サンスター文具が主宰する「第21回 文房具アイデアコンテスト」。今年の審査結果が発表され、5月29日に東京国際フォーラムで表彰式が行われました。
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今回で21回目となる、文具業界で最も伝統あるコンテストです。一般部門のほか、中学生(15歳)以下を対象としたジュニア部門があり、今年は一般部門が「ととのえる」、ジュニア部門は「A.ペンケース・筆箱/B.国語、算数、理科、社会、図工/C.『ととのえる』で考えてみよう」のいずれかをテーマに、一般や業界関係者から広く作品を募集していました。それぞれ1作品ずつが選ばれる大賞は、一般部門が賞金100万円、ジュニア部門は商品券10万円分と副賞が授与されます。
このコンテスト、文房具の専門的な知識やデザインなどの技術がなくても「良いアイデア」であればOK、という非常に懐の深いもので、誰でも気軽に応募できるというのが特徴。しかも個人だけでなく、グループでの応募も可能です。
直接的な商品化が目的ではなく、文房具の可能性を感じさせる「斬新なアイデア」を見せてもらうことがテーマとなっているため、実際の商品化が難しいものでも大賞を狙えます。いわゆる「アイデア一発勝負」なので、普段文房具を使っている上で浮かんだ夢や思いつきが、そのまま応募作品になりうるんですね。
さて、今回のテーマである「ととのえる」。これは身の回りを片付けることや、整理整頓するという物理的な意味だけではなく、想いや考え、対人関係や将来のことなど、様々な意味での「ととのえる」ことを想定した、非常に間口の広いものとなっていました。
2015年11月1日~2016年1月31日の期間で集まった作品は、一般部門2646点、ジュニア部門1317点の計3963点。プロダクトデザイナーの安次富隆さん、タレントのだいたひかるさん、マルチクリエイティブ会社の(有)ザリガニワークス、『Discover Japan』編集長の高橋俊宏さんという顔ぶれの審査員により、大賞を含む20作品(一般部門:11作品・ジュニア部門:9作品)が受賞しました。
注目のグランプリ、一般部門はケースにしまうたびに形が「ととのえ」られる練り消しゴム「RAKUGAN」。会社員の小池峻さん、紙谷彩さん、松井健郎さんの3人グループによる作品です。練り消しゴムは自在に形が変えられる反面、使い終わった姿はいつもグネグネして、あまり美しい形ではありませんでした。この「RAKUGAN」は、シリコン製のケースがお菓子の落雁に使われる型のようになっており、中に練り消しゴムを入れてフタを閉めると、自然と元の美しい形になってくれるというもの。また、甘い香りもつけ、また使いたくなるような工夫もされています。
受賞者の小池さんは「去年、一昨年も応募していまして、(その時は)採用されなかったのですが、諦めずに提出して、たくさんの素晴らしい作品の中でグランプリをいただくことができ、とても嬉しく思います」とコメント。
紙谷さんは、女性らしい作品ではないか、という質問に「作品が女性らしいのですが、発案者は小池くんで(笑)」と回答。3人は大学時代からの友人だそうで「3人でアイデアを持ち寄ってブレスト(ブレーンストーミング)をして考えました。(小池さんから)アイデアを聞いた瞬間に私たちもすごくいいアイデアだと思いました」と、気心の知れた関係であることを思わせるコメント。
松井さんは、この作品に込めたこだわりについて「テーマが『ととのえる』ということだったので、理屈よりも、この作品で言えば形が整ってポコッと出た時の心地よさとか、感覚的なところを表現できれば」と考えていたことを明らかにしました。
気になる賞金100万円の使い道について訊かれた代表者の小池さんは「このような賞をいただけるとは思わなかったので、考えていません!」。来年の作品を考える資金にしては……という質問に「注ぎ込みます!」と笑顔でコメント。
ジュニア部門のグランプリは7歳の女の子、齋藤にこさん。液体のりの「困った!」を解消する作品『ぼたべたやっつけのり』が受賞作品です。横にして保管していたあとにフタをあけると「ぽたっ」と液体のりが飛び出すトラブルを解消するために考えられました。内部にのりをせき止める開閉式のフタを設け、横倒しにしていてもふたの内側にのりが広がらない工夫が施されています。
司会者に今の気持ちを問われて「うれしいです!」と元気にコメントしたしたにこさん。授賞式の雰囲気に緊張したのか、それともはにかみ屋さんなのか、その後は言葉がなかったのですが、名前を体現したかのようなニコニコした笑顔からは、嬉しそうな様子が伝わってきました。会場には岡山県からご家族のみなさんが応援に駆けつけ、あたたかいムード。なお、全受賞作品は公式サイトで紹介されています。
今回の受賞作品の中では、一般部門のサンスター文具賞受賞作、楊子卓さんの「まとめやすいノート」が商品化に向け検討中とのこと。2色に分かれたノートで、上部に検討中のメモなどを書きとめ、まとまった結果を色違いの下部に書くことで、アイデアとまとめが整理された状態になるというもの。色の境界にはミシン目があり、ノートを使い終わったら2つに分離し、メモをもとにまとめた重要なものだけを整理することも可能です。
デザインや文房具の素人でも「アイデアひとつ」で気軽に応募できる、サンスター文具の文房具アイデアコンテスト。まだ次回の募集要項(テーマ・応募期間)は発表されていませんが、みなさんも普段文房具を使っている時に気になった、ちょっとしたアイデアを書きとめておいて、応募してみてはいかがでしょうか。何気ないところにヒントが隠れてるかもしれませんよ。