高速道路を走っていると、インターチェンジやその付近でやけに目につくお城や船の建造物。

 子供の頃は無邪気なもので「おかあさんあそこ行ってみたい!」とおねだりし、親を困惑させてしまったことがある筆者ですが、後に知ることとなる、その正体は「ラブホテル」。

 今回はそんな「ラブホテル」にまつわる疑問をご紹介してみたいと思います。

 そもそもこの「ラブホテル」。昔から疑問だったのですが、なぜ「高速道路」の近くに多いのか?そう思った事ってありませんか?

 一説には「ラブホテル」の建築・営業許可が下りやすいエリアだとか、高速道路関連企業がそうした事業に関わっているだとか……様々な噂がまことしやかに流されています。その真相やいかに?

 関係者に取材してみました。

■ 噂その1)高速道路関連企業がそうした事業を展開している

 あるインターネットの質問掲示板で「なぜ高速道路のインターチェンジ付近にはラブホテルが乱立しているのですか?」という疑問に、ベストアンサーとして取り上げられ話題となったこちらの噂。

 事実そうしたことがあるのか、『高速道路3社により「ラブホテル運営」の業務委託をしている』と名指しされていた、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に問い合わせてみました。

 回答によると「事実無根」との事。担当者の方に電話口で大爆笑されました。ちなみに、担当者の方もそうした噂がネットを通じて流れているのをご存知で、こうした事態に困惑している様子。

 なお、基本的な事業内容はあくまで社名通りの内容。過去に遡っても「ラブホテル」経営は例がないそうです。

■ 噂その2)高速道路付近の土地は建築・営業許可が下りやすい

 この質問については、ラブホテル経営のコンサルティングを手がける株式会社ハート・トラストウィンの代表取締役 山内和美さんに話をうかがいました。

 まず始めに、「ラブホテルが高速道路付近に集中して建てられている理由」について質問したところ。昭和30年代からの「モータリゼーション(自動車普及)」が大きな背景にあるそうです。当時、男女のデートといえば「ドライブ」が一般的かつステイタス。

 そうした流れから、高速道路を利用しての遠距離デートをするカップルが増え、必然的に休憩などの(?)意味もあり、需要に駆られる形で増えて行ったのではないか?というお話。

 建築・営業許可の規制については、またそれから更に後の話で、特に影響が強いのが昭和60年にあった風俗営業法の大規模な改正。以降は、そうした「ラブホテル」と呼ばれる存在は、新たに建築できる場所が少なくなり、「出来ないことではないが場所がないため難しくなっている」との事。

 そのため、規制前に建てられた「ラブホテル」が現在でも活躍する形となり、また改装などを経て同じ場所にありつづけるというのが実態のようです。

 許可が取りやすいか否かについては「その土地の条件にもよるので特に高速道路付近だから下りやすい」という事はないそう。逆に中心地でも、場合によっては新たな建築が許可されることもあり一概には言えないそうです。

 ちなみに、山内さんによると、「ラブホテル」とここで呼んでいる存在は、厳密には風俗営業法第4号許可のものと旅館業法の2種類があり、またそれぞれで許可や規制が異なるそうです。

 今回疑問を持ち調べていった『ラブホテルはなぜ高速道路付近に多いのか?』。許可が下りやすいなど様々な噂を中心に調査していきましたが、実態は時代が求めた需要とその後にあった風俗営業法の改正の影響によるものが大きかったようです。

 最後に、山内さんとの話の中で非常に興味深かったのが「ラブホテル」という文化は日本独自で発展したものだそう。お城や船などの独創的な建物に、回転ベッド……今では絶滅危惧状態とのこと。

 最近の「ラブホテル」業界では、リーズナブル傾向がつよく、シンプルな建物が増えているというお話でしたが、“機会と相手”があれば、こうした「時代に消え行く日本の風俗文化」でも研究しに、古のラブホテルを利用してみたいと思います!

【取材協力】
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
株式会社ハート・トラストウィン 代表取締役 山内和美さん

(文:宮崎美和子)