【ミリタリーへの招待】観艦式2012・事前イベント編こんにちは、咲村珠樹です。ミリタリー初心者に向けて、軽いミリタリー知識をご提供する「ミリタリーへの招待」。さる10月14日、相模湾を舞台に自衛隊観艦式が行われました。今回は趣向を変え、この観艦式の様子を3回にわたってレポートいたします。


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自衛隊観艦式は、11月1日の自衛隊記念日に関連して、毎年10月頃、陸海空3自衛隊が持ち回りで開催する観閲行事のひとつで、海上自衛隊が主体となって開催されるもの。昨年は航空自衛隊が主体となった航空観閲式が茨城県の百里基地で行われ、来年は陸上自衛隊が主体となった中央観閲式が埼玉県の朝霞駐屯地で行われる予定になっています。

という訳で、観艦式としては3年ぶり……ということになります。海上自衛隊の様々な艦艇が一同に会し、自衛隊の最高指揮官である総理大臣の観閲を受ける観艦式は、海上自衛隊にとって最大級のイベント。しかも今年は、海上自衛隊発足60周年という記念の年でもあり、海外からも艦艇が参加するものとなりました。

さて観艦式といっても、14日の本番だけではありません。予行となる「事前公開」だけでなく、その一週間前から関連したイベントがあり、さながら「観艦式ウィーク」という感じです。事前公開は本番と同じ海面で行われる為、事前に応募し、当選した限られた人しか見ることができませんが、その他のイベントは基本的に誰でも見ることができます。

各地から参加艦艇が集合し、横浜・横須賀・木更津の各港において信号旗で飾り立てた「満艦飾」の姿を披露します。7日からは日替わりで艦艇の一般公開も始まりました。事前公開となる8日・11日は、艦艇が出港してしまう為に公開はありませんが、多くの人が集まっていました。

横浜・大さん橋で公開された輸送艦くにさき(LST-4003・前)と護衛艦ひゅうが(DDH-181・後) 横須賀・吉倉地区の護衛艦くらま(DDH-144・右)と護衛艦あきづき(DD-115・左)
色とりどりの信号旗が艦を飾る

7日にはロンドンオリンピックでメダルを獲得した、自衛隊体育学校に所属する米満選手(男子レスリング・フリースタイル66kg級)と清水選手(男子ボクシング・バンタム級)が横浜港大さん橋の護衛艦ひゅうが(DDH-181)に来艦し、ファンと記念撮影をしたり、メダルに触れたり……というイベントも。同日、ひゅうがでは海洋安全保障に関するシンポジウムも開催されました。

これだけ多くの艦艇が一般公開される、というのは観艦式ならでは。艦船ファンだけでなく、一般の人々も珍しい船を見学したり、自衛隊員と一緒に記念撮影をしたりして楽しんでいました。 自衛隊員の方も、気軽に写真撮影に応じたり、逆に記念写真のシャッターを切る役になったり。……よくよく見ると、護衛隊の隊司令といった偉い人の姿も。そうそうお目にかかれない幹部が普通に歩いているのも、やはり観艦式だからなのかもしれませんね。

水中処分員と記念撮影・シャッターを切るのも自衛隊員 艦上での記念写真。左端は護衛隊司令

艦では、様々な装備品も展示されました。横須賀で公開された護衛艦いせ(DDH-182)では、観艦式で飛行させる予定のヘリコプター、SH-60K(第22航空隊所属機)を触れる状態で展示。何か不具合が起きたら大変じゃないかと心配にもなりますが、担当者いわく「心意気です」とのこと。少しでも身近に感じてもらう為に……ということのようですね。機体も観艦式に映えるよう、ピカピカに磨かれていました。

いせ艦上のSH-60K。ヘルファイアの模擬弾も装備して展示

横浜港で公開された輸送艦くにさき(LST-4003)では、陸上自衛隊の様々な車両を展示。自衛隊員を含め、これらのものを輸送しますという紹介ですね。部隊は関東各地からやってきていて、ざっと見たところ

・第31普通科連隊(神奈川県・武山駐屯地)
・中央即応集団・中央特殊武器防護隊 第103特殊武器防護隊(埼玉県・大宮駐屯地)
・東部方面衛生隊 第302救急車隊(埼玉県・朝霞駐屯地)
・第1施設団・第4施設群 第364施設中隊(栃木県・宇都宮駐屯地)
・第1施設団 第307施設隊(栃木県・宇都宮駐屯地)
・第1後方支援連隊 補給隊(東京都・練馬駐屯地)

などから車両と隊員が参加していました。これらの車両や隊員も、観艦式ではくにさきに乗って参加しています。

くにさき(LST-4003)艦上に展示される陸上自衛隊の車両

観艦式というと海上自衛隊の艦船や航空機ばかりと思い、航空自衛隊や陸上自衛隊が参加していることを知らない人が多いので、こういう機会があるのはいいことですね。来年は陸上自衛隊が主役の中央観閲式ですから、力を入れてくるでしょう。

満艦飾の艦艇ですが、夜になると灯りをともした「電灯艦飾」が実施されます。

横浜新港での護衛艦やまゆき(DD-129・左)と潜水艦救難艦ちはや(ASR-403)

艦がイルミネーションで装飾され、夜景をバックにするときれいですね。横浜の山下公園、横須賀のヴェルニー公園といった場所では、撮影する人の姿も多く目につきました。

横浜で電灯艦飾を行う輸送艦くにさき(LST-4003・左)と護衛艦ひゅうが(DDH-181・右) ヴェルニー公園では電灯艦飾の撮影をする人の姿も

これら事前イベントの掉尾を飾ったのが、横浜・みなとみらいのクイーンズスクエア横浜で13日に開催された、音楽隊の演奏会。1階の吹き抜け広場であるクイーンズサークルにおいて、海上自衛隊にある6つの音楽隊(大湊・東京・横須賀・舞鶴・呉・佐世保)が一同に会し、1時間ごとに交代で演奏を披露するという無料のコンサートです。全ての音楽隊の演奏を一気に見られるという機会は、まずありません。会場が吹き抜けの広場ということもあって、上のフロアにも多くの人が集まり、演奏に聞き入っていました。

クイーンズスクエア横浜で開催された音楽隊のコンサートは盛況

中には、今年の事前説明会(という名のオーディション。第6回参照)に参加した、音楽隊志望の学生の姿も。まだ結果発表の前だったので、自分もこの中で演奏したいという希望を持ちながら見ていたのかもしれませんね。

様々な事前イベントもある中、護衛艦の乗組員達は観艦式本番の準備に余念がありません。晴れ舞台に備えてサビ落としや、各所の手入れを行います。

本番に備えて艦の手入れをする護衛艦の乗組員

こうやって迎える観艦式。その様子についてはまた次回でご紹介します。

(文・写真:咲村珠樹)