「飛び出す○○」と呼ばれる、何らかの動作をすることで、様々な仕掛けが飛び出すアイテム。幅広い年齢層に広く親しまれておりますが、押すとあるものが飛び出すクッションが、Twitterで話題になっています。
「光粒が飛び出したり戻ってきたりするクッション」というつぶやきとともに、神奈川県在住のクリエイター本多大和さん(以下本多さん)が自身のTwitterに投稿したのは、フローリングに置かれたクッションを撮影した動画。
一見これだけだと何の変哲もないクッション。しかしよくよく見てみると、中央部分にへその形のようなテープを張った跡が。
「何でテープなんか貼っているんだろう?」と思った次の瞬間、投稿者の本多さんが、そこにめがけて手のひらでボフっとひと押し。するとそのテープから、「フォンフォン」と音を出しながら、無数の光の粒子が飛び出すんです。
そして、飛び出した光は、テープがあった方へ円を描くように「出戻り」。再度クッションを押してみても同じように作動します。
さらに、別の場所に移してみても同様に反応。何とも摩訶不思議な動画になっているんです。
時間にして約17秒の動画なのですが、クッションから飛び出る光の動きに、思わず目が釘付けに。動画再生回数は12万回を超える大きな反響となりました。
それにしても、なぜあのように光が飛び出たのか気になるところ。筆者は、この投稿をした本多さんに取材の申し込みをし、詳細を伺いました。
「あれは、『再帰性反射テープ』が検知して作動したものなんです」
こう仕組みについて語ってくれた本多さん。この「再帰性反射テープ」というのは、『再帰(または再帰性)反射』と呼ばれる、入射した光がそのまま光源へ帰るという、光の反射現象を取り入れたテープ素材。
ちなみに、夜間に車を運転する際に、道路標識がはっきりと視認できるのは、この再帰性反射を取り入れたものだったりします。
しかし、このテープを貼っただけだと検知はしません。実は、動画での部屋の天井には、赤外線カメラとプロジェクターを設置。これをフローリングに投影することで、いわゆる「プロジェクションマッピング」映像が映し出される仕組みになっています。
この仕組みを生かして、本多さんは様々な仕掛けを考えてみたんだそう。まずは、今回の投稿のリプライ欄にも投稿した、「再帰性反射マーカー」と呼ばれる計測装置を手に握りしめながら、手を広げると光が拡散される動画も配信。これも「クッション動画」同様に、発信装置となるマーカーを握りしめた手を広げた瞬間に、光が無数に飛び出て、再び手を握ると光が戻ってくるという仕掛けになっています。
これだけでも十二分に面白い仕掛け。本多さんも同様に感じていたそうなんですが、「クッションに再帰性反射テープを貼ってみるとどうなるかと思って」と、あくまで試しにということでやってみたのが、今回の「光が飛び出すクッション」。その際に「クッションをボフっと触ったときに、光が放出される瞬間が、体験としてとても驚きとワクワクがあった」と感じ、Twitterに投稿したところ、このような反響になったとのことでした。
ちなみに本多さんは、今回の投稿では、「#不思議のプロトタイプ」というハッシュタグをつけてツイートしていたのですが、これは本多さんの持つ様々な技術知見を生かして、様々な技術や表現の実験や、体験型展示作品の種として制作している試作品に関する投稿をする際に使用しているんだそう。
Twitter上で検索してみると、
などとといった、幻想的かつユニークな本多さんの作品が動画で見られます。
元々本多さんは、2018年4月に独立したフリーのクリエイター。これまでも、様々な展示会の出展や、自作の展示会も開催され、過去には「文化庁メディア芸術祭」でも、その作品が審査委員会推薦作品を受賞された方。
しかし、折しものコロナ禍で、今年は出品予定だった展示会や中止延期になってしまいました。ただ、それにより時間的猶予が出来たそうで、自宅にて制作・展開できるSNSでの「作品発表」に力を入れていることに。今回のクッションにしても、その一環で生まれた作品なんです。
一連の反響を受け、「クッション動画」に関しては、今後は様々な形状のクッションを用いながら、使用する数も増やして、光粒(光の粒子)に個性を持たせるなどのアップデートを行って、“コロナ後”に、実際にお客さんに体験してもらえるような「体験展示作品」を目指すとのこと。
また、SNS投稿に関しては、自身の様々な技術やアイデアを組み合わせた「#不思議のプロトタイプ」作品を継続発信していくそうです。
光粒が飛び出したり戻ってきたりするクッション(再帰性反射テープで検知)#不思議のプロトタイプ pic.twitter.com/LUICfFdLrR
— Ponboks (@ponboks) November 28, 2020
赤外線カメラ(Kinect)で位置を検知するために再帰性反射テープをクッションに貼っています(どんな形でも大丈夫だけどへそ型にしてみた)広角のプロジェクターなので、天高2.3mでも部屋の床全体を覆うくらいの投影ができます! pic.twitter.com/g14gENfooF
— Ponboks (@ponboks) November 28, 2020
赤外線カメラでは再帰性反射テープ部分が極端に明るく映るので位置をトラッキングできます。開発画面の様子 #madewithunity pic.twitter.com/NwuHVdh6qi
— Ponboks (@ponboks) November 29, 2020
<記事化協力>
本多大和 honda yamatoさん(@ponboks)
(向山純平)