海上自衛隊も参加してハワイ周辺海域で8月17日から始まった、アメリカ海軍主催の国際共同演習RIMPAC(環太平洋演習)2020。2つの任務部隊に分かれて訓練が進められますが、その任務部隊司令官の1人にオーストラリア海軍の女性指揮官が抜擢されました。RIMPAC史上2人目、アメリカ以外では初の女性指揮官です。
RIMPACにはアメリカ海軍のほか、9か国から22隻の水上艦艇とその搭載航空機、そして1隻の潜水艦が参加。日本の海上自衛隊からは、ヘリコプター搭載護衛艦のいせとSH-60ヘリコプター2機、そしてミサイル護衛艦あしがらの2隻が参加しています。
参加艦艇を2つに分け、それぞれの任務部隊間で訓練を実施するRIMPAC。その第1任務部隊の司令官となったのは、オーストラリア海軍のフィリパ・ヘイ大佐です。女性が任務部隊の指揮官となるのは、2016年のRIMPACで当時アメリカ第3艦隊司令官だったノーラ・タイソン中将以来、ヘイ大佐が2人目です。
10歳の時、家族と共に世界一周の航海を経験したヘイ大佐は、1993年に海軍へ入隊。そして士官交換プログラムでアメリカ海軍へ出向し、駆逐艦ジョン・ヤングの乗組員として中東に派遣されました。
オーストラリア海軍に復帰したヘイ大佐は、その後潜水士資格を取得。オーストラリア海軍内で「小規模戦闘艦」に分類される、掃海部隊の訓練を受けた初めての女性となりました。2019年には、西太平洋地域における任務を担当する部隊の司令官に就任しています。
アメリカ以外で初の女性任務部隊司令官となったヘイ大佐ですが、本人はむしろ、オーストラリア海軍を代表して任務部隊の指揮をする方に注目してほしいと語っています。「RIMPACは、艦砲射撃やミサイル発射の訓練を通じ、オーストラリアの海軍力を試される場です。多国籍の艦艇と複雑なシナリオで訓練することは、私たちの同盟国やパートナーとの相互運用性を高めるのに最適な環境です。新型コロナウイルス禍という困難な時に、オーストラリア海軍の一員として、この場にいられることを誇りに思っています」とヘイ大佐はコメントしています。
ヘイ大佐によれば、オーストラリア海軍は自身にとって非常に居心地の良い組織だといい、ジェンダーや性別、宗教などに関係なく、誰もが成功する可能性を担保されていると語っています。
ヘイ大佐は「オーストラリア海軍においては、なんの制限もありません。この豊かな多様性は、オーストラリア社会を反映しているものとして誇りに思っています。周りを見渡せば、そこにいるのはただ『オーストラリア海軍の将兵』だけ。私の歩む道が、多くの人にインスピレーションを与えるものになるならば嬉しいですね」と語っています。
筆者もかつて、取材でオーストラリア海軍の女性士官と話をしたことがあるのですが、その時も「オーストラリア海軍には『男性だから』とか『女性だから』とかいう区別はありません。みな同じ海軍の人間として対等に扱われます」と語っていました。ヘイ大佐の存在は、それを象徴しているといえるでしょう。
<出典・引用>
オーストラリア海軍 ニュースリリース
Image:Commonwealth of Australia/U.S.Navy/海上自衛隊/カナダ海軍