、情報取得から作戦行動開始までの時間が著しく短縮され、戦力の展開が迅速化。これにより、相手の準備が整わないうちに、こちらの優位な状況で戦闘を行える、という戦術的メリットがあるわけです。

 今回、オーストラリア政府はボクサーCRVの調達予定数、211両を一括発注するという形をとりました。発注された211両のボクサーCRVは、2019年から2016年にかけて順次納入されるといことになります。年度ごとに逐次調達すると、調達数によって価格が上下し、またメーカー側も工場の稼働率が年度によって変化するのでコストがかかってしまいます。調達予定の数を一括で発注した方が、発注側にとっては量産効果で調達コストが減る上、メーカー側も生産計画が立てやすくなりますし、利益を先に確保できるので設備投資等に資金を回せるというメリットがあるので、どちらも願ったり叶ったりの用達法だといえるでしょう。

 また、ボクサーCRVの砲塔に追加される遠隔操作式の機関銃システムに、オーストラリアのEOS(エレクトロ・オプティック・システムズ)製R-400S Mark 2 D-HDが採用されたと2018年8月24日、EOSより発表されました。この遠隔操作式の機関銃座は全てのボクサーCRVに装着されるものではなく、約80セットが2021年以降に納入されるということです。

Image:Rheinmetall

(咲村珠樹)