アメリカの航空機メーカー「アエリオン」が、同社で開発中の超音速ビジネス機における技術者らを募集するため、9月21日にロサンゼルスで大規模な求人イベントを開催することになりました。皆さん、超音速機の開発計画に参加するチャンスですよ!

 アエリオンは、世界最速のプロペラ機などが各クラスに分かれて最速を競う「エアレース全米選手権」で有名なネバダ州リノにある航空機メーカー。超音速ビジネス機、エアリオンAS2の開発プロジェクトを、エンジンを供給するGEや、世界最速の実用ジェット機SR-71を開発したロッキード・マーティンと共同で進めています。

 開発中のアエリオンAS2は、世界初の超音速ビジネスジェット機。全長51.8m、全幅23.5m、全高6.7mという大きさです。最大12人の乗客を乗せて最高速度マッハ1.5、巡航速度マッハ1.4で飛行する性能を有し、現在コンコルドの最終飛行から20年後となる2023年の初飛行と同年10月の大西洋横断超音速飛行、そして2025年の型式証明取得を目指しています。




 機首は、新幹線N700系やE5系、E6系を長く引き伸ばしたような形状になっています。この形状は断面積を一定の割合で変化させるために、超音速飛行につきもののソニックブーム発生を低減します。新幹線の車両は、トンネルに入る際の気圧変化でトンネル出口から大きな音の出る「トンネル微気圧波」を低減するために考え出された形状ですが、発生の原理は超音速飛行時のソニックブームに類似しているので、似た形状になっているというわけです。アエリオンAS2の場合、マッハ1.1~1.2の速度域ではソニックブームが地表面に到達する前に消えてしまうため、コンコルドでは禁止されていたアメリカ上空での超音速飛行を可能とする予定です。

ニューヨーク上空を飛ぶAS2の想像図(2017年12月現在)

ニューヨーク上空を飛ぶAS2の想像図(2017年12月現在)

 エンジンは、F-104を思わせる短い直線翼の主翼根元と垂直尾翼の下部に計3基搭載予定。これはボーイング737-400やエアバスA320などをはじめとした多くの旅客機に採用されているCFM56の圧縮段から高圧タービン部までをベースにして、新たに設計される低圧タービン部と組み合わせたものになり、F-15やF-16のエンジンであるF110や、B-2のエンジンであるF118に近いものになるようです。ソニックブームを除いた飛行機の騒音は、エンジンが最高出力になる離陸時が一番大きいのですが、このエンジンはアメリカやイギリス、日本などで用いられている騒音基準に適合するように設計されます。

 さて、今回アエリオンが募集しているのは、このプログラムのディレクターや主任設計技師といった、計画の最重要部を任せられる能力を有する技術者。航空機設計における高い能力と経験が要求されます。また、コンピューター関連や計画推進を担うビジネス関係の実務者も合わせて募集しています。

 「我々は、クリエイティブでキラリと光る才能を持ち、情熱を持って計画をともに推進する開拓者精神を持つ方を求めています」と、アエリオンのCOOトム・バイス氏は語っています。

 アエリオンでは特設サイトでこれらの求人情報を公開しています。こちらでは2018年9月21日にロサンゼルスで開催される求人イベントの参加登録も受け付けているので、超音速機の開発に参加したい!と思う方は、ぜひご覧になることをお勧めします。どうやら応募者の国籍も問わないみたいですよ。

Image:Aerion Supersonic

(咲村珠樹)