さる10月18日に相模湾で行われた第28回自衛隊観艦式。今回はFLEET WEEK、観艦式に引き続き、訓練展示についてご紹介します。なお、取材を行ったのは10月15日に実施された2回目の予行でしたので、特記のない限り、使用されている写真や映像は15日に撮影されたものです。
航空部隊を見送ると、観閲部隊・観閲付属部隊、受閲部隊の各艦艇は、それぞれ180度回頭を行い、もと来た方向に向けて航行を始めます。これは観艦式に続く訓練展示への準備。受閲部隊は訓練展示の為に隊列を変更し、祝賀航行部隊の外国艦艇は隊列から離れます。
準備が整った12時44分、予定通りの時刻に訓練展示が始まります。まずは護衛艦しまかぜ(DDG-172)による祝砲発射。艦の前後に装備された砲から、交互に空砲射撃を連続して行います。
▼【観艦式2015】しまかぜ(DDG-172)の祝砲発射(10月15日)
https://youtu.be/yAT3kt8uENE
この祝砲(空砲)の連続発射が行えるのは、手動で装填・発射が行える73式54口径5インチ単装速射砲を装備した護衛艦くらま(DDH-144)、護衛艦はたかぜ(DDG-171)、護衛艦しまかぜと、専用の礼砲を装備している練習艦かしま(TV-3508)のみ。
護衛艦きりさめ(DD-104)・さみだれ(DD-106)・おおなみ(DD-111)の3隻による戦術運動(旗りゅう信号により、一斉にS字運動をする)に続き、潜水艦こくりゅう(SS-506)とうずしお(SS-592)が、急速潜航・浮上する連続運動を行います。艦全体の動きだけでなく、セイル部につけられた潜舵(セイルプレーン)の動きや、潜望鏡の格納など、細かい動きにも見所のある展示です。
▼【観艦式2015】潜航・浮上するこくりゅう(SS-506)(10月15日)
https://youtu.be/rT3uTzg8SEE
続いて、輸送艦おおすみ(LST-4001)搭載のLCACが高速航行する予定だったのですが、18日の本番は波が高く、この展示はキャンセルされました。事前公開の12日・15日には実施されています。12日も少々波が高く、LCACが巻き上げた潮が甲板にいた人たちにかかって、カメラなどが濡れ、大変だったようです。
▼【観艦式2015】疾走するLCAC(10月15日)
https://youtu.be/kxjsSG-HY9Y
次にミサイル艇おおたか(PG-826)、くまたか(PG-827)、しらたか(PG-829)の3隻によるIRデコイ(赤外線探知ミサイルを撹乱する為の高熱源体)発射と高速航行の展示。本番の18日は波が高く、高速航行は残念ながらキャンセル。取材した15日は海面状態が良かったので、観閲部隊の間を高速で駆け抜けていく姿が見られました。
▼【観艦式2015】ミサイル艇のIRデコイ発射(10月15日)
https://youtu.be/s4K91zsCtQ8
艦艇による訓練展示に続いて、航空部隊による訓練展示に移行します。まずは第203教育航空隊のP-3Cによる対潜爆弾の投下。3機のP-3Cが、それぞれ4発ずつ対潜爆弾を投下します。対潜爆弾は着水後、目標とする潜水艦の深度に応じて爆発までのタイミングを調整する時限信管がついていますが、今回は着水しておよそ1秒ほどで爆発し、海面に大きな水柱が。
▼【観艦式2015】P-3Cの対潜爆弾投下(10月15日)
https://youtu.be/NCYSHBbmWzQ
今回観艦式に初参加したP-1は、2機で赤外線追尾ミサイルを撹乱するIRフレアの発射を見せます。
▼【観艦式2015】P-1のIRフレア発射(10月15日)
https://youtu.be/FQ4vNbN42J8
訓練展示の最後は、航空自衛隊のブルーインパルスによる展示飛行。編隊連携機動飛行を見せます。通常、地上の航空祭などで展示飛行を行っているブルーインパルス。海上で行われる観艦式で展示飛行を行うのは初めてのこと(F-86F時代に編隊航過飛行の経験はあり)。
▼【観艦式2015】ブルーインパルスのサクラとレベルキューピッド(10月15日)
https://youtu.be/doP_t-_TggI
今回の観艦式における展示飛行は、ブルーインパルスにとっても通常のものとは違う困難が伴うものでした。通常、展示飛行に際しては、空域進入や課目実施のタイミングを計る為に地上の目標物を決めて行っているのですが、海上には目印がありません。埼玉県の航空自衛隊入間基地を離陸したブルーインパルスは、実施空域までは通常の航法機器を使って進入していきました。そして、展示飛行時の「見栄え」の基準となるショウセンター(今回は観閲艦のくらま)が、今回は12ノット(時速約22.2km)で移動し続けています。特に見る角度によって見栄えが違ってしまう、サクラやレベルキューピッドといった俗に「描きもの」と呼ばれる課目の実施は、開始のタイミングが非常に難しいものとなりました。その中でも見事な展示飛行を見せたのはさすがです。
観艦式と訓練展示がとどこおりなく終了し、14時に観閲官の安倍首相はMCH-101の8653号機に搭乗し、くらまを離れました。
今回の観艦式には、外国メディアの姿も目立ちました。台湾の民放、FTV(民間全民電視公司)はカメラだけでなく、レポーターも取材に訪れていたのが印象的です。
観艦式の全予定を終了した各艦艇は、今朝出発した港へと戻っていきます。再び3時間余りの船旅です。行きと同じように、艦上ではラッパ吹奏実演、装備品紹介、ロープ結束体験など、様々な催しが行われます。
木更津、横浜、横須賀と帰る場所が違う各艦艇ですが、横須賀より離れている木更津や横浜に帰る艦艇は少々急ぎ足。横須賀に帰る艦艇を追い越していきます。その中には横浜港の大さん橋に向かう護衛艦いずも(DDH-183)の姿もあったのですが、護衛艦とね(DE-234)を追い越す時に、改めてその大きさを実感することになりました。かなり奥を離れて航行しているはずなのに……いずもの全長は、とねのおよそ2.3倍です。
観艦式を終えて、ほっと一息……といきたいところですが、翌日から観艦式に参加した外国艦艇との共同訓練も始まり、休みなく動き続ける海上自衛隊。次回の観艦式は2018年に予定されています。くらま退役後、新たな観閲艦は何になるのか(ヘリコプターが発着できること、栄誉礼を行う場所があること、VIP接遇設備があること、観閲台が設置できることなど条件が多い)、その点でも注目が集まりそうです。
▼1回目:観艦式2015・FLEET WEEK
https://otakuma.net/archives/2015113001.html
▼2回目:観艦式2015・観艦式
https://otakuma.net/archives/2015120102.html
(取材:咲村珠樹)