『スターウォーズ 帝国の逆襲』や『ゴジラ』などの映画ポスター、ゲーム『信長の野望』のパッケージイラストなど、緻密な画風でファンの多い伝説的イラストレーター、生頼範義(おうらい・のりよし)。SFのイメージが強いですが、晩年に最も心血を注いで制作していたのは、旧日本海軍の艦艇を描いたものでした。このたび、その作品272点以上を集めた画集が刊行されました。

 描かれているのは、「大和」「武蔵」「扶桑」などの戦艦、「赤城」「加賀」「信濃」などの航空母艦といった主力艦艇、巡洋艦、駆逐艦に加え、砲艦や海防艦といったマイナーな艦艇までも網羅しているという素晴らしさ。しかも図面をもとに300分の1という同縮尺で描かれているため、それぞれサイズ比較などもできるように考えられています。一部は改装などで姿が変わった様子までもバリエーションとして描かれているので、資料的な価値も高いといえるでしょう。

筑波(初代)・金剛(初代)・比叡(初代)・海門

筑波(初代)・金剛(初代)・比叡(初代)・海門


扶桑(初代・近代化改修後)・鎮遠・富士

扶桑(初代・近代化改修後)・鎮遠・富士


利根(初代)・筑摩(初代)

利根(初代)・筑摩(初代)


長門(屈曲煙突)

長門(屈曲煙突)


武蔵(最終時)

武蔵(最終時)


大和(昭和19年時)

大和(昭和19年時)

 これらの画稿は、仕事の合間に自らが描きたいという極めて純粋な欲を満たすために描かれ、長い間アトリエに眠っていたもの。今回の画集で初めて公開されることとなり、生頼範義の「仕事以外の作品」を鑑賞する貴重な機会となります。

 布張り箔押しの装丁は、戦時中までに制作され、関係者に配られた旧海軍の艦船写真集を彷彿とさせるデザイン。静謐さをたたえる、細密に描かれたイラストにふさわしいものといえるでしょう。


 また、付録として朝日ソノラマ社や潮書房、光人社から刊行された戦記・戦史文庫(日清・日露戦争や真珠湾攻撃、レイテ沖海戦、大和の沈没した坊ノ岬沖海戦などの海戦の様子を描いた戦記シリーズ)の表紙に描かれた装画の中から厳選した複製原画16シートを同梱しています。

 『生頼範義 軍艦図録』はA4変形判(182mm×297mm)432ページ(224ページ×2冊+複製原画16枚)。玄光社より1万8000円(税抜)で刊行されています。

(咲村珠樹)