おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

航空自衛隊U-4の後継機となるか? ガルフストリームG500がアメリカの型式証明を取得

 2018年7月20日(現地時間)、航空機メーカーのガルフストリーム・エアロスペースは、現在開発中の新型ビジネスジェット機、ガルフストリームG500の型式証明と製造証明の両方をアメリカ連邦航空局(FAA)から取得したと発表しました。G500は航空自衛隊のU-4多用途支援機などで知られる、2002年に製造終了したガルフストリームIVや、改良型であるG450の後継機です。

  •  G500は全長27.79m、全幅26.30mで、ビジネスジェット機では大型で長距離を飛べる機体。胴体後部にプラット&ホイットニー・カナダPW814GAを2基搭載した双発機です。客室部分の全長は14.5m(荷物室抜きで12.65m)、幅2.41m、高さ1.93mと、大型機らしくゆとりある室内を誇ります。最大定員は、座った状態で19人、ベッドを使用できる状態では8人となります。

     コクピットは最新のデジタル制御のフライ・バイ・ワイヤ操縦システム「インテリジェンス・バイ・ワイヤ」が搭載されており、タッチスクリーンの計器や、コンピューター制御で巡航中のオートパイロットだけでなく、状況に応じてエンジンの性能をフルに発揮するオートスロットルや、着陸時に連動するオートブレーキシステムにより、パイロットの操作に関わるストレスを低減しています。また、コンピュータで機体の状態を自己診断するシステムをビジネスジェットで初めて搭載し、整備の負担も従来機より軽くなっています。

     実用最大航続距離は9630km(マッハ0.85で乗員3名乗員8名時)。最大速度はマッハ0.925で実用最大上昇限度は1万5545mとなっています。離陸滑走距離は1585m、着陸距離は945m。試験飛行の一環で世界一周を行い、その間に2地点間飛行における速度記録を22も樹立しています。

     航空自衛隊は1995年以降、ガルフストリームIVを「U-4多用途支援機」として5機取得し、入間基地の中部航空方面隊司令部支援飛行隊と、航空支援集団の第2輸送航空隊第402飛行隊で運用しています。首相をはじめとした閣僚が国内を移動する際に使用することもあり、先日も西日本豪雨の被災地視察で安倍首相が入間基地と被災地までの往復に搭乗しました。

     しかし導入から20年余り、2002年の製造終了からも16年が経過しており、改良型となったG450も2018年1月に最終号機の納入を終えているため、これからは部品在庫の払底などが心配されます。また、先日河野太郎外相が発言した「外交交渉のために、機動的に使える小型の政府専用機が欲しい」という点でも、U-4の航続距離は少々物足りません。

     G500の最大航続距離である9630kmは、東京から太平洋を横断してロサンゼルスやシアトルに余裕をもって到達できる距離ですし、中東を除くアジア地域はもちろん、オーストラリアまでも十分カバーできる性能です。U-4の老朽化が進みつつある現在、後継となる多用途支援機を選定する場合、このG500や間もなくFAAの型式証明が取得できる、より航続距離の長いG600(最大航続距離1万2038km)は有力な候補となりえます。

    G500(手前)とG600(奥)(Image:Gulfstream)

    G500(手前)とG600(奥)(Image:Gulfstream)

     ガルフストリーム・エアロスペースによると、初号機の顧客引き渡しは2018年の第4四半期(10月~12月)を予定しているとのことです。

    Image:Gulfstream Aerospace Inc.

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 航空自衛隊のC-130Hを敬礼で見送るサンタ(画像:USAF)
    宇宙・航空

    航空自衛隊C-130が参加 人道支援任務「クリスマス・ドロップ作戦」

  • ダーウィンに到着した航空自衛隊のF-2A(画像:Commonwealth of Australia)
    宇宙・航空

    空自F-2が初参加 オーストラリアで17か国参加の共同訓練「ピッチ・ブラック」

  • 取り決め書にサインした井筒航空幕僚長(右)とイタリアのアニャレッリ海軍大佐(画像:イタリア空軍)
    宇宙・航空

    航空自衛隊がイタリア空軍への戦闘機パイロット委託教育で合意

  • 僚機のKC-46Aに空中給油する航空自衛隊向けKC-46A(Image:Boeing)
    宇宙・航空

    航空自衛隊向けKC-46A 1号機が初の空中給油試験を実施

  • 「レッドフラッグ・アラスカ21-2」のブリーフィングに参加する航空自衛隊のパイロット(Image:USAF)
    宇宙・航空

    航空自衛隊F-15 日米共同訓練「レッドフラッグ・アラスカ」に参加

  • グアム島アンダーセン空軍基地に到着したB-52H(Image:USAF)
    宇宙・航空

    アメリカ空軍B-52爆撃機がグアムに進出 インド太平洋に睨みをきかす

  • グアムに到着した第96爆撃飛行隊のB-52H(Image:USAF)
    宇宙・航空

    アメリカ空軍B-52が4機グアムに展開 航空自衛隊とも訓練予定

  • 宇宙・航空

    航空自衛隊もプレゼントを投下 恒例の「クリスマス・ドロップ作戦」始まる

  • 宇宙・航空

    航空自衛隊戦闘機 アメリカ空軍爆撃機と共同訓練

  • 宇宙・航空

    アメリカ空軍爆撃機と航空自衛隊戦闘機が共同訓練 依然月2回ペースを維持

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト