近年、大人の趣味として広がりを見せている「大人バレエ」。しかし、ポジションや身体の動かし方が明確に決まっているクラシックバレエは、簡単にマスターできるものではありません。
きっと、大人バレエを習っている人の中には「なかなか上達できない」「いつになったら上手に踊れるの?」と不安を感じている方も多いはず。
そこで、大人バレエを楽しむ、通称「大人リーナ」たちに、上達を実感した時期や上達に大切なことを尋ねてみました。なんと、今回は約300人もの大人リーナが回答を寄せてくれました。
■ 大人バレエで上達を感じられるのは何年目?
InstagramおよびX(旧Twitter)で、「上達を実感した時期」について尋ねてみました。対象は、成人してからバレエを始めた方・再開した方のみ。ちなみに、バレエ歴の内訳は以下のとおりです。
▼ アンケート回答者のバレエ歴
・1年未満……6.3%
・1〜3年……14.8%
・4〜9年……19.8%
・10年以上……59.1%
総票数:303
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まず、10年以上習っている方が半数以上ということに驚きました……。大人になって10年以上続く趣味があるって本当にすごいことです。
さて、話を戻して「上達を感じた時期」に関するアンケート結果を紹介します。
【アンケート】上達を感じたのは、バレエ歴何年目くらいからですか?
・まだ感じていない……30.7%
・1〜3年目くらい……19.7%
・4〜9年目くらい……29.4%
・10年以上経ってから……20.2%
総票数:228
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最も多かったのは「まだ感じていない」で約3割……皆さん自分に厳しい!個人的印象ですが、バレエを習っている人はストイックな人が多いため、「まだまだ自分なんて……」と思っているのではないかと感じました。
続いて多かったのが、「4〜9年目くらい」。レッスンのペースにも寄りますが、4年以上経つと、バレエ用語をしっかりと覚えられたり、先生の注意への理解度が高まったりしてくる方が多いのでしょう。
「10年以上経ってから」(20.2%)と「1〜3年目くらい」(19.7%)は、ほぼ同率でした。
今回のアンケートでは 「なにをもって上達とするか」という定義をしていなかったため、各回答にそれほど差が出なかったのだと思います。ですが、10年以上経ってからやっと上達を感じた人も一定数いることは、現在上達を感じられず不安に思っている方にとって希望になるのではないでしょうか。
■ 大人リーナたちが思う「上達に大切なこと」
次に、大人リーナたちが思う「上達に大切なこと」を自由記述で教えてもらいました。
ちなみに、このような自由記述式のアンケートにはあまり回答が集まらないのですが、今回は40を超える回答が寄せられました。それぞれ、自身で考えながら真剣に取り組んでいることがヒシヒシと伝わってきました。
大まかに分類しつつ、回答の一部を紹介していきます。
【基礎を大切にする】
・何を上達とするかに寄りますが、私は基礎をちゃんと身につける、大事なところをとばさない、アンディオールしてちゃんと立つことができるようにする。できればメソッドにしたがって学ぶ。これが上達の秘訣だと思います。
・バーレッスンをとにかく真剣にやる
・基礎をしっかり学んで積み重ねること
【精神面】
・自分の身体や癖と向き合うこと。足りないものを補おうとすること。できてるつもりにならないこと。
・ネガティブに考えすぎず、お稽古を楽しむ
・心の底で出来ないと思わないこと
・子供からやってないから…と気後れしないようにレッスンする。素直に学べばちゃんと上手になります!!
・素直さ(指摘されたことを認める)。考える力(指摘されたことをどう改善するか”考える”)。継続する力(バレエはすぐに上達しない)。達成感を持つ(自分なりに小さな目標設定し、それを達成する楽しみ、喜びを持つ…大人だからこそできること)
・先生の指摘を素直に、謙虚に受け入れ、驕らない。そのために自分の身体を知り、無理はしない。上手な人から刺激をもらう。発表会やワークショップに参加して、普段見られない人や環境に自分を放り込んでみる。でも、一番はバレエがすき、上手になりたいという、向上心をへこませずに持続させる。
・素直さ、謙虚さ、探究心、観察眼、恥をかくことを怖がらない強さ、楽しむ気持ち
・「バレエが大好きで上手になりたい気持ち」と「自分以外に向けられた注意も貪欲に取り入れる」
・楽しむこと
【先生との関係・心構え】
・謙虚さと素直さと向上心と思考力。自分に合う先生、きちんと正しく基礎を教えてくださる先生を探すこと。先生のアドバイスには基本的には耳を傾けるべきですが、おかしなことを言う先生もたまにいるので、おかしなアドバイスを真に受けずに流す力も必要。
・良い先生と仲の良いレッスンメイトさん。バレエは自分だけが頑張っても上達しないものだと悟りました。
・全てを吸収しようとする貪欲さと、指導がすんなり入ってくるような尊敬でき、相性が合う指導者を見つけること。最初に出会えた私はラッキーでした。
・先生が下さる注意を素直に聞き、すぐに出来そうなものからどんどん実践していく事と、継続する事(続けやすい環境を用意したり、工夫したりなど)だと思います。
・尊敬出来る先生や仲間との出会い。素直、謙虚、続ける気持ち。
・バレエが大好きなことが前提として、頭(脳)の柔軟さ、筋力トレーニング、自分の関節可動域の認識、感覚ではなく理論や機能解剖学的なアプローチがしっかり頭に入っている先生との出会い
【目標を持つ】
・舞台でもスタジオパフォーマンスでも人前で披露する場を経験する事でしょうか。期限があるので集中して練習するし、見せるという事から学ぶ事がたくさんある気がします。
・定期的に舞台に立つこと
【身体のメンテナンスやトレーニング】
・大人は体が出来上がっているので自分の体の状態、普段の生活の中で体の悪い使い方を知って、バレエが出来る体の状態に整える事が大事だと思います
・日々のストレッチ!体の柔軟性を上げないと出来ないポーズが多すぎるので、上達したいなら正しいストレッチを学んでコツコツ続ける必要があると感じています
・バレエ向きの体に整え直すことも大人には必要だと思います。整体やトレーニングなど、ボディワークは少しずつでも姿勢や体を変えてくれます。
・体幹やバレエに必要な細かい筋肉を鍛えること
【その他】
・尊敬できる先生と継続に加えて、バーレッスン時のお腹と上半身の意識、センターレッスン時の背中で踊る感覚と考えます
正直2番目の質問「まだ感じていない」と迷いましたが始めた当初よりは進化しているはずと信じて→準備をきちんとする。先生の指導を頭と身体両方で理解する。目線。聴く力。継続。冷静になる。休養。他人と比べない。拗ねない。怖い顔でお稽古しない。周りを感じる。楽しむ。感謝の心など。
・うまい人と一緒にレッスンすること。うまい人の踊り方をよく見て上手に真似していくこと。
・忘れないようにレッスンでのことをノートに書き留めておく
・週1回以上通うこと
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多くの回答で見られたのが「素直さや謙虚さが大切」という意見。たしかに、大人になると、他人から注意(指導)を受ける場面が減るため、バレエでも注意(指導)されると落ち込んだり、ムッとしたりすることがあるかもしれません。
しかし、その注意をしっかりと受け入れることが上達への近道。「自分ではできているつもり(やっているつもり)」でも、指導者から見たらできていないことって案外多いのです。
発表会に出演したことがある方なら、本番のビデオや写真を見て「つま先を伸ばしているつもりだったのに伸びていない……」など、できているつもりだったのに……という思いをしたことがあるのではないでしょうか。
バレエは本来、「お客様に見せる」もの。第三者から見た姿や注意を素直に受け入れることは上達に欠かせません。
■ 「できていないことに気付くこと」も上達の第一歩
先ほども書きましたが、バレエを習っている人はストイックな人が多い傾向にあります。熱心であればあるほど、「まだまだできていない……」と落ち込むことも多いでしょう。
しかし、実は「できていないことに気付くこと」も上達に欠かせないステップなのです。
バレエを習い始めた当初は、先生や周りの人の動きを見よう見まねでおこない、「何が正解で、何が間違いなのか」も分からなかったはず。
今、自分の「できていない部分」に目が行くのは「バレエではこうあるべき」ということが分かったということなのです。具体的にいうと、最初は「つま先が伸びているかどうかの感覚もなかった」けれど、今は「つま先が伸びていないことが分かる」、最初は「アンディオールが何か分かっていなかった」けれど、今は「アンディオールが足りないことが分かる」といった感じです。
できない部分に目が行くとついつい落ち込んでしまいますが、このように考えると、多くの方が上達を実感できるのではないでしょうか。
「できていない部分に気付く」ことができたら、次は「どうやったらできるようになるのか」を学び、レッスンで実践していくステップです。(それが難しいのですが)
プロのダンサーでも、日々「どうやったらできるようになるのか」「より美しく見せられるか」を研究しています。バレエに終わりやゴールはありません。アンケートでも寄せられたように、継続していれば必ず少しずつでも上達していきます。
上達を実感できず、落ち込んでしまうときは「できない部分や自分の課題に気づけてよかった!」と気持ちを切り替えてみてください。
(上村舞)