おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

天才でありながら職人だったゲーム作曲家、梅本竜(享年37才)追悼コラム

『菅野ひろゆきメモリアル』が、2013年1月18日にアーベルソフトウェアから発売予定だ。

そこで、今回は、菅野ひろゆき氏の相方だった、ゲームミュージックの作曲家の梅本竜氏の追悼コラムを書きたいと思う。


  • 【関連:アニメとファンタジー--カントリーロードとコンクリートロード】
     
    2011年8月16日に梅本竜氏は亡くなった……。享年37歳という若さだった。
    梅本竜氏といえば、いずれも10万本以上のセールスを記録し、今も根強いファンが多い、『DESIRE 背徳の螺旋』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のBGMを担当していたことで有名である。

    筆者は、梅本氏にインタビューで数回お会いしたことがある。
    それもあって、記憶がまだはっきりしているうちに、コラムという形として残しておきたいと考えた。

    梅本氏についての筆者の印象は、「天才でありながら職人肌」ということに尽きる。その論理的な思考と音楽理論の知識の豊富さには舌を巻いた。
    未だに曲の打ち込みをしているし、その使用ソフトの開発協力まで行っているという力の入れよう。
    氏いわく、「音楽というのは楽器が弾けたり楽譜が読めたりしてはじめてそれを楽しむ権利を得られるが、そういった方法以外でも曲が作れることを証明したかった」ということだった。
    また、喫茶店で氏と話したあと、外に出ると雨が降っていて、コートが雨に濡れるにも構わず傘の中に入れてくれた。親切な人だった。

    梅本氏は、高校卒業後、ファミリーソフトで、『超時空要塞マクロス リメンバーミー』『機動戦士ガンダム リターン・オブ・ジオン』『科学忍者隊ガッチャマン』などのPCゲームのBGMの一部を担当した後、シーズウェアへ移籍。そこで、『DESIRE 背徳の螺旋』『EVE burst error』のBGMを担当する。
    『DESIRE 背徳の螺旋』『EVE burst error』の独特な旋律と、丁寧な作りと、凝りに凝った演出もあって、梅本氏は、FM音源の魔術師という異名をとるようになる。
    その後、エルフへ移籍し、大作、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のBGMを担当した。

    筆者は、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のBGMについて梅本氏にインタビューしたのだが、「映画をたくさん観て演出法を研究した。例えば、『YU-NO』のOPの、画面がモノクロになって自分の名前が表示されるシーンや、最後のモザイクアウトの演出を、菅野氏と考えた」「会社の近くのそば屋で、菅野氏と鴨南蛮をすすりながらよく話し合った」といった貴重な当時の話を聞くことができた。菅野氏に敬意を払っており、一作曲家なのに話を聞いてくれて、できたシナリオを一番に見せてくれるなど、結果的にシナリオと音楽がシーンにシンクロできたと語った。また、エルフを退職した理由やその後の経緯などの裏話も聞けた。今だから話すことができるが、健康面や、友人間の金銭のトラブル、家庭の事情などが原因ということだった。
    エルフを退職した後、実家の店を手伝いながら、音楽理論を勉強し直したとも語った。それまでは、感覚的に曲を作っていたそうだ。

    それから、梅本氏の嗜好についてだが、ヘビースモーカーでありコーヒーと放浪が好きで、島田荘司や森博嗣などのミステリィ小説をよく読んでいた。
    また、個性的なフレームのメガネをかけており、スマートで、自分を持っており、カッコよかった。
    顔は、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』に出てくる龍蔵寺梅というキャラクターにそっくりである。多分、梅のモデルは梅本氏だと思われる。
    頭がとてもよい人だったが、普通に冗談も言うし、失敗もするし、実に人間的だった。
    向学心が強く、今後の目標として、大学受験を計画していた。経営にも興味があったようだ。

    とにかく、念願の、コンシューマでのシューティングゲームのBGMも担当できて、これからという矢先の訃報だった……。

    生きていたら、氏の素敵な曲をもっと聴けたのに、話ができたのにと……残念でならない。

    写真は、梅本氏からサインを書いてもらったCDだ。

    梅本氏からサインを書いてもらったCD

    ▼梅本竜氏インタビュー:

    (文・写真:川上竜之介)

    あわせて読みたい関連記事
  • ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応
    ゲーム, ニュース・話題

    ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

  • クッピーラムネがまさかのSwitch2用ワイヤレスコントローラーに レトロかわいさ全開&機能盛り盛りの本格派で登場
    ゲーム, ニュース・話題

    クッピーラムネがまさかのSwitch2用ワイヤレスコントローラーに レトロかわい…

  • まるで特殊詐欺現場? 「あつ森」複数台通信の光景を例えた妻の一言がもっともすぎた
    ゲーム, ニュース・話題

    まるで特殊詐欺現場? 「あつ森」複数台通信の光景を例えた妻の一言がもっともすぎた…

  • 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も
    ゲーム, ニュース・話題

    「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節…

  • 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム
    ゲーム, ニュース・話題

    作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチ…

  • 「RTA in Japan Winter 2025」ゲームスケジュールが公開 任天堂タイトルが復活
    ゲーム, ニュース・話題

    「RTA in Japan Winter 2025」ゲームスケジュールが公開 任…

  • センター長が又市に!「都市伝説解体センター」と角川文庫が期間限定コラボ
    ゲーム, ニュース・話題

    センター長が又市に!「都市伝説解体センター」と角川文庫が期間限定コラボ

  • ヤフオクとフリマ、新作ゲームは定価超え出品を禁止 11月13日から実施
    ゲーム, ニュース・話題

    ヤフオクとフリマ、新作ゲームは定価超え出品を禁止 11月13日から実施

  • 7年前に当選した「イナズマイレブン」がついに届く 度重なる延期が生んだ待望の瞬間
    ゲーム, ニュース・話題

    7年前に当選した「イナズマイレブン」がついに届く 度重なる延期が生んだ待望の瞬間…

  • カプコンが「二次創作ガイドライン」を公開 寛大なるルール制定の一方、戸惑いの声も
    ゲーム, ニュース・話題

    カプコンが「二次創作ガイドライン」を公開 寛大なるルール制定の一方、戸惑いの声も…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 民放連、アニメ作品の“そっくり映像”出回り懸念 生成AIに声明
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    民放連、アニメ作品の“そっくり映像”出回り懸念 生成AIに声明

  • 欧州連合の旗(写真ACより)
    インターネット, 社会・物議

    EU、ネット上での児童性被害対策を強化 日本企業にも影響広がる可能性

  • ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応
    ゲーム, ニュース・話題

    ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

  • ロッテ「雪見だいふく」が立体パズル化 メガハウスが11月下旬に新商品
    商品・物販, 経済

    ロッテ「雪見だいふく」が立体パズル化 メガハウスが11月下旬に新商品

  • 100tハンマー
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで…

  • 韓国発の人気激辛「ブルダック」がじゃがりこに 1年4か月かけた再現度に注目
    商品・物販, 経済

    韓国発の人気激辛「ブルダック」がじゃがりこに 1年4か月かけた再現度に注目

  • トピックス

    1. 善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      宮城県女川町が11月26日、公式Xで発信した「クマ出没情報」が、後に「生成AIによるフェイク画像」に…
    2. 派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      「とても茨城県」というつぶやきとともに、Xに投稿された一枚の写真。そこには、一般的な工事現場のイメー…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      バーチャルタレント事務所「ホロライブプロダクション」を展開するカバー株式会社は公式Xにて11月25日、同社のバーチャル空間プロジェクト「ホロ…
    2. エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      ロッテは自社商品の各ブランドサイトで、アレンジレシピを公開しています。その中に「パイの実」をエビチリソースと卵で炒め合わせた「チリ玉パイの実…
    3. 100tハンマー

      伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで開催

      「シティーハンター」連載開始40周年を記念した原画展「シティーハンター大原画展~FOREVER, CITY HUNTER!!~」が、11月2…
    4. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    5. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト