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【うちの本棚】第百二十六回 ワンサイド特急~組織スマイル~/さいとう・たかを

【うちの本棚】第百二十六回 ワンサイド特急~組織スマイル~/さいとう・たかを今回の「うちの本棚」は、さいとう・たかをのアクション劇画『ワンサイド特急~組織スマイル~』を取り上げます。元海賊の探偵集団「ワンサイド特急」の活躍をド派手なアクションと共に見せてくれる、さいとう・たかを幻の作品のひとつでした。


  • タイトルである「ワンサイド特急」とは、国家レベルの犯罪に対してフリーで仕事を請け負う探偵集団である。元々は海賊だったという記述もあり、その素性はハッキリしないが、少年であり射撃などさまざまな特技を持つミスター嵐を局長に、凄腕のメンバーがそろっている。一方「組織スマイル」だが、これは世界制覇を企むテロ組織であり、「ワンサイド特急」がその実態の調査に乗り出す対象である。本書のタイトルとして『ワンサイド特急』、そのサブタイトルのように「組織スマイル」が付けられていると、「スマイル」が探偵集団の名称で、「ワンサイド特急」には別の意味があるように思えてしまう。たぶん『ワンサイド特急』の「組織スマイル編」ということだったのだろう。

    本作品はひと言で言うとスパイアクションである。謎に満ちた「組織スマイル」の実態を探るべく、「ワンサイド特急」のメンバー3人が組織の中に潜入したり、撃ち合い、殴り合いのアクションを見せる。作品が発表された時期も映画やテレビドラマでスパイものが流行っていた時期と重なるだろう。ちなみにさいとう・たかを作品としても『007シリーズ』『0011ナポレオンソロ』と『ゴルゴ13』のあいだに描かれたものということで、なるほどと頷ける。

    ただ、作品の前半と後半では明らかに描き方が変わっていて、前半では『ゴルゴ13』に見られるような政治的・思想的な背景を匂わすような展開にもなっているのだが、発表媒体がわりと低年齢層向けの「冒険王」だったこともあり、見た目の派手なアクションが多くなっていく。最終的な結末もちょっと急いだ感じがあり、急な終了だったのかもしれない。
    「ワンサイド特急」の実態や登場しなかったメンバーがいるのではないかという疑問も含めて、また別のエピソードを見てみたかった気もする。

    本作はさいとうの少年ものの多くがそうであるように長い間気軽に読める形で刊行されなかった。パンローリングでの刊行が実に40年ぶりということである。

    書 名/ワンサイド特急~組織スマイル~
    著者名/さいとう・たかを
    出版元/パンローリング
    判 型/B6判
    定 価/1800円+税
    シリーズ名/マンガショップシリーズ(Vol.254)
    初版発行日/2008年8月2日
    収録作品/ワンサイド特急~組織スマイル~(「冒険王(秋田書店)」1965年11月号~1966年4月号)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
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    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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