バレエのレッスン中に飛び交う先生からの指導。
「つま先を伸ばして!」「目線もっと上に!」など具体的な表現がほとんどですが、ときには「それどういう意味!?」と一瞬困惑してしまう“バレエの先生による独特な表現”もあります。
そこで、XおよびInstagramにて、バレエ経験者からこれまで聞いたことのある“バレエの先生の独特な表現”を募集しました。すると、案外“独特な表現”の中でも定番ネタがあることが発覚!きっとバレエ経験者なら「あるある!」と共感していただけるでしょう。
集まった意見を3パターンに分類して紹介します。
■ パターン(1)何かになりきる系
1つ目のパターンは「何か別のものになりきるイメージを持って!」という表現。集まった意見を一部紹介します。
▼ パターン(1)何かになりきる系
・私の娘の先生は、「ソフトクリームのように」と「たんぽぽのわたげになって」が口癖だそうです。
・プリエのときに、蜂みたいにおしりに針があってそれを床に刺すようにまっすぐ下がるように言われました。
・お尻をハートの形にして!と小さい頃よく言われました。
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筆者が20年以上習っている先生も、この「何かになりきる系」の表現を用いることがあります。
たとえば、ピルエットなどの回転技の最後の瞬間について「ソフトクリームの最後のツンってなっているところみたいに、スッと抜いて」と言われたことがあります。これは、「回転の最後に一瞬上に伸びてから降りて」という意味です。イメージできますか?
ほかにも、脚のターンアウト(アン・ドゥオール)の説明をする際に「焼き鳥を焼くときに、お肉を持って回すのではなく串を持って回すイメージ」と言われることも。これは、「脚の外側の筋肉を使ってターンアウトするのではなく、骨を回すイメージが大切」という意味です。(実際には筋肉も当然使いますが)
紹介した例にもあるソフトクリームやたんぽぽのわたげ、蜂、ハートの形など、小さな子どもでも知っているもののイメージを身体に持たせることで、動かし方や表現のイメージがつかみやすくなりますよね。
■ パターン(2)身体に何かをのせる・挟む系
続いては、身体に何かをのせる・挟む系の注意です。こちらは「定番ネタ」が見つかりました……!
▼ パターン(2)身体に何かをのせる・挟む系
・ドゥバン(前)のアチチュードから膝を伸ばすときに「足の甲の上の消しゴム、前の人にはいどーぞ!」ってよく言われていました。
・アンボアテやドゥバン・アチチュードのときに「かかとの内側と内くるぶしの間にコップを置いて、こぼさないように」と言われたことがあります。
・「脇の下の卵、潰さないで!」と言われていました。
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1つ目と2つ目の注意は、前方向に脚を上げた際にターンアウトをキープするための注意だと思われます。たまに、SNSでもドゥバンに上げた脚の内くるぶしあたりにタオルなどを置いて指導している先生の姿を見かけます。
そして、「脇の下の卵、潰さないで!」という注意は、「腕をアン・バーポジションにするときに、脇に空間を作って」という意味だそう。実はこの「脇の下に卵」という注意、バレエの先生では定番ネタのようです。今回集まった20ほどの意見のうち、4つは「脇の下に卵」でした。ニュアンスは先生によって若干異なるようで「脇で親鳥が卵を温めるように」「脇で卵を抱えるように」など、日常生活では絶対に聞くことのない独特な表現が集まりました。
たしかに、脇の下の空間がなくなり腕がボディにくっついてしまうと美しいアン・バーポジションとはいえません。
「卵1個分」の空間は誰もがイメージしやすく、かつ「卵=ギュッと力を入れると潰れてしまう」というイメージがあるため、脇の下の空間を表すものとして最適なのでしょう。多くの先生が使う定番ネタになるのも納得です。
筆者も「脇の下に卵」の注意を受けたことがあります。バレエ経験者なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
■ パターン(3)ツッコミ系
最後は、ツッコミ系の注意を紹介します。思わず笑ってしまうような鋭い注意が集まりましたよ。
▼ パターン(3)ツッコミ系
・下向きがちな時とか「500円玉落っこちてないよ!!!」ってよく言われます。
・目線が下を向きがちな生徒さんに「舞台上にバナナの皮なんて落ちてないし、落とし穴も掘ってないよ!」
・昔習った先生が発表会の練習をしているベビークラスの子達に向かって、「舞台では後で人が倒れていても振り返らない」って言った時には、「いや、それ伝わんないから〜」って思いました(笑)
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どうやら目線に関する注意は、ツッコミ系になりがちなよう。
実際、筆者のバレエ教室でも「バナナの皮、落ちてないよ!(=下向かないで)」の注意をよく聞きます。ほかには、腕をアン・オーにしたときに手のひらが前を向いている生徒さんに「盆踊りになってるよ!」などという注意が入ることも。
ツッコむように注意されると、深刻になりすぎない点が良いですよね。個人的には、ツッコミ系の注意大好きです。
■ 理解できなかった指導・表現はかならず確認を
もし、実際のレッスンで「今の注意ってどういう意味?」と悩んだら、迷わず先生に尋ねてみましょう。レッスン中にタイミングがない場合は、レッスン後でも良いでしょう。
というのも、本稿で紹介したような“独特な表現”は、どうしても比喩表現や感覚的な注意になりがちです。先生が意図することと、生徒が認識することにずれが生じる可能性があります。
間違った認識でレッスンを続けていると、上達の妨げや怪我に繋がることも。楽しく安全にバレエを楽しむためにも、理解できなかった指導・表現はかならず確認してみてくださいね。
(上村舞)