毎度知っていた所でどうということのない話題をお送りしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。今年は巳年ということで、新年早々にヘビ飼育についてのお話をお届けしましたが、今回はちょっと特殊なヘビについてお話します。
なお、ヘビの食事画像などもありますので、先へ進む際にはご注意ください。
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前回お話したヘビさんは、基本的に冷凍マウスで飼育できるヘビさんでした。今回はちょっと特殊なエサを用意しなければならいヘビさんを少しご紹介します。マウスを食べてくれないヘビは、爬虫類ファンの間では「変態ヘビ」とか呼ばれています。
○ヤモリ食
マウスを食べないヘビの中で最も目にする機会が多く、また飼育難易度が比較的低いものがヤモリ食のヘビです。オオアオムチヘビ、ヤブコノミなど、世界各地にいろいろな種類が生息します。この仲間の助かるところはヤモリは活きているものでなくてもいいこと。つまり冷凍マウスと同じく冷凍ヤモリで飼育できます。冷凍ヤモリは爬虫類専門店で置いてある店もあります。活きているヤモリを使う場合には、ヤモリにもエサをやらねばらないので、コオロギ→ヤモリ→ヘビ、という、食物連鎖を自宅で再現しなければなりません。これが結構大変。ただ無菌状態で管理されているマウスと異なりヤモリは野生のものをそのまま冷凍している場合が多く、冷凍庫を食品と一緒にするのはややためらわれます。
○ミミズ食
リュウキュウアオヘビ、ホンコンヒメヘビ等、ミミズ専門のヘビがいます。ここで問題なのはミミズの大きさ。いかに「口より大きな獲物を食べられる」ヘビとはいえ、やはり限界が。小さなホンコンヒメヘビでは食べられる大きさも限られてきます。一方でリュウキュウアオヘビは1m近くになります。リュウキュウアオヘビの生息地には巨大なミミズがいるため、大きくてもミミズ食でやっていけるのです。ミミズは維持が難しく、また入手しやすい釣り餌用のミミズをエサにすることには賛否両論あり、なかなか難しいところです。(ホンコンヒメヘビは、ワラジムシなども食べるという説もあります)
○カタツムリ食
セダカヘビの仲間に、カタツムリ専門のものがいます。日本にもイワサキセダカヘビというヘビがいますが、非常に珍しいというか、見ることが出来ないヘビで、レッドリストでは「情報不足」となっていた時期もあるほどです。
右巻きのカタツムリを食べることに特化した顎の構造など、非常に興味深いヘビなのですが、毎日5~6個のカタツムリを食べるといわれる、ヘビとは思えない燃費の悪さ。大量のカタツムリを確保できないと飼育は難しいでしょう。
○昆虫食
ヘビの中では昆虫専門はちょっと珍しいです。ラフアオヘビ、グランドスネークなどが知られています。しかし昆虫よりもクモを好む種もあるようで、飼育下ではなかなか長生きさせることが難しいようです。また水をどうやって与えるのかもポイントになってくるようです。
○卵食
鳥の卵専門のヘビです。その名もタマゴヘビ。これはちょっと詳しく紹介できます。
エサが卵でいいというのは魅力的です。いままで書いてきたエサは形は変われどすべて動物。しかしタマゴヘビは卵しかたべない専門家です。
口の割に大きなものが飲めるのはお約束ですが、そうは言ってもやはり限界が。小さいヘビだとジュウシマツの卵じゃないと飲めないとかいう可能性があります。まずはウズラがいけるサイズであることを確認するのが重要でしょう。
ということでタマゴヘビのご紹介です。このオリーブ色のヘビがタマゴヘビ。うーん、地味ですね。
では、早速うずらの卵を与えてみます。
タマゴヘビはヘビ特有の舌を出してチロチロという動作をあまりしません。
タマゴをあたえると、なんとなく「くんくん」という感じで何かを確かめ、口を大きく開けて飲み込みます。
飲み込んだら、首?のすこし先のあたりまで送り込みます。ここで卵をゆっくりとつぶし、いただくのです。
中身を食べたら殻が残ります。殻はペタンコになって吐き出されます。しかし吐き出すタイミングはまちまちなので今回は撮れませんでした。
セダカヘビとは反対に、半年くらいの絶食が可能です。というのも、野生では鳥の繁殖は年2回程度です。なので燃費は非常に良く、二ヶ月くらい水だけでも問題ありません。しかし複数種いるタマゴヘビですがたいていがこのような地味なヘビですので、地味でも問題ない!という方にしかおすすめできません。とりあえず飼育は爬虫類の中でももっともズボラに飼育できるものでしょう。
というわけで変わった食性のヘビをご紹介しましたが、まずはマウスを食べるヘビが飼えるようになってからこっち方面へおいでになることをおすすめします。最初に飼育するにはいろいろとハードルが高い部分があります。
(文・写真:エドガー)