おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

Xの「コミュニティノート」機能がステマに使われている疑惑→調べてみたら本当にアヤシかった件

 次々と新しいサービスが誕生していき、そして消えていくという新陳代謝の激しい「IT業界」。

 あれ?あのサービスってどうなったんだっけ!?というものも数多くあり、逆に記憶からも消えているサービス、サイトなどもあります。なんとも切ない業界ではありますが、そんな中いつの時代でも登場するのが「ステマ(ステルスマーケティング)」。

  •  「ステマ」とは、一見一般的な投稿のように見せかけ、実は広告だったり、サイトへの誘導を狙うものですが、近ごろX(旧:Twitter)の「コミュニティノート」を利用したものがあるのでは?と注目されています。

    ■ X(旧:Twitter)の「コミュニティノート」機能とは

     話題となっている、Xの「コミュニティノート」機能を使った「ステマ」。現段階では疑惑でしかありませんが、調べてみると「成る程疑わしい」という内容でした。

     その前に、まずXの「コミュニティノート」機能について説明を。

     「コミュニティノート」は、Xに投稿されたポストに誤りや誤解を招く恐れがある内容がある場合、「協力者」と呼ばれる一般ユーザーが背景情報を追記して補足する仕組みのことです。

    Xのコミニュティーノート機能とは

     「コミュニティノート」は協力者(有志)たちが更新しており、書かれている内容、および参考先として紹介されるソース(リンク先)は、どれも「信頼がおけ」、「公平性あるもの」、というのが基本。

     仮に、「コミュニティノート」に誤りがある場合には、即他のコミュニティノート協力者がさらなる追記を加えることも可能。

     通常、情報の正確性に関しては、利用者が独自で判断しなければなりませんが、「コミュニティノート」を通じて、他人である「協力者」の意見を参考にすることで、「ファクトチェック」を間接的に行うことができます。

    ■ はやくも「コミュニティノート」がステマツールに!?

     多くの人が信頼をよせ、注目度も高い「コミュニティノート」には、当然ながら閲覧数も集まります。しかし、ここに目をつけた人たちもいるようです。

     一見、善意で「コミュニティノート」を投稿しているように見せかけ、実は参考URLとして貼るリンク先に、誘導するのが目的なのでは?と疑われるものが存在しています。つまり「ステマ」に使われている疑惑があるのです。

     疑われているものの一つが、つい最近話題になったサイゼリヤの価格についてのポストにつけられた「コミュニティノート」。

     ポストの投稿主は、Xユーザーの「とあるコンサルタント(@consultnt_a)」さん。ふとした疑問を投稿したものでした。内容は、サイゼリヤの「生ハム」「モッツアレラ」について触れたもの。

     値段は以前とさほど変わらないけれども、個数や枚数が減っているのでは?という疑問でした。この投稿自体は、少し勘違いが含まれます。名前が挙がった生ハムは、以前と枚数は変わりません。また、「モッツアレラ」は、実は最近あるのは新商品。以前は「バファローモッツアレラ」、新メニュー「モッツアレラトマト」は名前の通り、モッツアレラに加えてトマトが入っています。

     こうした誤解について、コミュニティノートでは次のように説明。誤解を解く内容を投稿していました。

    疑われているコミュニティノート

    「2022年9月14日のメニュー改定まで「プロシュート(パルマ産熟成生ハム)」が2枚400円で販売。2022年12月14日のメニュー改定で販売停止。2023年10月11日のメニュー改定で「生ハム(ハモン・セラーノ)」が2枚320円で復活しました。枚数は変更せず値下げされています」

    「ハムの枚数が減っている点は事実誤認で、それ以外実質値上げかの判断は難しいでしょう」

    などと指摘。

     そしてそれぞれの解説に加えて、参考先のURLを記していますが、4本あるうちのリンク先全てが「同じサイト」。リンク先は、サイゼリヤの公式サイトや、プレスリリース、または価格の違いについて詳しく解説したニュース記事ではありません。

    ■ 参考先は運営者匿名のまとめサイト?

     「コミュニティノート」にリンクされたサイトは、一見するとニュースサイトや情報サイト。しかし、実態は飲食店のメニューだけをまとめた、いわゆる「まとめサイト」のようなサイトでした。

     運営者情報も調べてみましたが、運営者名はハンドルネームらしきものが記されているだけであり、その他情報は不明。問い合わせフォームや、公式SNSすらありません。つまり運営者が完全正体不明のサイトでした。

     掲載されている内容も、独自文章は「サイゼリヤは○月○日にメニューをリニューアル。○○が登場しました~」といったものが2~3行書かれているだけであり、あとはサイゼリヤから転載された画像がメインで、出典としてサイゼリヤの公式ページがリンクされていました。

     つまり画像は公式からの転載という意味であり、独自文章もあまりに少ないことから、わざわざこのサイトをソースとする理由が見当たりません。

     せめて4本リンクされた中の一つならば、まだ補足資料として成り立つかもしれません。しかし、4本中4本全てがこのサイトというのは、ソースとしては明らかに力不足であり、「ステマ目的」と疑われても仕方ありません。

     この場合、もし参考先とするなら、サイゼリヤ公式にあるリリース、リリースに準じて紹介された大手ニュースサイトの記事などのほうが、まだ適切であり信用度も高いでしょう。サイトの身元もハッキリしていますし。

     厳密に言えば「ステマ」は、業者から「対価」をもらって成立します。しかし、このような騙し討ちのような誘導も広義に「ステマ」と捉える風潮があり、たびたび問題になります。

    ■ 今後「コミュニティノート」はどうなるのか

     さて、このような手口は、実は今に始まったことではなく、昔から存在する実に「アナログ」な集客方法です。

     たとえば、大手巨大掲示板の人気スレッドにURLを貼ったり、SNSの人気コミニュティにURLを貼るという手法。もはやPVを獲得するためのスキームとしては、「飛び込み営業」並の常套手段。

     それが新たにこの「コミュニティノート」にも使われる流れは、よく考えれば誰でも考えつくことです。

     「コミュニティノート」は有志によって作られるものであり、有害か無害かは、客観的にわかりにくい面があります。だからこそ「信頼」が重視され、協力者の人たちも苦心している点。ステマに利用されたからといって、全てを封じてしまえば、サービスそのものの、利用価値が失われてしまいます。

     この問題について、Xはどのような対策を取るのか、協力者の人たちもどう対応していくのか。信頼が求められる場所だけに、今後の対策も注目されます。

    ■ 疑惑の「コミュニティノート」では説明に誤りも

     最後に余談ですが、上記で例として紹介したコミュニティノートでは、生ハムの説明で「枚数は変更せず値下げされています」と記していますが、「値下げされています」の部分は誤りです。

     コミュニティノートの記載にもある通り、サイゼリヤで2022年まで販売されていた生ハム「プロシュート」と、2023年から販売された生ハム「ハモン・セラーノ」は種類が異なります。枚数は同じではあるものの、ハモン・セラーノは「新商品」であり、前とは別の商品。これを「値下げされています」とするのは誤りです。

    <記事化協力>
    とあるコンサルタントさん(@consultnt_a

    <参考>
    コミュニティノート概要(X)

    (たまちゃん)

    あわせて読みたい関連記事
  • まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」関連アカウント、Xで一斉凍結
    インターネット, 社会・物議

    まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」関連アカウント、Xで一斉凍結

  • X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード
    インターネット, サービス・テクノロジー

    X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード

  • 「高橋文哉のオールナイトニッポンX」番組Xが乗っ取り被害か 局が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    「高橋文哉のオールナイトニッポンX」番組Xが乗っ取り被害か 局が注意喚起

  • X日本公式アカウント(@XcorpJP)
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Xが検索結果を見直し、本文重視へ転換 ユーザー名で検索しても本文に含まれなければ…

  • イーロン・マスク氏6月27日の投稿
    商品・物販, 経済

    Xの広告改革が止まらない マスク氏が語る「ハッシュタグ排除」と「縦サイズ課金」

  • 「Xブロックチェック」に要注意 トレンド入りした危険なサービスとは?
    インターネット, 社会・物議

    「Xブロックチェック」に要注意 トレンド入りした危険なサービスとは?

  • XのAI「Grok」ムダ呼び出し問題 とあるユーザーの回避テクが秀逸だった
    インターネット, おもしろ

    XのAI「Grok」ムダ呼び出し問題 とあるユーザーの回避テクが秀逸だった

  • 「あの頃のTwitter」の空気感を再現 オマージュサイト「ヒウィッヒヒー」爆誕
    インターネット, サービス・テクノロジー

    「あの頃のTwitter」の空気感を再現 オマージュサイト「ヒウィッヒヒー」爆誕…

  • これは天才……!Xの文字数制限を使って描かれた「ジバニャン」が完成度高すぎる
    インターネット, おもしろ

    これは天才……!Xの文字数制限を使って描かれた「ジバニャン」が再現度高すぎ

  • 「現存する日本語最古」とされるツイート
    インターネット, おもしろ

    「現存する日本語最古のツイート」投稿者!?最古参級アカウントの持ち主に話を聞いて…

  • たまちゃんWriter

    記事一覧

    元秒刊SUNDAYライター。炎上ネタからグルメネタまで得意とするも、現編集部(おたくま)では炎上ネタは封印。おだやかに書いております。静岡県浜松市在住です。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠
    インターネット, サービス・テクノロジー

    警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

  • マクドナルド非公認レシピ「改造てりたま」
    グルメ, 作ってみた

    マクドナルド非公認レシピ!夏のてりたま欲を満たす「改造てりたま」を作ってみた

  • LINEの画面って拡大できないの?タイトル画像
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ピンチ操作が効かないLINE画面も拡大!iPhoneの隠れ便利機能「ズーム」活用…

  • AIで生成されたフェイク動画
    インターネット, 社会・物議

    一瞬本物かと……有名人の顔と声までAIで再現!進化する投資詐欺の実態とは

  • “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート
    インターネット, 社会・物議

    “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート

  • フッション系と思わせるサポート詐欺サイト
    インターネット, 社会・物議

    ファッション広告のフリをした罠 ますます巧妙化する“サポート詐欺”

  • トピックス

    1. フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      SNS上には今日も、「○○が当たる!」といったプレゼント告知があふれています。いまや日常の景色と言っ…
    2. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    2. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    3. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    4. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    5. 今年もやってきた“本番環境の事故録” Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      本番環境などでの失敗談が集結 Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      稼働中のサーバーでの作業ミスによるトラブルの顛末をつづる「本番環境などでやらかしちゃった人 Advent Calendar 2025」が12…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト