11月18日、今期アニメ『ガールズ&パンツァー』の舞台となっている茨城県東茨城郡大洗町の観光イベント「大洗あんこう祭」において「ガールズ&パンツァーin大洗」が開催されました。その様子を地元ネタを交えつつリポートしますよ。それでは、Pantzer vor(戦車、前進)!!
『ガールズ&パンツァー』といえば、乙女のたしなみとされる「戦車道」を通して、女子高生の友情と青春を描く「青春戦車アニメ」。キャラ萌えだけでなく、コアなミリタリーファンも燃える(萌える?)作品ですね。細かく見ると、戦車が市街地の舗装路など硬い路盤を高速で走ると、不整地なら地面で吸収されるはずの走行に伴う衝撃がそのまま車体にはね返ってくるので、サスペンションがダメージを受けて整備が大変になる……とか、あんな大きな学園艦が航行・接岸するには、少なくとも水深が2、300mないと座礁しちゃう……とかありますが、そんなツッコミどころなんか気にならないですよね。野上武志さんの『セーラー服と重戦車』じゃないですけど「女の子+戦車=正義」ですよ!
「ガールズ&パンツァーin大洗」が開催された「大洗あんこう祭」の会場は、アニメにも出てきている大洗マリンタワー。前日は子供たちを中心にしたダンスチームのコンテスト「大洗舞祭」が行われていました。大洗舞祭は今年で9回目、あんこう祭は16回目を数えます。
今回の「ガールズ&パンツァーin大洗」は、この観光イベントの一環としてお呼ばれした……という形で、運営等は地元の人々、特に大洗リゾートアウトレット内にある地元産品販売店「大洗まいわい市場」の方々が中心となって行われてました。大洗まいわい市場の店内には『ガールズ&パンツァー』のポスターもあちこちに貼ってあります。入り口近くには作品にも登場した「餡香(あんこう)やき」の販売ブースが。
15日に、アニメに登場したあんこう形から、アニメの「あんこうチーム」のマスコットの型押しがされた大判(今川)焼きみたいな形にリニューアルされた餡香やき。案の定大人気で午前中のうちに完売してしまい、残りは予約販売ということになってましたよ。なんか銚子電鉄のぬれ煎餅を思わせる売れ行きでしたね。
ステージイベントは、あんこうの吊るし切り実演をはじめ、地元の芸能サークルの発表や、茨城県北の大子町からやってきたYOSAKOIソーランチームが踊ったりとバラエティに富んだもの。
物販のブースでは、あんこう汁の販売の他、地元産品や大洗の友好都市(北海道苫小牧市、栃木県日光市・那須町、群馬県榛東村、茨城県大子町・美浦村)によるブースなど。もちろん、あんこう自体も売ってましたよ……どうやって家で捌くんだか判りませんけど。そして、個人的にはこれぞ「大洗名物」だと思ってる「焼きハマグリ」もありましたよ。海水浴シーズンなんかでは、この屋台が出ていて、浜辺で食べるのが定番です。
さて、2回目の「あんこう吊るし切り実演」が終わると、いよいよ「ガールズ&パンツァーin大洗」のステージ(1回目)。司会はバンダイビジュアルの宣伝プロデューサー、廣岡祐次さん。地元プロレス団体「ごじゃっぺプロレス」で今年3月デビューした大洗のご当地レスラー「海人戦士オーアライダー」のマスクをかぶって登場でした。続いて登場したのは「あんこうチーム」のキャストである渕上舞さん、茅野愛衣さん、尾崎真実さん、中上育美さん、井口裕香さんの5人。渕上さん、尾崎さん、中上さんの3人は、前日大洗ホテルで行われた「ガールズ&パンツァーin大洗合同記者会見」に出席。泊まった大洗ホテルでは「芋パーティー」をしたとか。……干し芋は結構ウイスキーとかダークラムに合いますが、何と一緒に食べたんでしょうね。
こちらではファン向けのイベントというよりも、このあんこう祭に来た人向けに「大洗が舞台になったアニメが放送中」というインフォメーション的なもので、各自大洗(皆初めてだったとか)の感想や20秒の制限時間で作品のプレゼンテーション合戦をしたり……といった内容。そして、あんこうチームの5人で歌うED「Enter Enter MISSION!」のライブ。レコーディングでは別録りなので、実はこれが5人揃って歌う初めての機会。快晴でステージに向けて日が差し込む野外ステージだったので、終始まぶしさをこらえながらのステージとなりました。ちなみにプレゼンテーション合戦の勝者は、五十鈴華役の尾崎真実さん。賞品として、限定グッズの「大洗女子学園生徒会御用達干し芋」をゲット(第2回目のステージで贈呈)しました。
このステージで、大洗リゾートアウトレットにあるレンタサイクルコーナーに、12月からガールズ&パンツァー仕様の自転車(前輪にあんこうチーム5人の姿がそれぞれ描かれたもの)が登場すること、そして大洗の町を巡るスタンプラリー企画が発表されました。
この後登場した県立大洗高校マーチングバンド部「ブルーホークス」のステージでは、劇中で使用されているBGMを披露するサプライズも。練習期間は短かったそうですが、さすがに全国屈指の実力を誇るだけあって、素晴らしい演奏でした。
こちらの会場には、地元のイベントということもあって、海上保安庁(大洗には巡視船が、隣のひたちなか市には茨城海上保安部がある)や自衛隊(茨城地方協力本部)のブースもありました。前にたくさんの人が行列を作り……
隣のガールズ&パンツァーグッズ販売ブース(干し芋)へと流れていきます。こちらも昼頃には在庫が無くなり、予約発送の受付をしていたのですが、それでも行列は絶えません。
茨城地方協力本部(茨城地本)ブースの隊員達も、列だけでなくステージも見学し、このガルパン人気に驚いてました。
茨城地本の方によると、イベント参加の打診は結構直前だったそうで、展示車両は普段使用している1/2tトラック(通称:パジェロ)しか持ってこられなかった、とのこと。
「もっと早く(せめて数ヶ月前)にこういう(ガールズ&パンツァーの)イベントがあると内容が判っていれば、各方面と調整してホンモノの戦車を持ってこられたんですが……」
と残念がってました。茨城県の土浦駐屯地(武器学校)には、ガールズ&パンツァーに出てくる10式戦車と、アヒルさんチームが乗る八九式中戦車(劇中ではガソリンエンジン仕様の甲型だけど、こちらはディーゼルエンジン仕様の乙型)が動く状態で存在します。
今回はコミュニケーション不足で残念でしたが、(口頭での話ですが)自衛隊の方はやる気なので、うまく話が進めばコラボができるかもしれませんね。
あんこう祭会場でのイベントは基本的にステージイベントくらいで、『ガールズ&パンツァーin大洗』のメイン会場となるのは大洗リゾートアウトレット。その中にある地元産品販売所「大洗まいわい市場」周辺となります。ここは聖グロリアーナ女学院との練習試合があった際に、パブリックビューイングの会場となった場所。あちこちに案内看板がありました。
物販ブースは劇中に登場する「せんしゃ倶楽部」という名前がついてました。これは東京・市ヶ谷にある「のりもの倶楽部」が元ネタですね。スゴい人で、商品もイベント前にほとんど品切れに。「大洗限定」で販売される商品だけに、みんなスゴい購買意欲です。
タイアップのお酒もあったのですが、こちらは水戸市にある「うめ物語」などで知られる酒造メーカーの商品。大洗には「月の井」という地元の蔵元があり、お酒がルフトハンザ・ドイツ航空のファーストクラスに採用されたり、女性の当主がドラマになったりしています。大洗の飲食店ではほとんどこの「月の井」を出しているので、こちらとコラボできていれば、より大洗のローカル色が出て良かったような気もしますが……。
また、茨城交通が応援回数券、大洗に本社をおく鹿島臨海鉄道が記念乗車券を販売。双方でラッピング車両も走りはじめました。鹿島臨海鉄道は6000形気動車6006号、茨城交通は茨大前営業所に所属する日産ディーゼル(富士重工車体)の「水戸200 か ・360」(元西武バスの車両)です。茨城交通バスでは、アクアワールド大洗〜海門橋北口の区間(上下線)で、今年いっぱいの期間、西住みほ役の渕上舞さんによる特別アナウンスも流れますよ。
また、地元の広告会社が運営する情報サイト「いばナビ」では応援ページ「ガールズ&パンツァー超!! 推進部!」を開設。その原動力になった社員の「もまっぺ」さんが、ブースで手作りイラストマップとコラボ缶バッジを配布していました。劇中に登場した場所の情報がQRコードでゲットできる芸の細かさが光りました。描かれた戦車は日本陸軍の三式中戦車(これも土浦駐屯地にあります)みたいな感じ。
大洗リゾートアウトレットは、東京に近い県南部(ちょうどアニメの杉山潔プロデューサーが住んでる市の隣)に大きなアウトレットができたりと、ちょっと集客に苦戦しているらしく、空きテナントがちらほら目立ちます。ちょうど「大洗まいわい市場」の真上にも空きテナントがあり、そこを利用してテレビ第5話までの上映会が行われていました。
2回目のステージを行うのは、このまいわい市場の前。ちょうど2階のテラス部分からもよく見えるポイントで、車いすで来場した地元ファンのカップル(2分で来られる場所に住んでるとか)はもみくちゃにされて危険な下でなく、このテラスに陣取り「この場所が会場でありがたかった」と感謝していました。手作りのステージが設置されたのですが、ホリゾントとなる等身大横断幕が折からの海風で倒れそうになった為、トークショー直前にキャストの安全を考慮して撤去されました。この時期は海風が強いのでしょうがないですよね。
ホリゾントが撤去される前には、あんこう祭のステージでも演奏した県立大洗高校マーチングバンド部「ブルーホークス」が再び演奏を披露。劇中BGMはもちろん、こちらでは狭い場所でも動けるステージマーチングも披露し、来場者の拍手を浴びていました。このマーチングバンド部、高校入学まで楽器を触ったことのない生徒も1年で一緒にマーチングできるまで上達するそうですから、指導がうまいんだろうなぁ……。
【県立大洗高校ブルーホークスが劇中BGMを披露】
ホリゾントが無くなって少々寂しい姿になったステージで始まった第2回目のステージはトークショー。司会は前に引き続き、バンダイビジュアルの廣岡さんです。トークを聞いていると、やっぱり井口さんは慣れてますよね。うまく会場の雰囲気や進行を意識したコメントが出てきて……順番として最後になってたのは進行上よかったかもしれませんね。
グッズの紹介コーナーで「生徒会御用達干し芋」が出てきたのですが、プレゼンテーション合戦優勝者の尾崎さんだけでなく、結局全員で味見することに。尾崎さんは前日水戸駅に到着した時点で干し芋を購入したそうですが、さすがこちらは「生徒会御用達」。おいしいと評判でした。……実は干し芋というと一般的には、大洗より隣(那珂川の対岸)のひたちなか市が有名だったりします。ひたちなか海浜鉄道阿字ケ浦駅近くにある神社には干し芋の碑が建てられているほど。
また「どんなコラボをしてみたいか」という質問には、
尾崎さん「キャラごとにトッピングを変えたコラボアイスが欲しい(味は芋で)」
茅野さん「大洗にサンクスって……ある?(なーい、の声に)じゃぁ、サンクスをオープン!」
渕上さん「みんなで大洗の聖地巡礼バスツアー」
中上さん「戦車カフェ行きたいです」
井口さん「5人で戦車に乗って、大洗を蹂躙……じゃない、練り歩きたい」
などといったコメントが聞かれました。
司会の廣岡さんが井口さんのコメントを受けて「自衛隊と戦車コラボできるといいですね……お待ちしてます」というようなことを話してましたが、前述の通り、自衛隊は事前に打診されていれば会場に戦車を持ってこられたそうなので、次回があるなら、半年くらい前に要望を出してみると実現可能かもしれません。
さて、今回の「ガールズ&パンツァーin大洗」は、例年のあんこう祭の2倍に及ぶ、6万5000人を超える来場者があったということで、実際に町を歩いて劇中に登場した建物やお店を撮影するファンの姿も多く見受けられました。車で走ると、ホントに割烹旅館「肴屋本店」(今回のイベントでメイクさんが宿泊)に突っ込みそうになる感覚も味わえますよ(実際に突っ込むと戦車と違って怒られますが)。
そして、鹿島臨海鉄道大洗駅では11月30日〜12月2日の期間、構内のインフォメーションコーナーでアフレコ台本や設定資料などを展示する「ガールズ&パンツァー展in大洗駅」が開催されます。グッズの即売も行われる予定です。今大洗駅は改札前に等身大横断幕が展示されてますが、あまりの大きさに圧迫感を感じるほど。
この展示会が開催される期間は、JR水郡線の水戸駅〜常陸大子駅の区間を、真岡鐵道の蒸気機関車C11形325号機が牽引する「SL奥久慈清流ライン号」が運転されます。一緒に撮り鉄も楽しめますよ。
『ガールズ&パンツァー』公式サイト
http://girls-und-panzer.jp/
いばナビPRESENTS「ガールズ&パンツァー超!!推進部!」
http://sc.ibanavi.net/sc01/
鹿島臨海鉄道「ガールズ&パンツァー展in大洗駅」
茨城交通「ガールズ&パンツァー応援Projekt」
http://www.ibako.co.jp/girls-und-panzer/
(文・写真:咲村珠樹)