【うちの本棚】第百二十五回 大和小伝/さいとう・たかを「うちの本棚」、今回はさいとう・たかをの貸本劇画時代の作品を集めた『大和小伝』をご紹介いたします。時代劇はさいとうの得意とするジャンルのひとつであることが、本作でもよくわかります。

さいとうプロで制作・出版された貸本シリーズから5編を収録した一冊。ストーリー上のつながりはなく、時代劇の読み切り短編シリーズというものである。


これらの作品は『無用ノ介』『影狩り』といったさいとう・たかをの代表的な時代劇画が描かれる以前のものであり、また初出が貸本ということもあってか多少描きとばしている印象がないわけではない(背景や効果線などの描き込みが少なく全体的に画面が白い印象がある)。

とはいえこの当時からさいとう作品は読みやすく、ストーリーや構成もしっかりしているのがわかる。

すでにプロダクション制になっていて、各作品のタイトルページには「作・構成/さいとう・たかを」という表記も見られる。

現在もリイド社を中心にして自作品は自分の目の届く範囲で出版しているという感じのするさいとう・たかをなので、特定の作品は装丁を変え形を変えて出版が繰り返されているが、貸本時代の作品になると日の目を見ないものが多いのが残念だ。

さて本書収録の各作品だが、剣に生き剣に死ぬ武士たちが描かれている。特には藩の陰謀あり、剣の腕に溺れる武芸者ありと、時代劇の醍醐味が味わえる。雑誌に活動の舞台を映してからの作品に比べ、ひとつの作品に詰め込まれた内容は少々薄い印象もあるが、その分テーマはダイレクトに伝わってくる。

貸本劇画に興味のある方、さいとう・たかを作品がお好きな方はぜひ読んでいただきたい。

書 名/大和小伝
著者名/さいとう・たかを
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/B6判
定 価/1500円+税
シリーズ名/復刻名作漫画シリーズ(ただし本書にはこの表記はない)
初版発行日/2009年8月8日
収録作品/剣法無双、蒼雪、右うでを切る、修羅外道、助勢

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/