毎週水曜連載の『うちの本棚』、第十一回は水木しげるの「鈴の音」。
本作は『火星年代記』『妖棋死人帳』と並んで貸本時代の三大長編怪奇時代劇と言われているらしい。
中でも本作は正統派の怪奇漫画として仕上がっているのではないだろうか。
長く借り手のつかない「陣屋」とは呼ばれる建物に、突然借り手がつく。その借り主である武家は、金もあり、美しい娘と二人暮らし。しかし奇妙な行動で周囲から警戒される。
「陣屋」を管理する家の息子である主人公は、武家の娘と親しくなり、徐々に武家の奇妙な行動の理由を知ることになるのだが…。
40年に及ぶ呪いによって憔悴し、やがてその死を覚悟する武家。人知を超越した存在に触れることの恐ろしさを描いた作品である。
水木の作品には、われわれが普段生活している世界と隣り合わせに見えない世界があるということ描いたものが多いような気がする。それは『墓場鬼太郎』にもいえるだろう。それまで見ることができなかった世界を見る力を得てしまったとか、偶然から覗き見てしまったというストーリーが水木作品にはけっこうある。そしてそういう世界に触れてしまう者はおうおうにして、古い言い伝えや迷信をばかにしている者だったりする。
触らぬ神に祟り無し、こんな言葉を水木作品を読むたびに思い出してしまう。
書 名/鈴の音
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2009年5月25日
収録作品/鈴の音