おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】225回 夏からの手紙/田渕由美子

夏からの手紙 「うちの本棚」、今回取り上げるのは田渕由美子の『夏からの手紙』。収録作品すべての主な登場人物が大学生という設定となって、作画面でも変化がみられる一冊です。

  • 【関連:224回 林檎ものがたり/田渕由美子】

    夏からの手紙

     「りぼんマスコットコミックス」の田渕由美子傑作集、第5巻。カバー裏表紙の折り返しには「キャンパス・ロマン」の表記もある。というのも収録された作品すべての登場人物たちが大学生なのだ。表題作の『夏からの手紙』は中学生時代に話が始まり、高校3年間はサラッとすっ飛ばして大学生になってから本格的なストーリーが展開するというもの。この登場人物の年齢設定にも関連しているのだと思われるが、作者も絵柄に変化をつけようとしている雰囲気が感じられる。とはいえ基本的に初期から続く内向的な性格や勘違い・すれ違いのストーリーというのは変わっていないので、逆に違和感も出てきてしまうという部分はある。

     傑作集4『林檎ものがたり』で巻末に収録されていた『菜の花キャベツがささやいて』がそれまでの田渕作品全体のその後を描いたような作品であることを考えると、そこで一端気持ちを切り換えていたのかもしれない。「まゆこ」のような決まって登場する主人公の友達や髭面の男子といった「おなじみの顔」も敢えて描いていないと思われる(似てるけど明らかに描き方を変えているという印象)。これは『あなたに…』に登場する綱ちゃんという登場人物に顕著で、それまでの田渕作品にはみられなかったキャラクターだ。また『雨の糸をつむいで』『百日目のひゃくにちそう』に登場する男子もそれまで描かれてきた男性主人公とは違う性格に思える。

     こういった変化は作家としては当然だし、ファンや読者も一般的には受け入れていくものだと思うが、田渕作品に関して言うならば、中学・高校生を主人公にしたピュアな恋愛物語のままであった方がよかったような気がしないでもない。少なくとも個人的にはこの『夏からの手紙』以降田渕作品にはあまり関心を持たなくなってしまった。
     読者の成長に合わせて登場人物の年齢も上がったのであれば、その恋愛内容も変化していかなければ共感はえられなかったのではないかと思う。もちろんそれは作者だけの問題ではなく「りぼん」という発表媒体の問題もあったのだとは思うが…。

     『百日目のひゃくにちそう』のラストシーン(ストーリーではなくビジュアル)も、それまでの作品とはちょっと違っていて、妙に印象に残る。このラストのワンカットが田渕の変化の現れだったのかもしれない。

    初出:夏からの手紙/集英社「りぼん」昭和54年8月号、あなたに…/集英社「りぼん」昭和53年4月号、雨の糸をつむいで/集英社「りぼん」昭和53年6月号、百日目のひゃくにちそう/集英社「りぼん」昭和53年9月号

    書 名/夏からの手紙
    著者名/田渕由美子
    出版元/集英社
    判 型/新書判
    定 価/340円
    シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
    初版発行日/1980年7月20日
    収録作品/夏からの手紙、あなたに…、雨の糸をつむいで、百日目のひゃくにちそう

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】226回 あのころの風景/田渕由美子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】224回 林檎ものがたり/田渕由美子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】223回 フランス窓便り/田渕由美子

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】221回 雪やこんこん/田渕由美子

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 甘いの?しょっぱいの?1日20食限定の「チョコレート味噌ラーメン」が唯一無二の体験だった

      甘いの?しょっぱいの?1日20食限定の「チョコレート味噌ラーメン」が唯一無二の体験だった

      都内に6店舗を構えるラーメン店グループ「ソラノイロ」は、2月11日から「そらのいろ 銀座本店」にて1…
    2. 鳥羽周作シェフおすすめの「ペヤング」アレンジを実践 溶き卵につけるだけで劇的変化が!?

      鳥羽周作シェフおすすめの「ペヤング」アレンジを実践 溶き卵につけるだけで劇的変化が!?

      料理人の鳥羽周作さんが、自身のXで驚きのアレンジを紹介しました。その名も「とんでもなく簡単に最高の飲…
    3. ゲーマー御用達Discord、ちょっと本気を出す ティーン向け安全設定が強めに

      ゲーマー御用達Discord、ちょっと本気を出す ティーン向け安全設定が強めに

      ゲーム好きにはおなじみのコミュニケーションサービス「Discord(ディスコード)」が2月9日、未成…

    編集部おすすめ

    1. 「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」メインビジュアル

      映画ドラえもん新作、災害描写の注意喚起 「地震を描くシーンがございます」

      東宝系で2月27日に公開される「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」について、映画ドラえもん【公式】Xアカウント(@doraeiga)が…
    2. Dock3離陸

      夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残る課題

      一般社団法人Japan Innovation Challenge(JIC)は2月10日、北海道富良野スキー場で1月に発生したバックカントリー…
    3. 「手のひらネットワーク機器」第4弾

      カプセルトイなのに本格派 「手のひらネットワーク機器」第4弾が登場

      カプセルトイでありながら本格的すぎると話題を集めている「手のひらネットワーク機器」シリーズから、第4弾が登場します。2026年6月中旬より、…
    4. 新システムは「横丁手形-ヨコパス-」

      クレーンゲーム革命!LINEで即プレイできる「ヨコパス」始動 船橋に誕生する「クレーン横丁 極」からスタート

      両替もカードも不要、LINEひとつで遊びから景品交換まで完結するクレーンゲームの新しい仕組みが、千葉県船橋市の「クレーン横丁 極(きわみ)」…
    5. 企業を狙う「社長なりすまし詐欺」 ベルトラ子会社で約5000万円被害

      企業を狙う「社長なりすまし詐欺」 ベルトラ子会社で約5000万円被害

      旅の体験予約サイト「VELTRA」を運営するベルトラは2月6日、子会社で悪意ある第三者による虚偽の送金指示を受け、約5000万円の資金が流出…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト