特定企業に属さず、就業時間を自らの意思で分配する「フリーランス」。自宅や専用のコワーキングスペースで働く「リモートワーク(テレワーク)」。世界中を震撼させた「コロナ禍」は、人々に働き方の「新しい景色」を提供しました。
しかし、本格的に「日常」が戻りつつある2023年において、「新機軸」だったはずのそれらは様々な「見直し」がされている状況下にあります。
■ 2023年の働き方は「元通り」でなく「発展」
冒頭述べた「新型コロナ」ですが、2023年5月8日をもってインフルエンザなどと同じ「5類」へと移行されます。「ハイリスクな感染症」扱いだった「2類」から「季節性の流行り病」へ移る中で、イベントなどは通常開催に。「顔パンツ」とまで“揶揄”されるようになったマスクの着用も、個人の判断に委ねるものとなります。
社会が平時へと移っていく中、仕事においても例外ではありません。それが冒頭の「見直し」なのですが、先述のような「元通り」にすればいいというわけではありません。しかし、一部でそういった動きがみられています。
そもそも、「コロナ禍」と一括りにしても、「2020年」「2021年」「2022年」において、人々のパンデミックに対するアプローチは全く異なるものです。
スポーツで振り返ってみましょう。大半が中止延期に追い込まれ開催にこぎつけても原則無観客だったのが「2020年」。紆余曲折を経ながら開催された「東京五輪」に、制限付きでも徐々に有観客が復活したのが「2021年」。そして、マスク着用以外はある程度緩和された日本と、中東カタールで開催された「FIFAサッカーワールドカップ」では完全ノーマスクで熱狂の渦だった「2022年」でした。
振り返ってみると、この3年間は「構築(2020年)」「制定(2021年)」「確立(2022年)」と段階ごとに変化が起きました。それは働き方にも当てはまり、2023年というのは、ここからどう「発展」させるかが課題です。
「ワークライフバランス」なんて言葉があるように、柔軟性のある働き方が推奨されている昨今において、「リモートワーク」は有力な手段のひとつです。転職サイトなどでも可否が選択欄として存在し、求人票でも記載されています。「元通り」を優先して頭ごなしに否定したとしても、結果としてその企業は「時代遅れ」というありがたくないレッテルを張られ、採用難と離反者増の二重苦に苦しめられる未来しか見えません。
このことは、「副業」にも当てはまります。昨今の物価高により「インフレ手当」を導入する企業が続出している中、論だった理由なく収入源の確保に努めようとする社員の動きを阻害すると、こちらも“悲劇”を誘発させるでしょう。
一方、力をつけた社員が独立し、「フリーランス」となる可能性も高まってくる見方もあります。そのまま「起業」にいたる場合も多く想定されます。
ただしそれは、決して「リスク」ではなく寧ろ「あるべき姿」。一部企業では「社内ベンチャー」という形で支援をしたり、政府も「スタートアップ支援」を打ち出した政策を発表しています。
要するに、見直しは「後退」ではなく「前進」なのです。コロナ前に叫ばれた「働き方改革」がようやく形となり、人材の流動化がいよいよ現実のものになるということですね。
■ 「優位性」と「劣位性」
筆者は2020年春から在宅ワーカーとなり、そのままフリーランスとなり現在に至ります。「働き方」に関しては、“流行の最先端”にいたことになります。そんな自覚はないですけどね(笑)
しかしそもそもの話、フリーランスとリモートワークにはどういった点で優れているのでしょう。いち“被験者”な目線で恐縮ですが、まず「自由度の高さ」が共通して挙げられます。
「社員ではない存在」のフリーランスは、様々な企業で、様々な職種に就け、様々なスキルを育め、結果様々なキャリアプランを描けます。そして就業時間も様々が特徴です。
ここにリモートワークという就業環境を加えると、Aの仕事を終えた直後にBに従事できるという“瞬間移動”が可能。「デジタル空間」の切り替えだけ行えばいいのです。
この働き方が絶大な効果を発揮したのが、「コロナ禍」。多くの方が「外出自粛」に追い込まれたことは未だ記憶に新しいですが、これにより注目されたことがはじまり。
結果として、これまで絶対だったはずの「オフィス神話」が崩壊するものとなり、同時にフリーランスという働き方も注目されることになります。移動という「枷」が消滅し、1日8時間の就業時間で複数企業の仕事が容易に行えるのです。ちなみに統計上においても、コロナ以前から1.5倍もフリーランス人口が増加したという結果が出ています。
ここまで書くと「ゲームチェンジャー」のような存在ですが、実は言うほど万能でもなかったりします。自由度の高さは確かに「優位性」なのですが、裏を返せば「際限がなくなる」という「劣位性」でもあるからです。
毎日一定の「時間」を収奪するのが通退勤です。ただしそれは、「業務終了」というイベントが確実に発生するというわけでもあります。
ところが、リモートワーカーなフリーランスだと、なかなかそのイベントが発生しません。夜分遅くまで仕事をしてしまうからです。
「いや、途中で切り上げればいいじゃない」という至極真っ当な指摘が飛んでくるでしょう。しかし、ついついやってしまうのです。それは「経済的不安定」が大きく起因しています。
■ やってみないと分からない「お金」の流れ
フリーランスの平均年収は約250万円。一方、会社員含めた就業者の平均年収は約340万円です。実に4割近い「格差」があるのです。雇用者ではないので、保険や年金も自ら加入して、国民保険と国民年金を毎月納入する必要があります。そして、年に1度発生する最重要イベント「確定申告」も避けて通れません。自分でやることが非常に多いのです。
加えてフリーランスは「社会的信用」が全くありません。一定以上の収入がなければ、クレジットカードも新規発行できないし、賃貸物件も借りられません。筆者が現在使用しているカードも住居も全て会社員時代に契約したものです。
「なら収入増やせばいいじゃん」という手厳しい指摘が飛んでくると思います。ごもっともな意見でございます。
しかし……そう打ち出の小槌みたいに上積めないのです。そもそもフリーランスを雇用しているのは就業者が属する一般企業ですが、積極活用しているのはまだまだ少数派です。少ないパイを奪い合っている現状にあり、近年のフリーランス人口増で競争も激化しています。
これは就業者間でもいえることですが、優秀な人材に企業(案件)は集中しがち。弱肉強食といえばそこまでではありますが、事実レベルとして、フリーランスを始めた人たちの3割が、わずか1年で廃業を余儀なくされています。
さらにフリーランスは、企業にとっては従業員と違い「切り捨て」がしやすい存在。業績悪化など、何らかのアクシデントが発生すれば、契約の早期打ち切りはザラにあります。事態を重く見て、政府も「フリーランス保護新法」なる法整備の動きが出てきましたが、現状実態に追い付けていません。
「生き残り7割」に入るため、とりわけ1年目は「無理」をしてしまうのがフリーランス。頭では「自己管理」が必要なことは重々理解していますが、相当なハードワークが欠かせません。
そんなフリーランスですが、収入においてある「補填」が存在します。
それは「経費」。会社員の皆さんだと、出張における交通費や宿泊費といったものが該当しますが、フリーランスの場合は多岐にわたります。
例えば「家賃」。自宅で仕事をしている方だと、そこが「オフィス」であるため、業務に充てている床面積の比率から換算する「家事按分」で、確定申告の際に一定の割合ですが経費扱いできる場合があります。
これにより、確定申告後の「還付金」で一定金額が戻り、それを実質的な「収入」にできます。もっともそれには、「税金」に関する知識が不可欠。市販されている書籍で勉強したり、税理士に相談して学ばないといけません。
“経営”において様々なスキルが必要となるフリーランスですが、それを習得する機会が訪れるのは実際になってから。会社員時代に学ぶ機会なんて皆無ですし、学校教育にも当然カリキュラムとしてありません。
ちなみに筆者は、それまで在籍した企業に、事前通告なしで一方的に解雇されて「ニート」に突き落とされたため、事前準備ゼロでフリーランスにならざるを得ませんでした。そのため強制的に環境に体を馴染ませつつ、保険や年金の切り替えを行い、前職に内容証明を送りつけながら、さらに様々なお金の知識を習得するというかなりのハードモードを体験しました。
今思い出しても、世間一般の「緊急事態」よりも深刻度は高かったのですが、だからこそこれからフリーランスを指向する方には、この言葉を送りたいです。
よ~く考えよ~お金は大事だよ~。
■ 「後ろ盾がない」ということ
「個」で勝負するフリーランスは、一切の「後ろ盾」がありませんので、常に自らアクションを起こす必要性があります。ここで重要となってくるのが「発信」で、一役買うのが「SNS」などの「自己発信ツール」です。
「Twitter」「Instagram」「Facebook」「YouTube」「TikTok」など、特性の異なるプラットフォームが普及したことにより、個人レベルでの発信が注目される時代となっています。それにビジネス的価値を見出したのが、「インフルエンサー」「ユーチューバー」です。近年はVtuberも注目されていますね。
何らかの「スペシャル」だからそのように呼ばれるわけですが、最初からそうだったわけではありません。日の目を浴びない、コツコツやってきた「下積み」が誰にでも存在します。
また、「デジタル革命」が起きた現代社会で、何も発信しないというのは、自分が「名無しの権兵衛」であると言っているようなもの。発信せずとも食っていけるだけの仕事があるなら無用の長物にもなりますが、そんなフリーランスは圧倒的少数派です。
ただし、ここで注意しなければならないのは、どこで発信をするかということです。
■ 自己発信ツールを取捨選択しよう
フリーランスというのは、あくまで働き方の「概念」であり、職種は様々。ライター、デザイナー、エンジニア、作家、プログラマーなどなど……数え上げたらキリがありません。最近は営業もフリーランスなんてパターンもあります。
そして各々が生み出す「実績」も多種多様。それをどこで発信するかという「選択」が、実はかなり重要なんです。
筆者を一例に挙げると、ライター、SNS運用アドバイザー、マーケターという仕事を兼務してのフリーランスをやっています。その中で、目に見えた実績となるのは何と言っても「記事」。メディアより配信される度に、自分のアカウントでも都度発信し続けてきました。
ちなみに私が所有する各種アカウントにおいて、もっともフォロワー数を有するのはTwitter。開設して3年ほど経ちましたが2600ほどになりました。今年中に3000は到達したいですね。と、個人目標はおいといて、Twitterでも発信はしていますが、それで終わりではありません。
ここで私が現在アカウントを有し、それなりに稼働させている情報発信ツールをご紹介します。
・Twitter
・Instagram
・Facebook
・note
・Linkedin
・YOUTRUST
・Eight
・Wantedly
他にもライブ配信アプリの「17LIVE」をやっていた時期がありました。あまり効果がないのと、Twitterスペースで十分ということに気づいてやめましたが。
上記に挙げた発信ツールですが、上半分(Twitter、Instagram、Facebook、note)と下半分(Linkedin、YOUTRUST、Eight、Wantedly)で毛色が異なります。前者は本稿を読んでいる皆さんにもなじみある「投稿型SNS」ですが、後者は仕事に特化した「ビジネスSNS」と呼ばれるものです。
実は昨今、このタイプの使用者数が大きく伸長しています。いずれも、自身のキャリアを明記できるという特徴があり、あわせて採用機能も備えているため、プロフィールを見た企業の人事担当者から直接DMがやってくることもあります。実際私も定期的に連絡が届き、そこ経由で仕事を得た経験があります。
また、それぞれ微妙にシステムも異なります。
このうち「投稿型」にもっとも近しいのがLinkedin。というよりそのひとつでもあるんですが、ビジネス色が強くあります。先の求人もですが、何かを学習するラーニング機能も存在。サービス開始は2003年で、実はかなりの古株になるのですが、こと日本ではさほど浸透していません。
これは、比較的近い特徴を持つFacebookに利用者が流れたという事情があります。求人も外資企業中心というのも遠因であります。この2つは「中間層」ともいえるプラットフォームでもありますね。
“和テイスト”が入り、全体的にカジュアルになったのがYOUTRUSTです。読み物やイベントにも力を入れているため、定期的に見るだけでも色々な発見があります。
このプラットフォームは、友達の友達にまで投稿が見られるのが特徴。そしてビジネス型には「あるある」ですが、転職や副業意欲を都度設定できるのですが、YOUTRUSTの場合、一度変えるだけで通知され、見知らぬ人から「足跡」がつき繋がるきっかけになったりします。
YOUTRUSTもまた投稿機能があり、一時期は色々な反応が得られた時期もありました。ただ最近は、仕様が変わったためか鳴りを潜め、かわりに採用機能が重点的になっています。さらに採用企業の大半が都内のため、首都圏以外在住だとあまり縁がないかもしれません。
同じように投稿機能はあるものの、反応にクセがあるのが「Eight」です。そもそもこれは、SanSan株式会社が提供する名刺交換アプリで、過去含めた所属企業の名刺をスキャンしてデータ化し、過去交換した人の確認をするために活用されます。デジタルトランスフォーメーションなSNSですね。
その中で「近況を投稿」という項目があり、ここにリンクを添付すれば見出し付きで表示されるのですが、ここでアプリに登録されている企業に関連する記事になると「候補」として自動的に抽出される特徴があります。そこで該当するものをリンクすると、「○○社絡みの記事」と記されるのですが、これにより繋がりがない人物からも多く反応される場合があります。
なぜそのようなことになるかというと、これは推測も含まれますが、「名刺交換」というのは圧倒的に営業職が行うもので、営業マンには「取引先」が存在します。それが有名な企業の場合、様々な企業人がフォローしているからだと考えられます。
ちなみに私はこれまで800本以上の記事を書いてきましたが、ジャンルは多岐にわたります。動物・ビジネス・アート・サブカルチャーなどなど……。そんな中で、基本的にEightは投稿してもさほど反応がないのですが、これが企業絡み(案件ではありません)となると一変。実に興味深い仕組みなんです。
最後にWantedlyですが、こちらは「プロフィール」を作成するために活用しています。実際私も「向山純平」でページがあります。記事などは「実績」としてリンク付きで紹介できるのですが、それがいくつでも可能。なので、紹介するなら「代表作」に絞った方がおススメです。
少々紙面を割きましたが、フリーランスにおける「自己発信」というのは、存在を視認してもらうためには不可欠な「営業活動」。上半分の「投稿型」でも発信はしていますが、それは誰もがやっていますしなかなか差別化も出来ません。仕事を獲得するには「工夫」が必要なのです。
もっとも、私が行っているのはあくまで一例。他にも様々なSNSがありますし、必ずしもビジネスSNSを使わなければいけないわけではありません。自身の成果物とにらめっこして、「最適解」なもので発信すればいいのです。
余談ですが、私はInstagramでは仕事の発信はしていません。これは記事とインスタの機能面が理由です。
「文」がメインの記事ですが、「画像」がメインのインスタはそもそも相性があまり良くありません。「見出しなどで使っているじゃない」という指摘がありそうですが、あれは当該メディアにおいて使用を許諾されたものであり、いち担当の個人アカウントでは扱えないのです。
自分で撮影した食レポやスポットの取材などは大丈夫ですが、私の場合それはごく少数。さらにリンクを貼りつけても、見出し画像表示が反映されないという、「致命的欠点」があるのも非常に大きいです。
とはいえ、私はSNS関係のマーケティングの仕事もしているため、常に触れてはおきたいのがInstagramでもあります。そのため、日々の食事風景を投稿して勉強しています。
■ これからは「ハイブリッド」に
働き方の「見直し」ですが、「前進」するための動きも始まっています。それが「ハイブリッドワーク」と呼ばれるものです。
これは、オフィスワークとリモートワークを組み合わせた働き方。いわば「いいとこどり」です。これにより、週5日のうち2日は出社、3日は在宅ないしコワーキングスペースな配分を社員が行えるという利点があります。
リモートワークは功罪両方ありますが、それはオフィスワークも同じです。ならば両方やろうというのは、合理的な考え方です。私も現在は完全リモートですが、それは裏を返せば「選択肢がない」ということ。あえて移動をすることで得られる「気づき」や、直接対面でコミュニケーションをするという価値は計り知れないものがあると、改めて痛感させられています。なので、「選択肢」があるならば歓迎すべきことです。
一方で、飲食業や製造業など、今後も恐らくリモートワークが物理的に厳しい業種も存在します。そしてそういった業種は、社会システムの構築において、不可欠な存在であることは忘れてはいけないでしょう。
「ウィズコロナ」の世界では、様々な仕事を「知る」ということが最重要ポイントなのかもしれません。当事者ではなくとも学べる場を設ける必要性もあるかと思います。本稿のような記事も微力でも一翼を担えれば何より。理想をいうと、学校教育レベルで「働く」や「お金」について、学習指導要領に組み込んでほしいところです。
人々がより実践的に「仕事」について考える時代がやってきたとき、真の「働き方改革」が結実したと言えるのかもしれません。
【向山純平・著者プロフィール】
香川大学工学部卒業後、食品関連メーカー3社を経験し、マーケティング・商品開発・店舗運営などを歴任。
その後人気アパレルブランドマーケティング担当者を経たのち、2020年よりフリーランス。
現在はマーケター、ライター、SNS運用アドバイザーなど多岐にわたり活動中。