バレエのレッスンでは、主にバーを持って動く「バーレッスン」とバーから離れて動く「センターレッスン」の2つをおこないます。

 センターレッスンは、バーレッスンより動きが複雑になるため、バレエの動きに慣れてきた人でも「順番が分からなくなってフリーズしてしまう」ということも。

 そこで、バレエ歴20年超えの筆者が「センターレッスンでスムーズに動くためのコツ」を4つ紹介します。ぜひ、本稿で紹介する内容を次のレッスンで役立ててください。

■ 【前提】バレエ用語をしっかり覚えることは必須

 以前紹介した「バーレッスンを覚えるコツ」でも書いたとおり、バレエ用語をしっかり覚えておくことは必須です。

 バレエ用語の意味・動きを知らずにレッスンを受けることは、単語を知らずに外国語を話そうとすることと同じ。

 「えーっと、アッサンブレって何だっけ?」「グラン・ジュテってどうするんだっけ?」と考えているうちに、音楽は流れていってしまいます。「パ(動きのこと)の名前を言われた瞬間に動きが頭の中に浮かぶ」状態が理想です。

 とはいえ、センターレッスンで出てくるパは多いため、覚え切れていないという方もいるでしょう。パが覚えられているか不安な方は、バレエ用語をまとめた書籍やYouTubeなどの動画を活用するのがおすすめです。

 とくに、書籍なら、パの動きだけでなく、意味(アッサンブレなら「集める」など)、注意するポイントなどもカバーできるものが多くあります。一冊持っておくと上達に役立つでしょう。

 本を読んだり動画を見たりする時間が取れないという方は、「レッスン後に、レッスン中にやったパを頭の中で復唱してみる」という方法もおすすめです。

 レッスン中に一度やっている動きですから、映像としては頭に浮かんでくるはず。その「動き」と「パの名前」を結びつけてみてください。この方法なら、レッスンの帰り道でもできるため忙しい方にぴったりです。

■ センターレッスンのコツ(1)パをグループごとに覚える

 順番を覚えることが苦手な人にありがちなのが「全てを一気に覚えようとする」こと。一気に覚えようとすると情報量が多くてパニックになってしまいます。順番をいくつかのグループにまとめて、グループごとに覚えていく方法がおすすめです。

 ここで、覚えるのが大変なセンターレッスンのひとつ「アレグロ」の順番を例に出してみます。

(右に)グリッサード、アッサンブレ、アッサンブレ、アッサンブレ、ジュテ、ソテ、パ・ド・ブレ、左から繰り返し

 順番が頭に浮かびましたか?仮にこのような順番を言われた場合、筆者なら以下のようなグループに分解して覚えます。

(1)グリッサード、アッサンブレを右に1回(2カウント)
(2)アッサンブレを2回(2カウント)
(3)ジュテ、ソテ、パ・ド・ブレ(4カウント)→これで右足前5番に変わる
(4)左から繰り返し

 このように、グループに分解して覚えることで情報が整理され、覚えやすくなります。

 多くの場合、8カウントまたは16カウントを使って踊るため、全部で8カウントなら2カウントごと、16カウントなら4カウントごとなど、カウントごとに区切るのもおすすめです。

■ センターレッスンのコツ(2)どの方向に向かって行うのかハッキリさせておく

 バーレッスンよりセンターレッスンのほうが難しい理由のひとつが「方向が増えること」。正面を向いたり、斜めを向いたり……「なぜか隣の人と向き合ってしまった!」なんてことを経験した人も多いはずです。

 ご存じの方も多いと思いますが、バレエには8つの方向があります。東西南北に例えると、北が1、東が3、南が5、西が7です。そして、その間、つまり北東・南東・南西・北西に2・4・6・8が入ります。

バレエの方向8つ

 最初のプレパレーション(準備)のとき、おへそ(骨盤)はどの方向を向いているのか、順番の中で方向が変わることがあるのかなど、方向がハッキリ分かっていないと順番をスムーズにこなすことができません。

 少し難しいかもしれませんが、センターレッスンの順番を覚えるときは「方向」もあわせて覚えるようにしましょう。

 慣れてきたら、8つの方向とあわせて「アン・ファス」「クロワゼ」「エファセ」「エカルテ」といった用語も理解できるとさらに覚えやすくなります。

 なお、クロワゼとエファセは脚をドゥバンとデリエール(前と後ろ)に足を出すとき、エカルテはアラセゴン(横)に出すときに使用する言葉です。

* * *

【アン・ファス】……「正面を向いて」という意味。「アンファスで」と言われたら、おへそも顔も1番に向ける。

【クロワゼ】……「交差した」という意味。正面から見たときに軸足と動足が交差しているポジションのこと。

右足前のクロワゼ・ドゥバン(前)なら、おへそを8番に向け、右足を8番に出す。

右足前のクロワゼ・デリエール(後ろ)なら、おへそを8番に向け、左足(=後ろの足)を4番に出す。

【エファセ】……クロワゼとは逆で、正面から見たときに軸足と動足が交差していないポジションのこと。

右足前のエファセ・ドゥバンなら、おへそを2番に向け、右足を2番に出す。

右足前のエファセ・デリエールなら、おへそを2番に向け、左足(=後ろの足)を6番に出す。

【エカルテ】……「離れた」という意味。足を横に出すときのポジションのことで、エカルテ・ドゥバンとエカルテ・デリエールがある。

右足のエカルテ・ドゥバンなら、おへそは8番に向け、右足を2番に出す。目線も2番に向け、やや上方向を見る。

左足のエカルテ・デリエールなら、おへそは8番に向け、左足を6番に出す。目線は2番に向け、やや下方向を見る。

* * *

 8つの方向と「アンファス」「クロワゼ」「エファセ」「エカルテ」の用語を理解することで、指示を理解するスピードが上がります。

 「アンファス」などの用語は、文字だけの説明より視覚的に理解するほうが分かりやすいはず。ぜひ、書籍やYouTubeなどを活用して覚えてみてください。

■ センターレッスンのコツ(3)自分の順番が来るまで反復練習を行う

 バーレッスンは全員同時に動きますが、センターレッスンでは何人かに分けて、グループごとにおこなうことがほとんどです。

 順番を覚えられない人にありがちなのが、自分の順番が回ってくるまで前のグループの人をじーっと観察していること。インプットも大切ですが、何より自分の身体で実践しなければ、正確に覚えられません。

 自分の順番が回ってくるまでは、繰り返し練習して身体に動きを覚えさせましょう。

 なお、そのときは実際に踊っている人の邪魔にならないよう、周囲に気を配ることも忘れないようにしてください。順番を覚えることに必死になり、踊っている人の邪魔をしてしまうと怪我に繋がります。

■ センターレッスンのコツ(4)立ち位置やグループ順も要注意

 実際に踊り出すとき、順番に自信がないからと端っこに立っていませんか?

 例えば6人1組でおこなう際、一番カンニングできるのは後列の真ん中の立ち位置。カンニングしないで済むほうがもちろんいいのは間違いないのですが、順番に自信がないときは左右どちらを向いても人がいる立ち位置を選んでみましょう。

 また、一番最初に踊り出すファーストグループに入ると、振り渡しから時間があまりないため間違いやすくなります。できれば二番目以降のグループに入るのがおすすめです。

 なお、二番目以降のグループに入ったときも「ファーストグループじゃないから」と油断せず、ファーストグループで踊るつもりで覚えると、より集中できるはずです。

■ センターレッスンで「リバース(逆回し)で」といわれたときは

 センターレッスンでおこなうバットマン・タンジュやアレグロでは、ときどき「リバースで!」といわれることがあります。リバースとは、逆回しでおこなうことです。

 筆者が通う教室でもときどき「リバース」をするのですが、正直構えてしまいます。一度はできていたものの、リバースになるとパニックになったりフリーズしたりする方も多いでしょう。

 リバースのコツは、とにかく「これの反対は何?」と考えること。例えば、ドゥバンの反対はデリエールですし、方向で言えば2番の反対は6番、通常の順番のときに出した足を「前」に閉じたのであれば、リバースでは「後ろ」に閉じる、という感じです。

 当たり前といえば当たり前なのですが、「Aの反対はA’」と瞬間的に考えることができれば、リバースでパニックになることもありません。

 とはいえ、やはり慣れは必要です。初めの内はリバースの順番を考える時間が与えられると思うので、他人の動きを真似するのではなく、自分の頭で考えて実践してみましょう。ある程度慣れてくると、それほど考えなくてもリバースがスムーズにできるようになります。

 また、リバースをおこなわないときでも「この順番を逆回しでしたらどうなるかな?」と考える癖をつけることもおすすめです。リバースが苦手な方は、レッスン後や自宅で復習してみるとリバースの苦手意識が薄くなるはずです。

■ 「インプット」と「アウトプット」を繰り返すことが大事

 筆者が思うセンターレッスンのコツを4つ紹介しました。

 簡単にまとめると、勉強と同じく「インプット」と「アウトプット」がとっても大事。グループごとに分けて覚えて(インプット)、反復練習で覚えたかどうか確認する(アウトプット)の繰り返しなのです。

 ぜひ本稿で紹介したコツを意識して、次のレッスンに臨んでみてください。試行錯誤する中で、「見て覚えるより実際に動いたほうが覚えやすい」「先生が説明しているときは、動かずに見ることに集中するほうが覚えやすい」など、より自分に合った覚え方が見つかるはずです。

(上村舞)