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【うちの本棚】第百二十九回 魔海/さいとう・たかを

【うちの本棚】第百二十九回 魔海/さいとう・たかを「うちの本棚」、今回もさいとう・たかをの短編集をご紹介いたします。60年代に発表された、さいとう・たかをのアドベンチャー作品を集めた『魔海』。さいとう・たかをの読みきり短編作品をじっくりと味わってください。


  • 【関連:第百二十八回 吸血鬼/さいとう・たかをセレクション】

     

    本書は同時期に発売された『吸血鬼』に対応して「アドベンチャー編」とされる60年代に発表された作品を収録した短編集。表題作の『魔海』と最後に収録されている『鮫狩り』は海を舞台にした作品。本書が単行本初収録の作品もあるようなのだが、どれがそうなのかは表記されておらず、定かではない(少なくとも『チャブロ原人境』『鮫狩り』の2編は過去に表題作として単行本が出ているので初収録ではない。『挑戦』のみさいとう・たかをのサイトにある作品リストにも見つけることができなかったので、これが初収録かもしれない)。
    『魔海』『チャブロ原人境』は、怪奇・幻想あるいはSFに分類してもよさそうなストーリーで、『吸血鬼』に収録されてもよかったかもしれない。とくに『魔海』は、嵐で遭難した少年がたどり着いた島で巨大なカニと闘うという展開で、他の収録作品とは一線を画している。
    『ダイナマイトヒッチ』は次から次へと話が転がっていくロードストーリー的なもので、お転婆な女性キャラクターがいい味を出している。個人的には、さいとう・たかを作品には珍しいものではないかと思う。

    読みごたえという意味では『鮫狩り』がもっとも充実しているように感じた。「アドベンチャー編」という意味でもこの作品はピッタリだろう。凶暴な人食い鮫の描写も実にいい。

    現在新刊書店で購入できるさいとう・たかを作品のほとんどは長編で、なかなか読み切りの短編を集めたものがないのだが、本書そして『吸血鬼』はさいとう・たかをの短編作品の魅力を存分に楽しめるものになっているといえるだろう。

    欲を言えば、貸本劇画時代の短編作を集めたものもぜひ刊行していただきたいところではある。

    書 名/魔海(さいとう・たかをセレクション)
    著者名/さいとう・たかを
    出版元/リイド社
    判 型/文庫版
    定 価/500円
    シリーズ名/さいとう・たかをセレクション
    初版発行日/2005年10月6日
    収録作品/魔海(1965年・秋田書店「冒険王・増刊号」)
    挑戦(1961年・「顔・別冊」)
    チャブロ原人境(1969年・講談社「週刊少年マガジン」)
    ダイナマイトヒッチ(1967年・講談社「別冊少年マガジン」)
    鮫狩り(1966年・講談社「別冊少年マガジン」)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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  • 猫目 ユウWriter

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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