おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

NASAの火星探査ローバー「パーセベランス」いよいよ火星へ着陸

update:

 2020年に打ち上げられたNASAの火星探査ローバー「パーセベランス(Perseverance)」が、いよいよ日本時間の2月19日朝6時前に火星表面へ着陸します。初めて地球以外の場所で飛行するヘリコプターも搭載し、火星表面で液体の水があった証拠となるサンプルを見つけ、火星に生命が存在した可能性の手がかりを探します。

  •  NASAの火星探査計画「MARS 2020」のローバー(探査車)、パーセベランス(忍耐や根気という意味)は、2020年7月30日にアトラスVロケットで打ち上げられました。

    MARS 2020の打ち上げ(Image:NASA)

     2020年は地球と火星の位置関係が火星探査に適していたため、各国で火星探査機が打ち上げられています。NASAより一足先に打ち上げられた中国の「天問1号」、UAEの「Hope」は、すでに火星へ到着。同じく2020年に打ち上げ予定だったロシアとヨーロッパ共同の「ExoMars」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてスケジュールが遅れ、2023年に打ち上げが延期されました。

    2020年夏時点の地球と火星の位置(Image:NASA)

     パーセベランスが目指す着陸点は、かつて湖があり生命活動があった可能性の高いジェゼロ・クレーター。NASAではジェゼロ・クレーター周辺を重点的に調査しており、1976年に打ち上げられた「バイキング1号」から、2011年に打ち上げられ現在も活動中のローバー「キュリオシティ」まで、ほとんどの火星探査機が着陸しています。

    NASAの火星探査機着陸地点(Image:NASA)

     今回パーセベランスの着陸は、狙ったところに正確に着陸できるよう、少々変わった方式を採用しています。まず火星の大気圏に突入し、滑空したのちにメインパラシュートで減速。

    MARS 2020の着陸シークエンス(Image:NASA)
    火星に接近するMARS 2020(Image:NASA)
    火星大気圏に突入するMARS 2020(Image:NASA)

     火星大気の空力加熱からローバーを保護するためのヒートシールドを切り離したら、搭載したカメラで地形を判断し、着陸に適した場所を探します。着陸地点を確定させたら、今度は「スカイクレーン」と呼ばれるユニットごと、パーセベランスを切り離して逆噴射で降下します。

    パラシュートを展開するMARS 2020(Image:NASA)
    着陸点を探す仕組み(Image:NASA)

     着陸地点上空に到達したスカイクレーンは、パーセベランスを釣り下げ、火星表面に「置く」ように着地させます。パーセベランスを着陸させたスカイクレーンは、そのまま飛び去る仕組み。

    降下するスカイクレーン(Image:NASA)

     この一連の着陸シークエンスは、将来有人火星探査を実施する際、着陸船をどのようにコントロールして着陸させるか、というシミュレーションも兼ねています。大気のない月と違い、火星の大気圏に突入して任意の場所に着陸する手順は、このような実地試験が不可欠です。

    着陸するパーセベランス(Image:NASA)

     火星に着陸したパーセベランスは、自力で移動するだけでなく、搭載した火星ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」を使って、より広範囲の探査を実施します。インジェニュイティは、地球以外の天体で大気圏を飛行する初めての航空機です。

    パーセベランスとインジェニュイティ(Image:NASA)

     データの送受信は、火星を周回しているNASAの「マーズ・オデッセイ(2001年打ち上げ)」「マーズ・リコネッサンス・オービター(2005年打ち上げ)」「MAVEN(2013年打ち上げ)」、欧州宇宙機関(ESA)の「マーズ・エクスプレス(2003年打ち上げ)」「ExoMarsトレース・ガス・オービター(2016年打ち上げ)」計5機の人工衛星が中継し、地球とパーセベランスを結びます。

    データを中継する火星を回る5つの人工衛星(Image:NASA)

     パーセベランスの着陸を前にした2021年2月16日、ニューヨークのエンパイアステートビルでは、パーセベランスの火星到着を祝ってビルを赤く染めるイルミネーションを実施しました。

    パーセベランス火星到着を祝って赤くライトアップされるエンパイアステートビル(Image:NASA)

     火星への着陸は、日本時間の2月19日4時15分より、NASA TVとYouTubeのNASA公式チャンネルで生配信予定。着陸は日本時間5時55分を見込んでいます。

    <出典・引用>
    NASA 火星探査計画特設サイト
    Image:NASA

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 新しい月面用宇宙服「AxEMU」(画像:アクシオム・スペース)
    宇宙・航空

    NASAの新しい月面用宇宙服お披露目 民間企業が開発

  • 記者会見で笑顔を見せる米田あゆさん(YouTubeライブ配信映像より)
    宇宙・航空

    記者からのプライベートな質問を断った宇宙飛行士候補の米田あゆさん その優れた資質…

  • 国際宇宙ステーションから見たスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」無人飛行試験から無事帰還

  • ロケット組み立て棟でのスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASA 宇宙船「スターライナー」打ち上げ試験でSNSバーチャルイベント開催

  • 国際宇宙ステーション(画像:NASA)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションで新しい通信回線運用開始 レーザー通信の衛星網を経由

  • 国際宇宙ステーションにドッキングしたクルードラゴン(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAが受け入れる2番目の宇宙旅行フライトが決定 搭乗者はTV番組で募集

  • NASAの2021年宇宙飛行士候補生の10名(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAに新しい宇宙飛行士候補生10名が誕生 2022年1月より訓練開始

  • ロシアの新しい結合モジュール「プリチャル」の打ち上げ(画像:ロスコスモス)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションのロシア新結合モジュール「プリチャル」打ち上げ成功

  • 画像提供:たかゆき@マッドサイエンティストさん(@moriyakick)
    エンタメ, サブカル

    ニッチだけどハイテク要素満載 「マーズ・アタック!のミドリ人」になりきるオンリー…

  • NASAが試験に使用するJobyのeVTOL(Image:Joby Aviation)
    宇宙・航空

    NASAが「空飛ぶクルマ」の実証実験をカリフォルニアで開始

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」公演、25日の東京公演が急きょ中止
    エンタメ, 舞台

    宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」、25日の東京公演が急きょ中止

  • 住まいを選ぶ際の考慮
    社会, 経済

    「春と秋、こんなに短かったっけ?」約9割が実感する“二季化”と住まい選びに与える…

  • テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か
    インターネット, サービス・テクノロジー

    テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダ…

  • 親の約9割が「農業体験をさせて良かった」
    社会, 経済

    α世代の半数超が1年以内に農業体験 スマホ時間に悩む親の選択肢に

  • 新WEB-CM「ティーチャーズの不思議なBAR」篇
    商品・物販, 経済

    杉野遥亮「…好き」に注目 サントリー「ティーチャーズ」で酒類CM初出演

  • シートタイプのWebMoney
    企業・サービス, 経済

    WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

  • トピックス

    1. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…
    2. 今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      1980年代と90年代、多くの少女たちを夢中にさせた伝説の魔法少女が帰ってきます。「魔法のプリンセス…
    3. 「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      海外のサイバー脅威情報を発信する「Hackmanac」が12月19日、日本国内の複数の組織を標的とし…

    編集部おすすめ

    1. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    2. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    3. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    4. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    5. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト