書店で「あるある本」なるジャンルがじわじわと増殖していることにお気づきでしょうか?
『野球部あるある』『麻雀あるある』『猫あるある』……と言われれば、書店に行く人なら「ああ、あったかも。うん、あるある」とうなずくことでしょう。
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もともと人々の「共感を共有する」という試みは、ネットの得意分野でした。しかし企画枯れに苦しむ出版界も後追い、「金を出してまで買う?」という不安をはねのけ、定番のジャンルとして棚の一角を占めるまでになりました。
しかし、かつて『磯野家の謎』ヒット後に謎本ブームが起こったときのように、この手のブームは始めこそよくても、次第に題材が小粒化・細分化し、やがてジャンルごと枯れ細っていくのが宿命でした。
そんな中、本を扱う書店側をニヤリとさせる切り札として、『書店員あるある』が送り込まれました。
本書の強みは、やはり売り手である全国の書店員をがっちり味方につけている点でしょう。書店員が見向きもせず、即返本するとは思いがたいからです。あるいは、全国の書店員がひとり一冊ずつ買ったら、たちまちベストセラーです。
もちろん、内容はそんなイヤラシイ思惑に染まっているわけではなく、純度100%のあるある本です。
「エロ本を参考書のあいだにサンドイッチしてレジに持ってくる」
「いつの間にか、本にかけてあるビニールがはがされている」
「雑誌発売日は、大量の付録づけラッシュで開店前から疲れはてる」
「デート中でも、旅行先でも、書店があると反射的に入ってしまう」
書店員以外の普通の本好きの人でも、思い当たるネタは多いのでは。あらためて、書店で人間観察をしたくなること請け合いです。
(文:青木ポンチ)