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望まない妊娠をして悩んだら…「にんしんSOS」

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 先日、生まれたばかりの子供4人をバケツに入れコンクリートで固めた母親が自首したというとてもショッキングな事件が報道されました。犯罪の動機は「育てるお金がなくて育てられないと思ったから」というもの。

 「彼氏がゴム付けるのを嫌がるから」「安全日だと思ってたから」「洗えば大丈夫だと思ってた」「外出しだから大丈夫って言われて」などなど、避妊に対する知識の甘さや彼氏に押し切られてつい、と望まない妊娠をしてしまうケースが後を絶ちません。そしてこうした場合にいつも辛く身体的にもダメージが大きいのは女性の方。

 こうした、「望まない妊娠」がどれくらい起きてどのような問題があるのか、またどうしたら少しでも防ぐ事ができるのかを調べて考えてみました。

  • ■20歳未満の人工妊娠中絶では満8週以上が半数以上

     望んで妊娠している人は妊娠検査薬を使って陽性判応が出た後、まず産婦人科へ行きおめでた宣言を受けます。が、望まない妊娠の場合、体の異変に気が付いて妊娠検査薬を使って陽性反応が出た後にする事は、「まず悩む」です。

     そして中絶するかどうか、相手の男性と今後どうするか、今後どうしたらいいのか親族にも言えないまま独りで抱え込んでしまう事が多くあります。妊娠検査薬で陽性反応が出た場合、既に妊娠2か月を経過しているため中絶するかどうかの判断を1か月かそこらでせざるを得ない状況となります。そのため場合によっては気づくのが遅れ、中絶できる期間が過ぎてしまい結果として人工出産による死産という手段をとるケース、そして最悪なケースとしては誰にもナイショで「自宅内外での出産」を行い新生児遺棄という悲しい顛末となり事件となる場合も……。

     驚くべき事に、15歳以下の中絶数はこの10年余り、変化していないという統計結果(厚生労働省 衛生行政報告例(2014)より)も出ており、若年者の出産数、中絶数と中絶率(2013年度全国)によると、15歳以下の出産数は235件、対する中絶数は1323件。15歳以下で妊娠した子供の85%が中絶しているという結果が出ています。

     また、年齢階級別人工妊娠中絶週数の比較(2013年度)の調査によると、20歳未満の若年者の人工妊娠中絶では満8週以上での中絶手術が半数以上の割合を占めており、若年者ほど体に負担の大きい中絶手術をしている事が分かります。

     どうしたらいいか悩んだ末に医療機関を受診するまでの間に胎児が育ってしまったが為、この様な体への負担の大きい中絶となってしまう事がこの数字からも読み取る事ができます。性衝動を抑えきれない若年者にも確実に避妊を行えるよう、小学校中学年以上からの具体的な性教育の充実が望まれます。

    ■社会的弱者への救済

     冒頭の事件では、出産した後に子供を4回も遺棄していますが、この女性に対しての救済措置はなかったのでしょうか?
    遺棄するくらいなら自分たちのところに生まれて欲しいと願う不妊で悩む人はかなりいるかと思います。不妊治療だけでも高額な医療費が必要となるため不妊治療を受けたくても受けられないという人も多くいます。

     望まない妊娠が起こる要因の一つとして、若年期の知識の欠如によるものもありますが中には知的障害や精神的な問題がある為に男性に騙されて中絶や出産からの遺棄を繰り返すケースも見られます。

     こうした、「社会的弱者」に対し、どう周りは対応していけばよいのでしょうか。

    ・孤立を防ぐ
     事件の女性は、望まない妊娠を繰り返したあとに息子を出産、現在は二人暮らしであるという事ですが、もし最初に妊娠した時点で誰かに相談する事ができていれば4回も繰り返すようなことはなかったと思います。

     こうした事件の背景にある殆どの要因として、「孤立化」があります。生活習慣や交友関係などが周りから見えているかどうか、見えている場合は適切であると言えるかどうか。社会から孤立しているとこういった事が見えにくくなります。生活環境が乱れている場合、何らかの問題を抱えているサインと考えても良いかと思います。誰かが気付き、第三者や公的機関の援助へと繋いでいくことができれば孤立化による問題の軽減に繋がったり事件を未然に防ぐ事ができるかもしれません。

    ・世代間連鎖を断ち切る
     問題がある家庭・環境には親世代やそれ以上の世代から問題を抱えているケースも多くみられます。虐待の連鎖もこれに当てはまります。育ってきた環境が普通、当たり前と思って劣悪な環境に身を置いていたり親や近親者からの暴力が普通と思って育ってしまうと問題を指摘された時に矯正する事が困難となります。
     家庭に問題がある子供は、精神的に問題を抱えやすくなり望まない妊娠への行為に走る事も。こうした問題の連鎖を断ち切るためにも第三者の介入が必要となってきます。

    ■各地に広がる相談窓口「にんしんSOS」

     人との関りが希薄な現在の環境で、私たちができる事は正しい知識と有用な情報を呼びかけていくことだと思います。現在、各自治体では直接運営にしろ医師会への外部委託にしろ「妊娠相談窓口」もしくは「にんしんSOS」という名で相談窓口を設けるところが増えています。全国相談可能な民間団体の窓口もあります。

     「妊娠SOS」か「にんしんSOS」で検索すると情報を発信している自治体や団体のサイトをすぐに複数見つけることができます。中でも、一般社団法人全国妊娠SOSネットワークという団体のホームページでは全国の相談窓口を一覧で掲載しており、さらに状況に応じた対応や支援の情報などを若年層でもわかりやすい表現で紹介しています。「まだ誰にも話せない」という場合にはとりあえずこちらのホームページで情報を得て、まず最寄りの窓口に相談してみるといいでしょう。

     ほかにも思いがけない妊娠に戸惑う人へ向けて、児童相談所が相談を受け付けています。番号は全国共通の189(いちはやく)。

     そして……「生む」と決めた人へ。もしくは「一人でも生んで育てられるか可能性を知りたい」という人へ。そんな人はお住いの役所にまず相談してみてください。ひとり親家庭の援助について諸々の支援を教えてくれますし、支援を受ける手続きを行うこともできます。もちろん産後でもその人その人の状況にあわせ相談や支援が受けられます。

     突然の望まない妊娠。誰にも相談できずにパニックになる人が少なからず存在します。テレビニュースでもよく目にする遺棄事件しかり、自暴自棄になり流産しようと自分の体にムチャをする人も……。こうした情報を発信することで、一人でも悲しい結末を迎える人が減る事を願っています。

    (引用・参考)
    厚生労働省  子ども・子育て支援 > 母子家庭等関係
    厚生労働省  特別養子縁組制度について
    性教育:15歳以下の妊娠・出産の実態とは? – 日本産婦人科医会
    一般社団法人 命をつなぐゆりかご
    一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク

    (看護師ライター・梓川みいな)

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