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「巨頭オ」の看板がみつかった?噂の現場に行ってみた<前編>

 知ってなくても生きていく上では全く困らない。そんな役にたたない事ばかりを記事にしては、「どうでも良いことわざわざ記事にすんな!」と、読者に毎度叱られている筆者です。こんにちは。

  •  さて、そんな私が今回紹介するのは2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)発祥のオカルト伝説「巨頭オ」。物語に出てくる「巨頭オ」の看板が鹿児島県で発見されたと、2018年夏にツイッターで話題になりました。

     ネタか誰かのイタズラだろうと考えてはいたのですが、個人的に気になりすぎて居住地の千葉から鹿児島の現地まで片道約1300キロかけて、2019年の年始に行ってきました。その時の様子や追加取材の様子を、どうでもいいことを毎回本気で調査する「無駄な事にまじめに取り組むシリーズ」(不定期連載)の一つとして紹介していきます。

     ちなみに何故このタイミング?と思う人がいるかもしれないので、先に結論(ネタバレ)&事情を説明しておくと、当たり前に「現地には巨頭オの看板なんてなかった」というシンプルなオチ&巨頭オに関わりがないことを示すための追加調査(その後2回)で時間がかかった、というだけのことです。

     正直なところ、記事でまとめるには弱いかな……とも思っていたのですが、現地には何もないにも関わらず情報だけがそのまま一人歩きしつづけ、ネット上では未だ「現地に行ってみては?」みたいな無責任なまとめ記事や動画が生産され続けているということに最近気づきました。そこで、今更ながら「何にもなかった」をお伝えするために、これまでの苦労を交えて放出します。

    【注意】
    ・本稿はWEB記事にはあるまじき文量があります。読むのに少し時間がかかるので、時間がない方はブックマークをして暇なときにゆっくりお読みください。
    ・鹿児島での調査は前編・後編で計3回(他取材のついで含)行っています。記事では一連で紹介していますが、実際は時期が異なります。

    ■ 「巨頭オ」ってなに?

     そもそもですが「巨頭オ」とは先に軽く紹介したとおり、2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)発祥のオカルト話。2006年2月22日に投稿されて以来、多くの人を怖がらせています。しかし、この話は「投稿者の創作である」という意見がもっぱら。

     投稿者は同じ日に同じIDで、“全く別”のオカルト話を投稿しているのです。そのうちの一つが今回調査対象となった「巨頭オ」。どちらもよくできたオカルト話ですが、一日に二つも違うオカルト話を投稿するというのは、どう考えても不自然です。

     こうした行動から投稿者はオカルト話の創作者。よってこの物語も「創作の可能性が高い」と考えられています。しかし、話の不気味さから信じる人は後をたたず、人から人へ語り継がれ、今でも広く知られる近代オカルトの話となっているのです。

     物語はざっとこんな内容。投稿者(主人公)はあるとき、数年前に一人旅で訪れた「小さな旅館のある村」を思い出します。そこでは人々から心からもてなされたといい、その時の思い出から、ふとまた行ってみたくなりました。

     ちょうどタイミングは連休。早速、車を走らせ行ってみることにしたのです。記憶には自信があったといい、地図は見ずに車を走らせました。しかし、目的地近くで見えてくるはずの目印の看板「この先○○km」が見えてきませんでした。代わりにあったのが「巨頭オ」と書かれた、謎の看板。

     この看板に不審を抱きつつも、さらに進み記憶にある村の場所までたどりつきました。しかしそこに広がっていたのは廃村。

     建物には草がまきつくなどしており、うち捨てられてしばらくたった様子がうかがえました。投稿者はあまりの変わりように、思わず車から出ようとしたところ……、少し先の草むらから頭がやけに大きな人影が飛び出てきたのです。

     気づけば、周りにも「頭の大きな何者か」が……。すると次の瞬間、両手をピタリと足につけ、頭を左右に振るという気味の悪い動きでこちらに向かってきたといいます。投稿者はあまりの恐怖に、車を猛発進。その後なんとか逃げ切り、頭の大きな何者かから逃れることができたそうです。

     やっとのことで投稿者は家に戻ります。冷静になり、ふと頭をよぎったのが「もしかして別の村に行ってしまったのかも」。そこで改めて地図で調べてみたところ、今回訪れた場所はやはり前回と同じだったということを確認したそうです。

     ざっと説明するとこういうお話。オリジナルを読みたい方は「巨頭オ」で検索するとすぐに出てくるので、調べてみて下さい。

    ■ 物語は有名だけど場所がどこかは長年謎のまま

     物語に出てきた「巨頭オ」と書かれた看板。もし本当にあるのだとしたら、「巨頭村」や「巨頭杉」と書かれていたものが、長年雨風にさらされたことにより「寸」や「彡」の部分が消えたのではないかとも考えられています。

     とはいえ、日本中どこを探しても「巨頭村」なんていう村はありません。「巨頭杉」についてはありそうではありますが、物語に出てきたような看板が発見されたという話は長年出てきませんでした。こうしたことも「物語が創作である」という説をより裏付けていたのです。

     ところが2018年夏、「巨頭オ」と書かれた看板の写真がツイッターに投稿されました。それにより、この物語が再び注目を集めることに。

     投稿者によると、偶然通りかかった林道の脇に設置されていたといいます。発見場所については鹿児島県の金峰山付近であることだけが紹介されていました。なお、投稿者は巨頭オについて全く知らなかったようで、ネットに投稿したあと、周囲からの意見で初めて巨頭オの存在を知ったようすでした。

    ■ 鹿児島県で発見された「巨頭オ」の看板

     ネットで騒がれた2018年の「巨頭オ」の看板。当初から、純粋に存在が信じられていたわけではありません。これも「誰かのイタズラ」が濃厚だと考えられていました。

     それに「巨頭オ」の看板がツイッターに投稿がされてわずか数日後には、別のネット民が投稿者が記した場所のヒントをもとに現地調査を行っています。その報告によると、「現地にそんなものは無かった」という事でした。

     誰かの現地チェックが済んでいるので、わざわざ現地まで行くことはなかったんじゃ……と思う方もいるかもしれませんが、当時私の心にライターとしての心構え「原点(原典)をあたれ」が、ささやきかけてきました。記事にするにはどんな形であれ、まず確認が必要です。

     実は話題になった当時、看板の発見者の方に取材を申し込みました。お断りこそされなかったものの、返事がないと言う状態。ならば、自分の目で確かめるしかないという結論に至ったのです。それにもともと、オカルト話は好きな方。そこで、時期をみて自分のタイミングで現地取材に行ってみることにしました。

    ■ 1月に菜の花咲き乱れる南薩エリア

     鹿児島県を訪れたのは1月半ば。看板があった場所といわれる南さつま市を含む南薩エリアでは、ところどころ菜の花が咲いていました。

     また、南さつま市のおとなり指宿市では、ちょうど「いぶすき菜の花マラソン」の開催日。ついでに……と、スタート前に少し会場を覗いてみると、ご当地ならではのお店が沢山ならび、多くの人で賑わっていました。













     温泉の町指宿らしく、足湯まで設置された菜の花マラソンの賑わいを尻目に、一人目指すは「巨頭オの看板」。大体の場所は千葉を出る前に調査済みなので、後はレンタカーを走らせるだけです。

     なお、先に書いておきますが、詳細な場所については記しません。既にネット上に出回っている、南さつま市「金峰山(きんぽうざん・標高636m)の付近」とだけ紹介しておきます。

     これは近所の方に迷惑をかけたくないということと、現地に行くには車かバイク以外手段がないことが理由。それに土地勘のない人がナビ任せにして行くと細い悪路の山道(片側は崖ですれ違いも困難)がナビゲートされてしまい、事故を起こす可能性が高いと考えるからです。筆者自身がナビ任せにして、なかなかハードな道を走るはめになりました。後で知る、安全な道もあったわけですが……。

     そもそも、本稿の趣旨の一つは「現地には巨頭オの看板なんてなかった」「だから危険を冒してまで行く意味が無い」ということをお伝えするのが目的。記す理由もないと考えます。

    ■ 現地到着!!そこに待っていたものは

     宿泊していた指宿市から車を1時間と少し走らせます。ナビには事前にGoogleストリートビューで特定しておいた、金峰山付近の山中にある目的地をセット。そしてナビに従い進んだところ……先述の通り泣くはめになりました。指宿から金峰山に向かう場合は南薩縦貫道・南九州川辺ダムICでおりて県道19号をそのまままっすぐに行き20号に入る方が安全だったもよう。



     帰りにこの安全ルートに気づいたわけですが、向かう運転中には「運転に慣れていない人は通っちゃいけないなぁ」なんてことばかりブチブチ考えていました。そうこうするうち、たどり着いた現地。目的地の手前には、民家や畑が広がっていました。

     周辺は農業の方が多いのか、遠くに農機具の音が聞こえるだけで人影はありません。といっても、巨頭オの話に出てくるような「廃れた村」というわけではなく、人が住んでしっかり手入れしている家ばかり。THE日本の田舎、といった感じののどかな光景が広がっていました。とにかく、わーわーキャーキャー、興味本位でイタズラに訪れる場所ではないですね。

     さて、現地レポートですが、ツイッターに投稿された写真を参考に、木の配置や道路のカーブなどから最終特定しました。


     看板があったという木の根元を見てみると……。うーん。誰かが何か棒のようなものを刺したような跡があるような、ないような?木の後ろものぞき込んで見てみましたが、ちょっと傾斜があるぐらいでその先にも、木、木、木、木。ここも特に異常なし。やっぱりイタズラだったのでしょうかね。


     あったと言えば、道路をはさんで反対側のコンクリートの階段。その数段のぼった先にあるのは電波塔。某携帯電話会社のもので、現役バリバリで稼働しているものでした。


     ちなみに、訪れた当時はネットで話題になってまだ数か月ということもあり、先に誰か訪れた跡がありました。普段人が行かないような場所なのに、巨頭オの看板があったという木の根元付近には、割と新しめなパンの袋が。捨てちゃダメでしょ……。

     ということで、現地を見てきた結論ですが、何度も繰り返すとおり「巨頭オの看板なんてなかった」です。また、すぐそばにある集落は決して「廃村ではありません」。肝試しに行く場所でもなければ、人が大挙して訪れる場所でもありません。この話が出て2年ほど経つにも関わらず、ネット上では2020年の今年も「行ってみてはいかがだろうか」みたいな動画や記事があげられていますが、大事なことなので何度も繰り返します。そこには「行ってもなにもない」ということです。

     以上、筆者の現地レポートでした!!!と、締めたいところだけど……調査はさらに後編【「巨頭オ」の看板がみつかった?噂の現場に行ってみた<後編>】へと続きます。

    (宮崎美和子)

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    鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)、マーケを経験。運営・システム関連では管理職も務める。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40才すぎてバレエを習い始めました。

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