毎度読者を困らせるような話題をお送りしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。今年は巳年。以前にも一度ヘビの飼育について書いてみましたが、巳年にあたり、今再びヘビの飼育についておとどけします。ここでは、「初めてヘビを飼う」という前提をもってお話します。
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ヘビというのは、爬虫類の中では飼育のしやすい動物です。活餌が必要で湿度や水に気を使うカエルやカメレオン等のような設備投資は少なく、カメのように底面積を必要とはしません。唯一、エサが冷凍マウスなので、エサのインパクトさえどうにかすれば、と思われます。
初めてヘビの飼育をする場合、何がいいか?と聞かれたら、ワタシは以下のいずれかをおすすめします。どちらもほとんどが繁殖個体であり、お店でエサをしっかり食べていれば、安心して飼育できます。いずれも北米原産です。
☆コーンスネーク
コーンスネークは品種が多く、色と模様が豊富です。原種に近い赤みの強いものからオレンジ系、ラベンダー系、グレー系、真っ白、と、値段の差はありますが選ぶ楽しみがあります。色だけでなく、性格にもいろいろありますので、好みのものが選べます。線が細く弱そうなイメージがありますが、それはベビーサイズの間だけで、大きくなれば立派なヘビになります。
☆カリフォルニアキングスネーク
カリフォルニアキングスネークの取り柄はよく食べること。色は白と黒のバンド模様もしくはストライプ模様が基本で、アルピノ化したラベンダーや、黄色味のあるもの、極限まで白さを追求したものなどがいます。ただし「キングスネーク」と呼ばれるヘビには重要な注意点があります。それは「他のヘビも食べてしまう」ことです。キングスネークの名前の由来は、毒蛇であるガラガラヘビまで食べてしまうこと。このため、必ず1匹ずつ別のケージを用意する必要があります。また「よく食べる」のはいいのですが、空腹時にハンドリングしていると、指をエサと勘違いして噛むことがあります。攻撃で噛んでいるのではないので、振り回したりなど興奮させないようにすれば離します。
特にコーンスネークは品種が豊富で選ぶ楽しみもありますが、残念ながら無い色もあります。特に「緑色」はありません。緑色のヘビは何種かいるのですが、多くは木の茂みやジャングルの樹冠性で、若干の紫外線と立体的なケージを必要とします。またトカゲ食・ヤモリ食である場合も多く、最初に飼うヘビとしては向いているとは言い難いです。コーンかキングでヘビの扱いに慣れてからの第二歩、と考えていただくことをおすすめします。
☆基本的飼育法
どちらも、プラケースと水入れがあれば飼育できます。ヘビの成長にあわせてプラケースも水入れもを大きくしていけばよいでしょう。ケースの基本はとにかく「逃げられないこと」。フタが緩くなっているケースは使わないほうがいいでしょう。また観音開きのタイプも横から逃げられるためおすすめしません。
水入れはタッパー等で大丈夫です。こぼされないようにするには、タッパーの蓋に大きめの丸い穴を開けておきます。水入れは全身が入れることが大事です。爬虫類専門店には塗装されたきれいな水入れもありますが、全身入れるかどうかよく考えて選びましょう。
エサは体の大きさに合わせた冷凍マウスを解凍して与えます。冷凍マウスはかなり厳重に衛生管理されて飼育されたものですので、普通に冷凍庫に入れても大丈夫ですが、どうしても気になる場合は専用の冷凍庫を用意しましょう。この冷凍庫の場所が一番必要な場所かもしれません。冷凍庫は家電リサイクル法の対象なので、しっかりしたメーカー品を選ぶことをおすすめします。
マウスの解凍は、朝冷凍庫から出して、夜返って来たら給餌。個体によっては暗くないと食べないとか、ピンセットから直接は食べないとか、いろいろあります。個性と考えてゆるゆるやっていきましょう。
エサは幼体のうちは週2回くらい、大人になったら週1回くらいのペースで与えます。ただし、個体によって食べるペースが微妙に異なるので、あまり一律なことは言えません。エサをやった日をメモしておくと、ペースが掴みやすいです。
☆保温
パネルヒーターという、平べったいヒーターが売られていますので、これをケージの裏側に貼り付けて保温します。温度が上がりすぎる場合は、間に何か挟みます。
夏場は逆に冷やす必要があります。日本の真夏の密閉した屋内では確実にオーバーヒートして死んでしまいます。外も直射日光が当たるようではやや危険です。エアコンで冷やしましょう。27~28度くらいになっていれば、暑ければ水に入って調整するでしょう。
保温に関しては、購入時にお店でよく相談してください。お店での保温方法は参考になります。
☆ハンドリング
ヘビを手に乗せて遊ぶことです。空腹のキングスネークですとエサと間違えて指を噛むことがあるので気をつけて下さい。コーン、カリキンであれば、うっかり頭を触ったり、目の前で素早く手をうごかしたりと、ヘビに「危険だ」と思わせるようなことをしなければ、ほぼ噛まれることはありません。
ハンドリングは言葉では表現しずらいコツがあり、「ヘビの行きたい所へ行かせるけど逃がさない」とでも言えばいいでしょうか。
売っているヘビの多くはベビーから1歳くらいまでのもの。ハンドリングして慣らしていけば、大きくなったときにもよく慣れたヘビになります。ただ、ヘビは慣れることはあっても、懐くわけではないので、そこは勘違いしないように。
コーンとカリキンでは感触がかなり異なります。この違いも選択肢の一つに入れていいかもしれません。
☆日本のヘビは?
日本にもヘビはいます。シマヘビ、アオダイショウ、ジムグリ、ヤマカガシなどがよく見かけるヘビでしょう。
野生個体は、子どものうちはともかく、大人になったものは結構攻撃的です。それをわかった上であれば飼育できないことはありませんが、ヤマカガシは口の奥のほうとはいえ毒がありますのでおすすめしません。またジムグリは見た目綺麗なヘビなのですが、とにかく餌付かないことで有名です。
シマヘビとアオダイショウは繁殖個体がたまに出回りますが、コーンやキングほど飼育しやすくは無いようです。
マムシ、ハブ、ヒャン、ウミヘビなどの毒蛇は、たとえ国産でも飼育しないでください。毒蛇の飼育には法律に基づいた施設と管理、かつ許可が必要です。
☆いわゆる大蛇「ニシキヘビ」「ボア」
時折ニュースになる「飼育していたニシキヘビが逃げた」。この場合のニシキヘビは、ほとんどの場合、ボールパイソンというヘビです。世界各地で飼育が盛んで、コーンスネークに負けないくらいの品種が作られています。
「ニシキヘビ」と言われて抱くイメージの数メートルの大蛇、という種類ではなく、1.5mになれば大きいと言える、という程度で、小型です。ただし体の太さは同じ長さのコーンスネークとは大きく異なり、がっしりと太く、なんとも言えない迫力があります。しかし大きく見えるヘビですが臆病な性格で、触られるとまるまってしまいます(ボール、という名はこの丸まった姿から来ています)。
また熱帯域のヘビのため、保温も高温な部分が必要です。大きめのケージで、温度の高いところと低い所を用意し、ヘビに選ばせる、といった飼育が理想的です。さらに繁殖期になると長期間エサを食べないなど、特有の性質も理解する必要があります。一方、大きい分だけ体力もあり、飼いやすい面も。
お店で実物を見て、コーンやキングよりもこちらのほうがいいなと思ったら、飼育方法をよく聞いた上で判断してください。
ボールパイソン以外にも、飼育用に入手できるニシキヘビはいろいろといますが、最初に飼うヘビとしてはおすすめしません。どうしてもそのヘビに惚れてしまった場合は、店とネットと本でよく調べ、自力で最後まで飼育可能かどうか考えてください。例えば小さなヘビのエサはマウスですみますが、ヘビが大きくなると、エサの行き着くところは冷凍ウサギです。さすがに引きます。また危険動物に指定されているボア・コストリクター(実際にはアナコンダやアミメニシキヘビのような危険性はほとんどないと言われていますが)等は、飼育ケージに制限があり、許可が必要です。
☆毒蛇
論外です。
ところでサムネイルのヘビは「ブラックラットスネーク・リューシスティック」。入手するには専門店でないと難しいですが、このヘビも飼育しやすい良いヘビです。なにより白い蛇は日本では神様。金運もつれてきてくれるとか。あやかりたいものです。
(文・写真:エドガー)