毎週水曜連載の『うちの本棚』、第十二回も水木作品を紹介いたします。今回紹介するのは「妖棋死人帳」。
本書は、1966年12月号の「月刊ガロ」で描き直して掲載され(ちなみに「ガロ」はこの号、『カムイ伝』が休載のため、この作品を巻頭に掲載している)、サンコミックスにも収録されたもののオリジナル貸本版を復刻したもの。
ある武家の次男坊である主人公が、ふと手に入れた古書「死人帳」は、死んだ者が死に神から受け取り読むもので、生きながらそれを読んでしまった主人公は死に神によって冥土へと連れて行かれてしまう、というのが大まかなストーリー。
描き直し版ではタイトルも『怪奇死人帳』と改められ、サンコミ以後もサンワイドコミックスなどで刊行されたので読まれた読者も多いだろう。貸本版との差異は、ビジュアル面だけでセリフもコマ運びも変わってはいない。強いて言えば貸本版と雑誌版では1ページのコマ割りが3段と4段という違いがあるので、その分ページ数が少なくなっている。
ビジュアル面ではやはり雑誌版の方が細かい描き込みがされており、主人公が「お花番」という役職で担当する「毒草園」の描写においては貸本版とは比べ物にならない美しく幻想的な風景が描かれている。とはいえビジュアル面がスッキリしたから作品の出来が上がるというわけでもない。貸本版に見られる迫力やおどろおどろしさは雑誌版では薄れてしまっている印象がある。『怪奇死人帳』を読まれたことがあるなら、ぜひオリジナルの『妖棋死人帳』も読んでみてほしい。
書 名/妖棋死人帳
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2009年10月19日
収録作品/妖棋死人帳