おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】220回 わたしは萌/立原あゆみ

TACHIHARA_AYUMI_03 「うちの本棚」、今回は立原あゆみの『わたしは萌』を取り上げます。

 シリアスな内容の短編集で、立原あゆみの初期作品集としては一番のオススメと言っていいでしょう。

  • 【関連:219回 いけない草の町子/立原あゆみ】

    TACHIHARA_AYUMI_03

    「セブンティーンコミックス」から刊行された立原あゆみの単行本2冊目。本書にも切ない物語が収録されている。
    とはいえ愛を描くばかりではなく、死や罪と向き合う人物が描かれているところは、それまでの作品とは違っているかもしれない。恋愛ストーリーからより広い人間ドラマを扱うようになったという印象だ。

     また短編という特性を活かしてラストで読者の胸をぐっとつかむ演出も多い。さらに、全体的に画面構成もコマ割りをしない1ページや見開きを多用するようになっていて、少女漫画的な演出が目立ってもいる。
    中でも印象に残るのが表題作でもある『わたしは萌』だ。端的にいうと娼婦モノであり、ソフトな描写とはいえベッドシーンもあるので、75年当時の少女漫画誌にこの作品が掲載され、それを読んだ読者の反応はどうだったのだろうかと気になる。またそのラストシーンもなかなかに胸を締めつけるようなものだった。

     本書が発行された時期は『ふたりの回転木馬』とほぼ同時で、このころから立原の評価が高まっていったと思える。もっともシリアスな印象の初期の作品に比べ、コメディ調の作品が多くなっていくのもこの頃、70年代終わりごろからでもあった。

    初出:わたしは萌/集英社「月刊セブンティーン」1975年7月号、よみびとしらず/集英社「月刊セブンティーン」1976年2月号、かわいそうなぞう/集英社「週刊セブンティーン」1976年9号、カナリヤは歌わない/集英社「月刊セブンティーン」1976年6月号、うみどり/集英社「月刊セブンティーン」1976年10月号、冒険時代/集英社「月刊セブンティーン」1977年1月号

    書 名/わたしは萌
    著者名/立原あゆみ
    出版元/集英社
    判 型/新書判
    定 価/320円
    シリーズ名/セブンティーンコミックス
    初版発行日/1978年1月10日
    収録作品/わたしは萌、よみびとしらず、かわいそうなぞう、カナリヤは歌わない、うみどり、冒険時代

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • ニュース・話題

    立原あゆみの極道漫画『JINGI』シリーズついに完結 29年の歴史に幕

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】219回 いけない草の町子/立原あゆみ

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】218回 ふたりの回転木馬/立原あゆみ

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんの公式X

      アインシュタイン稲田の“潔白”が証明された日 暴露文化とSNS拡散が残したもの

      お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんのInstagramが不正にログインされ、卑猥なやり取り…
    2. 【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      ホラーイベント「笑える事故物件 笑えない事故物件」公式グッズの体験型キット「落とし物:黒い封筒」を体…
    3. 丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      焼き肉チェーンの牛角は9月4日より、サンマを丸ごと一尾のせた「牛角流秋刀魚ラーメン」を販売しています…

    編集部おすすめ

    1. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    2. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    3. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    4. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    5. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト