バレエ発表会のときに必ずおこなう「舞台メイク」。以前は、会場入りして先生やOGのお姉さんたちが舞台メイクを施してくれるのが一般的でした。

 しかし、コロナ禍以降、自宅で舞台メイクをおこなってから会場入りする流れを採用している教室が増えています。「楽屋内での密を避けるため」「メイク中はマスクができないから」などの理由があるようです。筆者もコロナ禍以降、同様の流れに変わりました。

 「自宅で舞台メイクをしてから会場入りする際の注意点」というややマニアックな内容ですが、舞台メイクに慣れていない方や初めて発表会を迎える方にとっては参考になるはず。「きれいな舞台メイクをするため」「周囲への配慮のため」という2つの観点で解説します。

■ 事前に練習する

 舞台メイクは、必ず事前に練習しましょう。基本的に多くの教室では、発表会前に「メイクレッスン」の時間を設けています。コロナ禍以降は口頭でざっくり指導するだけの場合もありますが、どちらの場合でも個人的に必ず練習はしておきましょう。

 舞台メイクは、「いかに顔立ちをハッキリ見せられるか」が大切です。ファンデーションを厚塗りにしたり、つけまつげを付けたりと、普段のメイクとはかなり異なります。

 また、メイクに慣れていない幼児・小学生などは、メイクの感覚を嫌がることも。できれば本番までに2~3回練習し、写真に撮るなどして先生に問題ないか確認してもらいましょう。

 事前に練習しておくことで、バタバタしがちな発表会当日の朝でもスムーズに舞台メイクを終えられます。

【ボーイズ(男の子)の場合】

 男の子の場合、メイクをする際には女の子とは異なる注意点があります。例えば、男の子の衣装は襟付きのものが多いため、衣装を汚さないようにファンデーションの塗り方にも注意が必要です。

襟元は汚れやすい

 女の子ならば顎の下まで塗ることがほとんどです。一方男の子は顎から下にはファンデーションは塗らない、そもそもファンデーション自体薄く塗るなど教室や先生で方針(指導)が異なります。

 これはとても大切なことなのですが、発表会前は先生方も慌ただしく、伝え忘れてしまうことや、注意点に気づかず方針が決まっていないこともあります。自宅からメイクをしていく場合で、気になる点、不安点があれば事前に親から積極的に相談するようにしておくと良いでしょう。

■ 前開きの服や襟ぐりが広い服を着てメイクする

 自宅でおこなう場合に限りませんが、舞台メイクをする際は必ず前開きの服や襟ぐりが広い服を着ましょう。

 先述のとおり、舞台メイクは一般的なメイクよりかなり濃く仕上げます。襟ぐりが狭い服や首が詰まった服の場合、脱ぎ着する際にメイクが服についたり、メイクが崩れたりします。

 ジップアップパーカーや襟を大きめに切ったTシャツがおすすめです。

【ボーイズ(男の子)の場合】

 発表会のお手伝いをよくしている方に聞いたところ、小さい男の子の場合には「ジップアップパーカーや襟を大きめに切ったTシャツ」に加え、Tシャツの色は意外にも「白」がオススメだそうです。

 男の子は肩や裾の部分でつい顔をぬぐいがち。白ならばメイクが落ちた度合いが他から一目瞭然になるので、お手伝いする側も直す判断につながりやすくなります。また白であることで本人にも「汚してはいけない」という意識が働きます。そうした理由から、汚れが目立たない黒やグレーよりも「白」が良いと話していました。

■ 難しい部分のメイクは無理しない

 眉やアイラインなど、難しいパーツがどうしても仕上げられないときは、潔く諦めるのもひとつの手段。というのも、舞台メイクは修正に手間がかかるからです。

 もちろん、できるかぎり自分で頑張ることは大前提として、どうしても難しい部分は楽屋入りしてから先生やOGのお姉さんに任せたほうが早い場合もあります。特に、眉やアイラインなどの目元のパーツは表情を左右する部分です。描き方によっては、怒っているように見えたり、困った表情に見えたりすることも。

 生徒数が多い場合やスケジュールがタイトな場合もあるため、すべての人に推奨できることではありませんが、「楽屋入りの時間が迫っているのにメイクが上手くいかない!」となったときは選択肢のひとつとして検討してみてください。

■ 公共交通機関で移動する際は周囲への配慮を

 意見が分かれることだとは思いますが、個人的には、舞台メイクをした状態でそれを隠さずに公共交通機関に乗ることはあまり好ましくないと考えています。

 見慣れていない人にとって、舞台メイクは「派手で濃いメイク」です。びっくりしたり、ギョッとしたりする人もいるかもしれません。また、混み合っている車内では、濃いメイクがほかの乗客の服に付いてしまう可能性もあるでしょう。

 できれば、マスクやサングラスなどで舞台メイクを隠し「他人に不快感を与える可能性を低くする」ことをおすすめします。

 筆者が以前出場したコンクールの審査員の方も、舞台メイクを隠さずに公共交通機関で移動することに関して苦言を呈していました。賛成・反対どちらの意見もあるとは思いますが、個人的には「周囲の人をギョッとさせたくない」という思いで、公共交通機関で移動する際はマスクとサングラスを着用しています。

■ 美しい舞台メイクで本番を迎えよう

 慣れていない方にとっては、セルフの舞台メイクに不安感があると思います。

 しかし、慣れてしまえば舞台メイクは案外スムーズにできるものです。美しい舞台メイクで本番に臨めるよう、慣れるまで繰り返し練習をおこないましょう。

 教室によっては、メイクのやり方やメイク用品、色の指定があるため、それらもあわせて確認しておくと安心です。

(上村舞)