おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】219回 いけない草の町子/立原あゆみ

TACHIHARA_AYUMI_02 「うちの本棚」、今回ご紹介するのは立原あゆみの『いけない草の町子』です。胸がチクリと痛むような恋愛ストーリーを集めた短編集で、立原あゆみの実力を実感する一冊です。

  • 【関連:218回 ふたりの回転木馬/立原あゆみ】

    TACHIHARA_AYUMI_02

     本書は立原あゆみの最初の単行本、のはずである。
    75年から77年にかけて、立原は「セブンティーン」の常連作家であったらしく、本書収録の作品のほか、単行本『わたしは萌』にその辺りの作品がまとめられている。
    「セブンティーン」はそのタイトルが表しているように17歳前後の少女読者を対象にしていたはずだが、実際のところ20歳前後の読者に向けたと思われる作品が多い印象が強かった。立原の作品もそういうイメージを強くするかのように、ちょっと胸が痛くなるようなストーリーを多く描いていた。

     立原はあすなひろしの影響を受けていたというが、本書に収録された作品の扉ページなどを見るとそれは納得させられる。また内田善美にも通じる雰囲気もあり、あすなひろしから内田善美へと連なる少女漫画の一流派という見方も出来そうな気がしてくる。

     収録された作品はすべて愛がテーマだ。いわれのない差別や偏見などを扱っているエピソードもあるが(『いけない草の町子』では主人公の母がストリッパーであることから転向した学校で「不潔」と仲間外れにされたり、『ウェディング・イブ』では水商売をしていた過去を現在の恋人に知られたら、関係が終わると恐れる主人公が描かれる)、それも主人公の愛を強調するためのもの。言ってしまえばドロドロな恋愛ストーリーだったりするのだが、こういった作品をコンスタントに描く作家が案外少なかったのかもしれない。

     さすがに時代を感じずにはいられないところではあるが、登場人物たちのピュアな恋愛感情というのは、時代が変わっても不変なものだろう。なかなか入手の難しいものかもしれないが、機会があればぜひご一読を。

    初出:いけない草の町子/集英社「週刊セブンティーン」1976年36号~40号、赤ちゃんの神話/集英社「月刊セブンティーン」1975年10月号、夏立ちぬ/集英社「週刊セブンティーン」1975年24号、ウェディング・イブ/集英社「週刊セブンティーン」1975年48号、微笑/集英社「月刊セブンティーン」1975年12月号

    書 名/いけない草の町子
    著者名/立原あゆみ
    出版元/集英社
    判 型/新書判
    定 価/320円
    シリーズ名/セブンティーンコミックス
    初版発行日/1976年7月10日
    収録作品/いけない草の町子、赤ちゃんの神話、夏立ちぬ、ウェディング・イブ、微笑

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • ニュース・話題

    立原あゆみの極道漫画『JINGI』シリーズついに完結 29年の歴史に幕

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】220回 わたしは萌/立原あゆみ

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】218回 ふたりの回転木馬/立原あゆみ

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「ぷっくりシール難民」に救いの手 コニシ公式が教える「ボンド活用術」を試してみた

      「ぷっくりシール難民」に救いの手 コニシ公式が教える「ボンド活用術」を試してみた

      近頃、子どもたちの間で大流行中の「ぷっくりシール」。なかなか手に入らず、涙をのんだお子さん(と、探し…
    2. 人気ゲームを名乗るDMの正体 Xで起きたアカウント乗っ取り被害の実例

      人気ゲームを名乗るDMの正体 Xで起きたアカウント乗っ取り被害の実例

      知らないうちに、詐欺DMの「送り主」になってしまう……。Xではいま、アカウントが乗っ取られ、当選詐欺…
    3. リュウジさんの「限界チキンラーメン雑炊」を実食 「嘘みたいに絶賛」の味は伊達じゃなかった

      リュウジさんの「限界チキンラーメン雑炊」を実食 「嘘みたいに絶賛」の味は伊達じゃなかった

      料理研究家のリュウジさんが、自身のXで自信満々に紹介した新レシピ「限界チキンラーメン雑炊」。やる気0…

    編集部おすすめ

    1. 企業を狙う「社長なりすまし詐欺」 ベルトラ子会社で約5000万円被害

      企業を狙う「社長なりすまし詐欺」 ベルトラ子会社で約5000万円被害

      旅の体験予約サイト「VELTRA」を運営するベルトラは2月6日、子会社で悪意ある第三者による虚偽の送金指示を受け、約5000万円の資金が流出…
    2. AIコントロール画面

      Firefox、AI機能多すぎ問題に対応 一か所で設定管理「AIコントロール」実装

      Mozillaは現地時間の2月2日、デスクトップ版「Firefox」において、AI機能の利用をまとめて管理できる新機能「AIコントロール」を…
    3. 家⾕家家族写真

      香取慎吾主演で「高校生家族」実写映画化 家族全員が高校生になる青春コメディ

      週刊少年ジャンプで連載された人気ギャグ漫画「高校生家族」の、実写映画化が2月3日に発表されました。主演を務めるのは香取慎吾さん。映画「高校生…
    4. 「宿儺の指チャーシュー」(1000円~)

      食べられる特級呪物 神座が「宿儺の指」をチャーシューで完全再現

      ラーメンチェーン「どうとんぼり神座」が、とんでもない再現度のメニューを投入します。2月25日スタートの、テレビアニメ「呪術廻戦」とのコラボレ…
    5. ビジュアル図鑑 錬金術の歴史

      厨二心くすぐる「錬金術」図鑑が登場 豊富な図版で迫る禁断の知の歴史

      河出書房新社より、“厨二心”をくすぐる「錬金術」をテーマにした新刊「ビジュアル図鑑 錬金術の歴史」が、2026年2月25日に発売されます。A…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト