新しい命が宿る事は基本的にとても嬉しく喜ばしい事です。ですが一人の人間の体の中でもう一人の人間をミリ単位の細胞から約3Kg前後までつつがなく育て上げるには、妊娠した体に相当の負荷がかかります。その負荷が、時に思わぬ事態となる事もしばしば。現役の産婦人科の医師がそんな妊婦に鳴らした警鐘がネット上で話題となっています。
「妊婦になったら、指輪を外してもらいたい。妊婦はむくむものだし、もし緊急手術などでむくみがさらにひどくなったら、指の鬱血を避けるために指輪を切断する可能性あり。また、病院側が気づかずに手術中に電気メス使って指輪から放電したら、指が大火傷になって最悪だと指切断とかあるかも」というツイートで妊娠中の指輪着用に警鐘を鳴らしているのは、ツイッターでも数々の有益な医療情報をツイートされている“産婦人科医”さん。このツイートには、実際に指輪を切らざるを得なくなった人の経験や医療者側からの意見など、様々な反応が寄せられています。
妊婦になったら、指輪を外してもらいたい。妊婦はむくむものだし、もし緊急手術などでむくみがさらにひどくなったら、指の鬱血を避けるために指輪を切断する可能性あり。また、病院側が気づかずに手術中に電気メス使って指輪から放電したら、指が大火傷になって最悪だと指切断とかあるかも
— 産婦人科医 (@syutoken_sanka) June 13, 2012
実際に出産前に指輪を切るという経験をした人たちからは、「出産直前になって指がびっくりするほどむくんだ結果、指輪が外れなくなって泣く泣く指輪を切りました。」「産前に指輪を抜こうとしたら抜けず、消防署まで行って切ってもらいました」「緊急の帝王切開になった時に指輪を外してと言われても外れず、仕方なしに切断したけど結婚指輪を切ったショックは大きかった」などなど。
結婚指輪は籍を入れたという大切な証であり、特に女性は肌身離さず薬指に付けておきたい、という人も少なくありません。しかし、その大事な指輪が妊娠で外れなくなってしまい、真っ二つにせざるを得なくなってしまったら……つらすぎます。でも指輪よりも人を優先するのはごく当然と言えるので、結論としては妊娠したら指輪を外しておくのが一番確実なのです。
■ 指輪以外にも妊婦が避けたいオシャレは「ジェルネイル」
指のオシャレに関連して、爪につけるジェルネイルも妊娠中はやめておきましょう。マニキュアと違ってUVで硬化させるジェルネイルは除光液ですぐとる事ができません。しかも、ジェルの色素やラメ、ラインストーンなどの金属は指輪同様、電気メスにより体内に電気が通ると反応して火花が出て火傷、最悪な状態となると爪や指先を失う事にも繋がりかねないのです。
もう一つ、ジェルネイルを妊娠中にして欲しくない理由として、緊急時の血中酸素飽和濃度が指先で測る事が困難となる、という事もあげられます。血液中に酸素が十分な状態であるかどうかは急変時の呼吸状態、循環状態をある程度把握できる大事な観察ポイントとなりますが、指先にネイルが付いていると測定器が指先の血流を測定する事ができません。では透明なネイルはというと、こちらもジェルの厚みによって指先の血流を上手く測定できない可能性が高く、誤差を生む結果となってしまうので、爪のオシャレは妊娠中はやめておいた方が良いのです。
■ 中には意外な盲点も
これらの事から、直接肌に身に付けるもので取り辛いものは妊娠中に避けておくべきという事がお分かり頂けたかと思います。しかし、注意すべきはこれだけではなく、他に盲点もあります。それは、巻き爪矯正に金属製のワイヤーを爪に通している場合。妊娠中に限らず、緊急手術の際にはこのワイヤーも除去対象となるのですが、手術台に上がってはじめて医療者が足指のワイヤーに気が付いて慌ててペンチで除去した、という事例も報告されています。巻き爪の矯正をしている間に妊娠した方は、妊娠週数が進む前に一度除去しておきましょう。
妊娠中は体の状態が普段の状態とは全くと言ってもいいくらいに異なってきます。妊娠中にしかできないマタニティウェアを楽しんだり、マタニティフォトを撮影するといった楽しみもありますが、妊娠中に旅行に出る「マタ旅」同様、直接肌に付けるオシャレは思わぬ危険を招く事があります。今妊娠中の人も、妊娠の予定や可能性がある人も、くれぐれも気を付けてマタニティライフを楽しんで欲しいと思います。
<記事化協力>
産婦人科医さん(@syutoken_sanka)
(梓川みいな/正看護師)