おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百三十回 大平原児/川崎のぼる

【うちの本棚】第百三十回 大平原児/川崎のぼる今回の「うちの本棚」は、川崎のぼるの西部劇作品『大平原児』をご紹介します。南北戦争当時のアメリカを舞台にしたガンアクションが見どころの作品です。


  • 【関連:第百二十九回 魔海/さいとう・たかを】

     

    本作は「少年ブック」に掲載された川崎のぼるの西部劇作品。初期の川崎は西部劇ものが多く、それはやがて『荒野の少年イサム』へとつながっていく。

    ちなみに本書には「第一巻」の表記があるのだが、第二巻以降の刊行は確認できていない。また再刊行された気配もないので、単行本未収録部分もあるだろう。
    「大平原児」というタイトルで、チャリーという同じ主人公が登場するシリーズ作品ではあるが、エピソード自体は独立した作品としても読める。設定は南北戦争当時のアメリカだ。

    主人公のチャリーは、銃の腕は確かだが自ら「無法者」を自認していて、正義の見方というわけではない(もちろん世の中に為に…という行動も見せるので、正義感がないわけではないが)。このあたり、劇画家と呼ばれ、劇画作品を手がけてきた川崎らしい設定といえなくもない。また、2話目のエピソードでは無法者から宿無しに表現が変っているところを見ると、当時の雑誌に於ける主人公の設定の制限も感じられたりする。

    ビジュアル的には『荒野の少年イサム』あるいは『巨人の星』と比べると描き込みが少ないように思え、部分的に貸本劇画的な描写と感じられるものもあったりして興味深い。特にアクションシーンでは、劇画チックと言ってもいい描写になっていると言えるだろう。
    『巨人の星』という有名すぎる作品があるためにその他の作品に光があたりづらい川崎のぼるであるが、劇画とマンガの長所をうまく融合させていた作家だという印象が強い。今後再評価の機会があって然るべき作家のひとりだと思っている。

    書 名/大平原児
    著者名/川崎のぼる
    出版元/秋田書店
    判 型/新書判
    定 価/240円
    シリーズ名/秋田サンデーコミックス
    初版発行日/昭和45年10月10日
    収録作品/大平原児・無法者の道の巻
    〃 ・死の街道の巻

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百三十四回 死の砦/川崎のぼる
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十四回 死の砦/川崎のぼる

  • 【うちの本棚】第百三十三回 ふきだまり/川崎のぼる
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十三回 ふきだまり/川崎のぼる

  • 【うちの本棚】第百三十二回 川崎のぼる傑作漫画集
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十二回 川崎のぼる傑作漫画集

  • 【うちの本棚】第百三十一回 キャプテン五郎/川崎のぼる
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十一回 キャプテン五郎/川崎のぼる

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    2. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…
    3. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト