おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【宙にあこがれて】第32回 今年唯一の米軍航空イベント!? NAF厚木・日米親善春祭り

こんにちは、咲村珠樹です。ゴールデンウィーク最初の土曜となる4月27日、神奈川県にあるアメリカ海軍厚木航空施設(NAF厚木・通称:厚木基地)で「日米親善春祭り」が開催されました。今回はその様子をリポートします。


  • 【関連:第31回 航空機の「速度」いろいろ】
     
    アメリカ政府の歳出強制削減措置発動により、軍の予算も大幅に削減され、作戦に関係ないものは軒並みカット。特にイベント等の広報予算はほとんどが認められなくなりました。海軍のフライトデモンストレーションチーム、ブルーエンジェルスは訓練を含む全ての飛行が禁止に。空軍のサンダーバーズも飛行停止措置が採られ、今年の夏〜秋に予定されていた、日本を含むアジアパシフィックツアーが中止になりました。

    もちろん、軍が協力する航空祭も軒並み中止に。日本でも5月5日に予定されていた海兵隊岩国基地のフレンドシップデイ(航空祭)は予算が認められずに中止、空軍の嘉手納基地、横田基地のフレンドシップデイも無期延期ということになり、実質的に開催されない状況です。特に岩国基地は、フランスからやってきた民間最大のアクロバットチーム「ブライトリング・ジェットチーム」の初来日公演(ショウ)が予定されていただけに残念な出来事でした。……岩国は中止となりましたが、ブライトリング・ジェットチームの飛行はこの他、5月6日に明石海峡大橋、5月11日に福島県(午前)と横浜港(午後)、5月12日に福島県いわき市小名浜港での飛行が予定されています。

    厚木での春祭りも開催が危ぶまれましたが、無事予定通り開催の運びに。展示飛行のある航空祭ではありませんが、今年ではほぼ唯一の米軍航空イベント、そしてゴールデンウィークということもあって、多くの人(NAF厚木の公式発表で2万人以上の日本人)が来場しました。

    NAF厚木では、セキュリティ上の理由から入場時に厳しいチェックが行われます。基本的に日本かアメリカの国籍を持っていないと入場することができません。国籍を確認する為に、パスポートや外国人登録証など、本籍(国籍)記載の写真付き身分証明証の提示が求められます。手荷物や身体の検査も厳重です。この為、入場に時間がかかり、担当部門の職員を総動員しても入場待ちの行列が数kmにおよび、時間内(11時~16時)に入場できなかった人も多くいました。自衛隊のイベントでも手荷物検査などがありますが、実戦状態にある軍事施設ですから、この厳しい措置は致し方ない面もあります。来場者が許容範囲を超えたんですね。

    飛行場地区のフライトラインには、空母ジョージ・ワシントンで運用されるCVW-5(第5空母航空団)に所属する各飛行隊のCAG(飛行団司令)機や、海上自衛隊厚木航空基地に所属する第51航空隊・第61航空隊の機体が並びます。色とりどりのデザインが施されたCAG機は華やかの一言。

    ▼写真:フライトラインにCAG機が並ぶ https://otakuma.net/?attachment_id=29524

    フライトラインにCAG機が並ぶ

    しかしまず注目は海上自衛隊。新型哨戒機P-1の量産1号機(5503)が初の一般公開です。この機体、翌28日には海上自衛隊鹿屋航空基地に移動し、航空祭「エアーメモリアルinかのや」でも公開されました。

    ▼写真:P-1が一般初披露 https://otakuma.net/?attachment_id=29525

    P-1が一般初披露

    試作機XP-1との外見的差異や飛行特性の違いは殆どありませんが、コックピットにはヘッドアップディスプレイ(HUD)が装備され、更に使い勝手が向上しているとか。現在量産2号機(5504)まで受領していますが、間もなく3号機以降の2機(2008年度発注分)もメーカーから納入予定で、急ピッチで運用評価が進みそうです。

    そして、海上自衛隊にわずか3機だけ残る、第61航空隊のYS-11(YS-11M・9042)も展示。後継機として、アメリカ海兵隊から中古のC-130R導入が決定し、既に要員の一部がアメリカで訓練を開始しているので、海上自衛隊でYSが見られるのもあとわずか。名残惜しいですね。

    ▼写真:61航空隊のYS-11は来年引退予定 https://otakuma.net/?attachment_id=29526

    61航空隊のYS-11は来年引退予定

    厚木での地上展示では、司令官挨拶でスティーブン・ウィーマン大佐が「我々の航空機をすぐ近くで見て、高度な訓練を積んだ搭乗員達と会話を交わすことによって、NAF厚木が帯びている比類なき任務と、この美しい国日本のよき客人として、安全を考慮して訓練に励んでいることを感じてください」と語ったように、周りをロープなどで囲わず、すぐそばで機体を見て触れるのが特徴。

    昨年はロープが登場していましたが、今年は再びロープを撤廃。これが厳重なセキュリティチェックの原因でもありますが、最新鋭の軍用機を間近に見る機会はそうそうありません。最新鋭の電子戦機EA-18Gのキモとも言える電子妨害ポッド、AN/ALQ-99にもベタベタ触れます。

    ▼写真:子供でも電子妨害ポッドに触れます https://otakuma.net/?attachment_id=29527

    子供でも電子妨害ポッドに触れます

    海上自衛隊のP-3Cも近くで見られます。ソノブイ投下口を興味津々で覗き込む人が目立ちました。

    ▼写真:P-3Cのソノブイ投下口に興味津々 https://otakuma.net/?attachment_id=29528

    P-3Cのソノブイ投下口に興味津々

    今年CVW-5に加入したHSM-77「セイバーホークス(Saberhawks)」のCAG機(MH-60R)は、その名の通り剣を構えた鷹が日米両国旗を持つ、日米友好をアピールするようなデザインが目を引きました。このMH-60Rは、最新の対潜水艦戦闘システムであるLAMPS Mk IIIブロックIII対応機種で、今回が日本初公開でした。

    ▼写真:HSM-77のCAG機 https://otakuma.net/?attachment_id=29529
    ▼写真:日米国旗と剣を持つ鷹のデザイン https://otakuma.net/?attachment_id=29530

    HSM-77のCAG機 日米国旗と剣を持つ鷹のデザイン

    また、来場者にとってラッキーだったのは、当日定期訓練飛行があり、CVW-5の所属機が離着陸を実施したこと。帰還時にはオーバーヘッドアプローチからのコンバットピッチに加え、デモフライトまではいかないものの、タッチアンドゴーなど若干のサービスもありました。

    ▼写真:訓練飛行中のHSM-77所属MH-60R https://otakuma.net/?attachment_id=29531
    ▼写真:着陸したVFA-102のCO機 https://otakuma.net/?attachment_id=29532

    訓練飛行中のHSM-77所属MH-60R 着陸したVFA-102のCO機

    着陸後には来場者にパイロットが手を振る姿も。

    ▼写真:フライト後観客に手を振るVFA-195のパイロット https://otakuma.net/?attachment_id=29533

    フライト後観客に手を振るVFA-195のパイロット

    地上展示でもパイロット達は飛行隊グッズを販売したり、記念撮影に応じるなど大活躍。

    ▼写真:サムアップで応えるVFA-27のパイロット https://otakuma.net/?attachment_id=29534
    ▼写真:VFA-115のパイロットがサムアップ https://otakuma.net/?attachment_id=29535

    サムアップで応えるVFA-27のパイロット VFA-115のパイロットがサムアップ

    VFA-102「ダイヤモンドバックス(Diamondbacks)」は、今年日本展開10周年。しかも隊のニックネームであるガラガラヘビ(Diamondback)と同じ巳年が重なって、記念のTシャツなどが並んでいました。

    ▼写真:VFA-102のCAG機 https://otakuma.net/?attachment_id=29536

    VFA-102のCAG機

    VFA-195「ダムバスターズ(Dambusters)」では、CAG機「Chippy Ho!」のマスコットも登場。緑の全身タイツにリアルなハクトウワシの頭とちょっと不気味な姿だからか、見ていた限りでは小さい子のウケはイマイチだったようです。

    ▼写真:VFA-195のマスコットも登場 https://otakuma.net/?attachment_id=29537

    VFA-195のマスコットも登場

    飛行場地区から離れたフィールドに設けられたステージでは、神奈川県立中央農業高校の和太鼓部や、基地内の有志によるバンド(副司令官バンドも登場)やDJによるパフォーマンスもありました。有志による野点や、各部署による模擬店もあり、来場者は楽しんでいましたね。CVW-5の婦人会(Wife’s club)のブースには「私達がCVW-5をコントロールしている」旨の張り紙があり、アメリカでも奥様方が実権を握ってるのかな、と思ったりもしました。

    アメリカの歳出強制削減措置はいまだに終わりが見えません。このまま続くと、来年は更に歳出が減らされるので、今年以上に米軍関連のイベントは開催が難しくなりそうです。外国の財政事情の話なのでなんとも言えませんが、良い方に向かってくれればいいな、と思わざるを得ませんね。

    (文・写真:咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 紅白の信号旗を掲揚して接岸作業中の護衛艦あぶくま
    宇宙・航空

    実はこっちが元祖! 港を知り尽くした海の「パイロット(水先人)」とは

  • 宇宙・航空

    室屋義秀 福島県内で応援フライト「Fly for ALL #大空を見上げよう」を…

  • 宇宙・航空

    陸上自衛隊最大の航空科部隊が空を舞う!木更津駐屯地航空祭2019

  • 宇宙・航空

    イギリス空軍レッドアローズ北アメリカツアー アメリカ空軍とニューヨーク上空で共演…

  • 宇宙・航空

    フランス空軍ラファール・ソロディスプレイ 10周年記念の新塗装を公開

  • 宇宙・航空

    アメリカ海兵隊に初の女性F-35Bパイロット誕生 山口県の岩国基地に配属

  • 宇宙・航空

    室屋義秀「ガルパンの聖地」大洗のビーチで初のエアショウ

  • 宇宙・航空

    参謀総長自らGを体験! イギリス空軍の最新高G訓練センター開所式

  • 宇宙・航空

    史上初!アメリカ海軍女性パイロットのみによる先輩女性パイロットの追悼飛行

  • 宇宙・航空

    アメリカ空軍に初の女性F-35テストパイロット誕生!

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)
    エンタメ, 映画

    仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

  • アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation
    ゲーム, ホビー・グッズ

    あの起動音が再び 「アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation…

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト