自衛隊の駐屯地祭や航空祭、各種広報イベントが各地で開催されるシーズンになりました。各種装備品もさることながら、現役の自衛官と色々な話をすることを楽しみにしている人も多いことでしょう。その内容をSNSにアップしているのを見かけることもあります。でもちょっと待って。それに「自衛隊の秘密」は入っていませんか?

自衛隊には、装備品の性能や部隊運用上の規定、部隊の行動予定など、様々な「秘密」が存在します。自衛隊に入隊して所定の教育を受けると、それぞれに「防衛秘密取扱適格者証」というものが交付されます。これは自衛隊法別表第四に指定された「防衛秘密」に触れることが許された証であり、いわば「一人前の自衛官」として認められたということでもあります。自衛隊法には、このような規定があります。

自衛隊法第59条
隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする。
隊員が法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合には、防衛大臣の許可を受けなければならない。その職を離れた後も、同様とする。

自衛隊員は退職後も、一生「秘密」を守り続けなくてはならないのです。

さて、その「秘密」とは。自衛隊法別表第四には、以下のものが挙げられています。

一 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究
二 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報
三 前号に掲げる情報の収集整理又はその能力
四 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究
五 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物(船舶を含む。第八号及び第九号において同じ。)の種類又は数量
六 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法
七 防衛の用に供する暗号
八 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法
九 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法
十 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(第六号に掲げるものを除く。)

これらを外部の人間に漏らすと、当該の自衛隊員は自衛隊法第118条の規定により、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられます。

ですので、たとえこれらの秘密を「聞けちゃった」としても、誰から聞いたか明らかにしてしまうと、その自衛隊員が罰せられてしまうので、うかつに公開してはいけません。筆者などは自衛隊の取材をする際、申請時に個人情報を自衛隊情報保全隊(自衛隊で各種情報保全業務を行う一種の防諜部隊)に登録しており、同じように秘密をうかつに漏らしたりしないよう、気を使って記事を書いています。

また、展示された装備品を触って動かせる場合もありますが、この時も気をつける点があります。

自衛隊法第121条
自衛隊の所有し、または使用する武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物を損壊し、又は傷害した者は、五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

基本的に丈夫にできているものではありますが、壊してしまうとこのような罰則がありますので、手を触れる際は気をつけてください。

これらのことを守りさえすれば、自衛隊の広報イベントは楽しいものです。自衛隊側も、国民の皆さんに活動を理解してもらい、親しみを持ってもらえるよう、様々な努力をしています。機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。

(咲村珠樹 / 画像・咲村珠樹撮影)