おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】143回 地中海のルカ/文月今日子

【うちの本棚】143回 地中海のルカ/文月今日子「うちの本棚」、今回ご紹介するのは文月今日子の歴史ロマン『地中海のルカ』です。
地中海を舞台に海賊とローマ軍が交戦する読みごたえのある中編。まるで映画を観ているような作品です。


  • 【関連:第142回 銀杏物語/文月今日子】
     
    『地中海のルカ』は昭和53年6月号、『野いちご白書』は昭和53年2月号、『ボタン玉ふたつ』は昭和52年11月号と、それぞれ講談社の「別冊少女フレンド」に掲載された。
    『地中海のルカ』に関しては単行本刊行以前に掲載誌で読んでいて、個人的には印象深い作品のひとつだ。単行本ではモノクロ印刷になってしまっているカラーページも美しかった。

    物語は紀元前の地中海、ローマ帝国とローマ軍に滅ぼされたカルタゴの生き残りである海賊との戦いが描かれる。

    ルカというローマ軍に多大な被害を与えている海賊の討伐に、若きローマの軍人が派遣されるのだが、ルカはその代が変わり14歳の少女が海賊団の頭目として指揮していることを知る。

    海賊を滅ぼすことが地中海の平和のために本当に必要なことなのか、若き軍人は考え、海賊を辞めるのを条件にカルタゴに代わる土地を提供すると申し出るのだが…。

    ルカは、文月作品にはよく登場する元気な男勝りな少女のひとりとして描かれている。年の離れた副頭目と先代ルカによって婚約しているが、身分を隠して海賊の島に入り込んだローマの軍人に心を動かされる。

    海賊船とローマの軍艦の戦いなど、ダイナミックな画面構成もあり、またルカの淡い恋心も描かれるなど、映画を観ているような作品に仕上がっている。ただ読みきり作品というページ制限のためか、少々展開を急ぎすぎている感は否めない。連載作品としてじっくり描いてほしかった気もする。
    『野いちご白書』は、父親の再婚を許せずに家出して、叔母の下宿屋に転がり込んだ美香を主人公にしたラブコメディ。
    『ボタン玉ふたつ』も幼馴染みの3人(女の子ふたりに男の子ひとり)が登場するラブコメディ。子供の頃に仲のよかった3人も、成長するに連れてそれぞれの思いに気がついていくという展開。

    読み切りの中短編を3編収録した本書は、文月今日子の作品を初めて読むという人にもオススメな一冊かもしれない。

    書 名/地中海のルカ
    著者名/文月今日子
    出版元/講談社
    判 型/新書判
    定 価/350円
    シリーズ名/講談社コミックス・フレンド
    初版発行日/昭和53年9月15日
    収録作品/地中海のルカ、野いちご白書、ボタン玉ふたつ

    地中海のルカ

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】145回 クレドーリア621年/文月今日子
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】146回 クレドーリア621年/文月今日子

  • 【うちの本棚】144回 夏の夜のエイリアン/文月今日子
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】145回 夏の夜のエイリアン/文月今日子

  • 【うちの本棚】143回 星空の切人ちゃん/文月今日子
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】144回 星空の切人ちゃん/文月今日子

  • 【うちの本棚】第142回 銀杏物語/文月今日子
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第142回 銀杏物語/文月今日子

  • 【うちの本棚】第141回『わらって!姫子』/文月今日子
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第141回 わらって!姫子/文月今日子

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    2. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    3. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    4. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    5. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト