新型コロナウイルスの感染拡大により人々の生活様式が変わり、様々な業種に影響が生じています。特に経営体力の面で規模の小さい企業やお店にとって影響は致命的で、完全に破綻する前に閉店・廃業を決断するケースも。愛知県にある明治時代創業の老舗駄菓子メーカー、アメハマ製菓が、2021年4月末での廃業を発表しました。
2021年4月末での廃業を発表したのは、愛知県一宮市にある駄菓子(キャンディ)メーカーのアメハマ製菓。1910(明治42)年に初代・堀田浜次郎が名古屋市で「飴浜製菓所」として創業し、100年以上にわたってキャンディやキャラメル、ガムなどを作り続けてきました。
ラインナップされている商品は、駄菓子屋で売られている10円の「くじ付きキャンディ」のほか、各種の袋入りキャンディなど。同じ愛知県にあるカクダイ製菓の駄菓子「クッピーラムネ」とコラボした「クッピーラムネ キャンディ」などもあります。
発表されたリリースによると、廃業を決意した理由については、以下の7つが挙げられています。
1.世界各地では、コロナウイルスによる未曾有の災難が発生し、今後はより厳しい経営環境になることはあきらかであること
2.高コスト体質の生産体制を続けてしまったこと
3.製品も競争激化の波にさらされる中、製品の多様化に追いつけなかったこと
4.旧来の取引条件や売価の抑制という大きな壁に阻まれてしまい納品価格の交渉が難しいこと
5.原材料価格が上昇していること
6.旧来的な製造方法と市場売価による収益構造が成立していないこと
7.設備が老朽化しており、新規設備投資が必須なこと
最終的な決め手となったのは、1の新型コロナウイルス禍により、経済状況の好転がしばらく見込めないことであり、そこに至るまでの理由が2〜7の要素となります。特に4〜6は、単価の安い「駄菓子」であるがゆえの悩みだといえるでしょう。
駄菓子メーカーは規模の小さい企業であることが多く、価格の安さは減価償却の終わった製造設備や、多額の設備投資を必要としないという点を製造コスト圧縮につなげた結果であるといえます。しかし、製造設備はいずれ老朽化して更新が必要になりますし、原材料価格の上昇を「駄菓子」であるがゆえ転嫁しにくく、取引先との納入価格引き上げ交渉が不調に終わるというのも理解できるところ。
高コスト体質の生産体制も、裏を返せば小規模な会社ならではの「丁寧な作り方」ということでもあり、業務の効率化が求められる現在では、前時代的なものとなってしまっているのかもしれません。昔ながらのお店や小規模な企業は、後継者など事業の継承に不安を抱えているケースも多く、新型コロナウイルス禍が「倒産」ではなく、体力のあるうちに「廃業」するという決断を後押ししてしまっているようです。
<参考>
アメハマ製菓株式会社 公式サイト
※画像はアメハマ製菓株式会社公式サイトからのスクリーンショットです。
(咲村珠樹)