「うちの本棚」、今回ご紹介するのは立原あゆみの『いけない草の町子』です。胸がチクリと痛むような恋愛ストーリーを集めた短編集で、立原あゆみの実力を実感する一冊です。
本書は立原あゆみの最初の単行本、のはずである。
75年から77年にかけて、立原は「セブンティーン」の常連作家であったらしく、本書収録の作品のほか、単行本『わたしは萌』にその辺りの作品がまとめられている。
「セブンティーン」はそのタイトルが表しているように17歳前後の少女読者を対象にしていたはずだが、実際のところ20歳前後の読者に向けたと思われる作品が多い印象が強かった。立原の作品もそういうイメージを強くするかのように、ちょっと胸が痛くなるようなストーリーを多く描いていた。
立原はあすなひろしの影響を受けていたというが、本書に収録された作品の扉ページなどを見るとそれは納得させられる。また内田善美にも通じる雰囲気もあり、あすなひろしから内田善美へと連なる少女漫画の一流派という見方も出来そうな気がしてくる。
収録された作品はすべて愛がテーマだ。いわれのない差別や偏見などを扱っているエピソードもあるが(『いけない草の町子』では主人公の母がストリッパーであることから転向した学校で「不潔」と仲間外れにされたり、『ウェディング・イブ』では水商売をしていた過去を現在の恋人に知られたら、関係が終わると恐れる主人公が描かれる)、それも主人公の愛を強調するためのもの。言ってしまえばドロドロな恋愛ストーリーだったりするのだが、こういった作品をコンスタントに描く作家が案外少なかったのかもしれない。
さすがに時代を感じずにはいられないところではあるが、登場人物たちのピュアな恋愛感情というのは、時代が変わっても不変なものだろう。なかなか入手の難しいものかもしれないが、機会があればぜひご一読を。
初出:いけない草の町子/集英社「週刊セブンティーン」1976年36号~40号、赤ちゃんの神話/集英社「月刊セブンティーン」1975年10月号、夏立ちぬ/集英社「週刊セブンティーン」1975年24号、ウェディング・イブ/集英社「週刊セブンティーン」1975年48号、微笑/集英社「月刊セブンティーン」1975年12月号
書 名/いけない草の町子
著者名/立原あゆみ
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/セブンティーンコミックス
初版発行日/1976年7月10日
収録作品/いけない草の町子、赤ちゃんの神話、夏立ちぬ、ウェディング・イブ、微笑
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)