おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

喫煙者にお願い 歩きタバコだけはおやめください ~様々な立場から~

 道を歩いていると、どこからともなくタバコの煙。嫌煙者はそれだけでも嫌な思いをしますが、ぜん息など呼吸器疾患がある人にとっては時として重大な発作に繋がりかねないことも……。一人のぜん息患者からのお願いがツイッター上に広まっています。

  • 「歩きタバコ、もし、もし
    してる方がいらっしゃったら
    私みたいな人の為に
    どうかおやめ下さい。

    20m離れてても
    少しすれ違っただけでも
    例え息を頑張って止めても
    貴方の煙草の煙で
    喘息がでて呼吸困難となり
    あなたの知らないところで
    救急車で運ばれたり
    病院に駆け込む喘息患者もいます」

     こうツイートしたのは、重度のぜん息患者である、なみだまるさん。筆者こと私、看護師として呼吸器病棟で数年間仕事をしてきました。この経験もあり、なみだまるさんのツイートについ反応してしまいました。「ぜん息の患者さん、ホントみんなそれで辛い思いしてる!!」と。

     幸い、私はぜん息ではないもののかなりの嫌煙家。道端で歩きタバコしている人がもしそのままポイ捨てしようものなら、そのまま拾って鼻の穴に詰め込んでやりたい願望すら出てきてしまいますが……(白衣を着ていた当時、病院近隣でポイ捨てした高齢男性に「落とし物ですよ」と吸い殻をにっこりと渡したことはあります)。

     そこまで過激でなくとも、嫌煙家でポイ捨てを目撃した人は似たような思いを抱くことも少なくないことでしょう。リプライでも、同様にタバコの煙に反応して咳がよく出てしまう人、他の呼吸器系の病気で同じくタバコの煙に過敏に反応してしまい苦しい思いをしてしまう人、以前喫煙していたけどやめてからタバコのにおいがダメになった人など、様々な立場の人からのリプライが。

    ■ ぜん息は少しの発作が大発作になることも

     なみだまるさんは、3歳のころから小児ぜん息と診断され、以来ずっと、咳を落ち着かせる薬や、気管支がむくんでしまって発作が起こるのを防ぐ薬など、現在では4種類の薬を内服しつつ、発作が急に起きた時のための吸入薬を普段から持ち歩ています。

     ぜん息になると、平常の気道や気管支よりも気道粘膜が腫れやすくなる炎症を起こした状態となります。少しの刺激物にも大きく反応し、刺激物を吸い込む量が多ければ多いほど、気道粘膜の腫れも強くなり、時には大発作という状態に。この状態となると、完全に気道がふさがれて呼吸ができなくなってしまうがために、時には死を招くこともあります。

     そのため、ぜん息患者さんは常に吸入薬を持ち歩き、急な発作に備えています。なみだまるさんもその一人。冬場の気温差の多いこの時期では、風の強い時とも相まって1日に2~3回くらい、緊急的に吸入薬を使用することもあるそうです。

     この手の緊急的に使う吸入薬は1日あたり、4回まで使用可能となっているものがほとんどですが、使い過ぎることによって心臓に悪影響が出る副作用もあるため、頻繁には使えるものではありません。

     タバコの煙はじめ、排気ガスやどこかから飛んでくるか分からない大気汚染からぜん息から身を守るために、マスクで防御は必須となってしまいます。

    ■ ぜん息の咳は発作。止めるに止められないつらさ

     冬場のこの時期は特にぜん息が起きやすい時期。冷たい空気に呼吸器が晒されたり、タバコの煙や排気ガス、その他気管支を刺激する物質が肺へと通過するときに、その刺激によって気管支が腫れて、呼吸できる息の量が減ってしまいます。このため、少しでも刺激を与えられるものが不意に気道に入ってしまうと、その刺激物を排除しようと咳が出ます。

     この咳は自分でも止められないもので、電車の中で不意にタバコの臭いが強い人が近くにいたり、香水の匂いが強い人が来たりすると、発作的に激しい咳が出てしまいます。周囲からは咳をしているから移るのではないか、と不安な目線がつらいこともあり、有志によって「ぜん息マーク」も生み出されて身に付け始めている人も出つつあります。

    ■ ぜん息以外でも火のついたタバコの恐怖は意外と多くの人が感じている

     ぜん息に限らず、感覚過敏でにおい以外にも様々なものに敏感な人、他の呼吸器疾患で、電車に乗ったり人ごみの中へ出かけたくても出かけられない人がいること、難病で見た目は分からなくても常に不安を抱えて生きている人など、この世の中には「見た目は分からなくてもどこかに故障を抱えている」「自分でもコントロールしたくてもできないで困っている」人たちが、意外と大勢います。

     他にも、人の多い道を歩いていて私自身が怖いと思ったことがあります。それは「火のついたタバコを持った手をおろすと、子どもの顔の高さと同じくらいになる」時期。「もしもこのタバコに火がうちの子の顔に当たったら……」子育てをしている人はみな同じ思いをしたことが何度かあるのではないでしょうか?

     下肢や脊椎の損傷など、長時間の歩行ができない人や下半身のマヒがある人で車いす生活を余儀なくされている人も、今はバッテリー付きの車いすで外出ができるようになりましたが、すぐ上から歩きタバコの灰が落ちてくる恐怖や、同じように顔の高さに火のついたタバコが来ることに非常に恐怖を抱いている人もいます。

     ベビーカーの隣で歩きタバコをしている人に対しては「悪意があってやっているのでは」とすら思うことも。すぐに避ける行動が取れないだけに、その恐怖はかなりのものです。

     体も心もどこにも異常がない人にとっては気が付かないだけで、無関心なだけ。でも、その無関心を、少しだけでも他の人を観察する関心に変えてみては?そう思うのです。

    ■ 誰もが過ごしやすい環境は、一人ひとりの気遣いが必要

     ツイートのリプライには、「今はもうやってませんが、以前は大変申し訳ありませんでした」「喫煙所で吸っていても外にいる非喫煙者に迷惑をかけているんだなとリプ欄を拝見し痛感しました」と、喫煙者もツイートから気付きを得ている人も多い様子。この気付きが、もっと多くの人に広まって少しずつ喫煙に対する意識が変わっていけば、より多くの人が住みやすくなるでしょう。

     ちなみにですが、路上喫煙の被害以外にも、入院したり、夜間救急外来からぜん息発作を止めるための点滴や吸入をしに来たりする患者さんの中には家族に喫煙者がいることもチラホラ。小児ぜん息と家庭内の喫煙については、また次の機会に。

    <記事化協力>
    なみだまるさん(@zibunwosukiniA)

    (梓川みいな/正看護師)

    あわせて読みたい関連記事
  • 頑張る人の細胞を応援!ガンバレルーヤが強烈エピソード連発で会場を爆笑の渦に包む
    イベント・キャンペーン, 経済

    頑張る人の細胞を応援!ガンバレルーヤが強烈エピソード連発で会場を爆笑の渦に包む

  • セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘルスケアの調査で明らかに
    社会, 経済

    セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘ…

  • オレンジページ、サイト上の不適切広告で謝罪 広告審査のすり抜けが問題に
    インターネット, 社会・物議

    オレンジページ、サイト上の不適切広告で謝罪 広告審査のすり抜けが問題に

  • HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?
    社会, 経済

    HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?

  • 井上咲楽さん公式Xより
    エンタメ, 芸能人

    女優・井上咲楽、気づくと右目が緑色に!心配の声が上がるも「大丈夫なやつです」

  • Geroさん公式X(@Gero2525)より引用
    エンタメ, 芸能人

    Geroさん、尿路結石再発も「ビッグサンダーマウンテン療法」に異論

  • (写真左から)江崎グリコ株式会社 健康イノベーション事業本部 商品開発部の池田紀子さん、日本料理店「和敬」店主の竹村竜二さん、江崎グリコ株式会社 執行役員の木村幸生さん
    企業・サービス, 経済

    江崎グリコ、「おいしく減塩」に挑戦 減塩食品の革命を宣言

  • 「カロリAI」で食事の写真を読み込ませた画面。AIが分析して材料や量、カロリーを推定する
    インターネット, サービス・テクノロジー

    カロリー管理続かない人が作った「カロリAI」が話題に 管理をスマート化して“自分…

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン「人生100年時代のヘルスリテラシー白書」公開!デジタルツールの活用が都市圏で拡大
    企業・サービス, 経済

    「人生100年時代のヘルスリテラシー白書」公開 デジタルツールの活用が都市圏で拡…

  • ICIによるがん免疫療法のいまとこれから
    企業・サービス, 経済

    がん治療“第4の柱”「免疫チェックポイント阻害薬」製薬会社がセミナー開催

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…
    2. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…
    3. 今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      今、令和だよな?「魔法のプリンセス ミンキーモモ」31年ぶりの新作OVA制作決定

      1980年代と90年代、多くの少女たちを夢中にさせた伝説の魔法少女が帰ってきます。「魔法のプリンセス…

    編集部おすすめ

    1. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    2. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    3. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    4. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    5. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト