バレエでつま先立ちを可能にする「トゥシューズ」。ぴったり自分の足に合っていないと非常に履きにくい、繊細な靴です。プロのダンサーは、ミリ単位で履き心地にこだわり、自分に合うようにカスタマイズしています。

 しかし、そもそも足の大きさに左右差があったら……?

 通常の靴と同様、トゥシューズも左右同じサイズで販売されていますので、片方のサイズに合わせると片方が合わない……という結果になってしまいます。

 そこで、トゥシューズ経験者約250名に「足の大きさに左右差がある場合の工夫」を尋ねました。中には、バレエ歴20年超えの筆者が知らなかった方法も。左右差に悩んでいる方は、ぜひ取り入れてみてください。

■ 足の大きさに左右差がある人は約6割

 そもそも、足の大きさに左右差がある人(もしくは、左右差を自覚している人)はどれほどいるのだろう?と疑問に思い、アンケートに組み込んでみました。

 【質問1】足の大きさに左右差はありますか?

・ある……59.9%
・ない……24.3%
・わからない……15.8%
(回答総数:247)

足の大きさに左右差はありますか?

 足の大きさに左右差がある人は約6割、思ったより多くの人が足の左右差を感じているようです。

 中には、靴屋さんなどで自分の足を細かく計測したことがあり、「右は左より〇ミリ大きい」とミリ単位で左右差を把握している方も。

■ 足の大きさに左右差がある場合のトゥシューズの工夫

 ここからは、アンケートで分かった工夫を紹介していきます。

 まずは、アンケートの結果を見てみましょう。

【質問2】(左右差がある方のみ)トゥシューズを履くときにどのような工夫をしていますか?

・トゥパッドなどの詰め物で対処している……47.6%
・サイズ違いを2足購入し、左右で別のシューズを履く……18.1%
・特に何もしていない……27.5%
・その他……6.7%
(回答総数:149)

 一つひとつ解説していきます。

―― 工夫(1)トゥパッドなどの詰め物で対処している(47.6%)

 アンケートで最も多かったのは「トゥパッドなどの詰め物で対処する」という工夫でした。例えば、右足のほうが小さいのであれば、右足のみトゥパッドを1枚足すといった方法です。

 トゥパッドは、厚さや素材、形も多種多様なので、上手く組み合わせることで左右差を気にせずトゥシューズを履けるようになります。また、価格も安く、気軽に購入しやすい点もメリット。左右差が気になったら、初めに試したい方法です。

 ただし、トゥパッドを何枚も重ねすぎると、指先の感覚が感じづらくなることも。左右差が大きい方は、トゥパッドだけで対処するのは難しいかもしれません。

 なお、筆者のリサーチでは、トゥパッド以外にも古いタイツの切れ端などで左右差を調整している方も見られました。指全部を覆うトゥパッドに比べて、タイツの切れ端なら部分的に調整できます。「小指側だけ気になる」など、部分的な調整が必要な場合は、このような調整方法もおすすめです。

―― 工夫(2)サイズ違いを2足購入し、左右で別のシューズを履く(18.1%)

 「特に何もしていない」を除き、二番目に多かったのが「サイズ違いを2足購入し、左右で別のシューズを履く」という方法。例えば、23.5cmと24cmをそれぞれ一足ずつ買い、右足は23.5cmのトゥシューズを、左足は24cmのトゥシューズを使うといった感じです。

 ほとんどのトゥシューズは、左右が明確に決まっているわけではありません。そのため、左右で異なるシューズを履いても問題ないのです。

 とはいえ、同じサイズのトゥシューズでも、履いたときに「こっちが右(左)っぽい」といった感覚は多少あるもの。そのため、こちらの方法でも完全に左右差が気にならなくなる、とはいえないでしょう。

 また、一度に必ず2足購入しないといけないため、金銭的負担も大きくなります。そのため、個人的にはトゥパッドで対処できないほど左右差が大きい方に試してほしいと感じました。

―― その他の工夫

 上記以外の工夫として集まったものを2つ紹介します。

・引き紐(履き口に付いている紐)で調整する
・大きいほうのシューズを水で濡らす→乾燥を繰り返し、サイズを縮める

 引き紐で調整する方法は、大きいほうの足に合わせたサイズを購入し、小さいほうは引き紐を絞って足にフィットさせるという方法だそう。この方法なら、足の大きさだけでなく、幅が違う場合でも対処できそうです。

 また、「大きいほうのシューズを水で濡らす→乾燥を繰り返し、サイズを縮める」という方法も。こちらは、バレエ歴20年超えの筆者も初耳の方法でしたが、ネットで検索してみると、トゥシューズのサイズ調整の方法として実行している方が多数いらっしゃいました。

 やり方は、縮めたい部分に霧吹きで水をかけて濡らし、自然乾燥またはドライヤーで乾かすというシンプルな方法。なお、ソール(足底の部分)を濡らすと、柔らかくなってしまうため、ソールは濡らさないことが大事だそうです。

■ なぜ左右差があるのか?にも着目して

 ここまで、左右差がある場合の工夫を紹介しましたが、そもそも「なぜ足の大きさに左右差があるのか」にも着目しましょう。

 原因はさまざま考えられますが、バレエをやっている上では「足裏の筋力の差」「外反母趾などの変形によるもの」なども考えられます。

 もちろん生まれ持った左右差もあるため、一概にはいえませんが、あまりにも左右差が大きく、トゥシューズの調整に困っている方は、一度病院や整骨院などに行くことも検討しましょう。まずは、バレエの先生に左右差があることを話したり、実際の左右差を計測したりすることから始めるのもおすすめです。
 
 また、今回紹介した方法に限らず、トゥシューズの加工すべてにいえることですが、加工はメーカーが推奨しているものではありません。見よう見まねでおこなうと、思わぬケガに繋がる可能性もあります。

 とくにトゥシューズ歴が浅い方は、独自判断で加工などをせず、先生に相談しつつ調整することをおすすめします。(トゥシューズが原因でなく、立ち方が原因になっている可能性もあるため)

※トゥシューズの表記について:「toeshoes」をカタカナ表記する場合「トーシューズ」が正しいとされていますが、本稿では日本にあるバレエ用品店やバレエの専門書籍等が主に使用している「トウシューズ」「トゥシューズ」の2つのうち、「トゥシューズ」を優先して使用しています。

(上村舞)