2019年1月30日(アメリカ中部時間)、オランダ空軍はテキサス州フォートワースにあるロッキード・マーティンの事業所で、実戦モデルとしては初となるF-35Aを受領し、記念式典を開催しました。実はオランダ空軍、これまでに2機のF-35Aを受領していますが、これまで受領に際して式典を行なっていませんでした。どうしてなのでしょうか。

 オランダ空軍が受領したF-35Aは、これが3機目。しかし今回初めて受領式典を行なったのです。これにはちょっとした事情があります。2013年に最初の2機を受領した時点ては、オランダ空軍内でどのようなミッションパッケージにするのか、詳細が決定していませんでした。このため、これまで納入された2機のF-35Aには兵装システムが搭載されておらず、ある意味「操縦訓練機」のような状態で引き渡されていたのです。

2013年に受領したオランダ空軍のF-35A初号機と2号機(画像:オランダ国防省)

 F-35は卓越したセンサーやレーダー、そしてデータリンク機器を持ち、様々な兵装を高度に操ることのできるシステム兵器。このため、これまでの戦闘機とは異なり、導入する側には「どのように使うか」という要求項目を使用する兵装に合わせて決定する必要があるのです。オランダではその取りまとめが遅れ、初号機や2号機の納入までに間に合いませんでした。そんな理由もあり、最初に受領した2機はパイロット養成用という形で使い、のちに実戦に即した装備を搭載するという方法がとられたのです。なんとなく、華々しい式典を開かなかった理由も察することができますね。

オランダ空軍初の実戦型F-35A(取得3号機)(画像:オランダ国防省)


 しかし今回受領した3号機は、初めて実戦装備を搭載したF-35A。最初に受領した2機でできなかった分、式典は華々しいものとなりました。式典の音楽はオランダを代表するEDMデュオ、サナリー・ジェームス&ライアン・マルシアーノが担当。ベルギーで毎年開かれているヨーロッパ最大級のDJフェス「Tomorrowlamd」でも大人気のアーティストです。過去にはオランダ海軍の潜水艦にDJセットを持ち込み、海中でプレイしたことも。今回はオランダ空軍音楽隊とコラボしました。

 もちろん、華やかな音楽だけでなく、厳粛なスピーチも。オランダ空軍参謀長のデニス・リュイト大将(元F-16パイロット)は「今年、レーワルデン基地にF-35を迎えることになりますが、これは我々空軍にとって、現在進めている変革をさらに後押しする存在となり、大きなインパクトをもたらすでしょう」と語り、2019年末に予定されている、オランダ本国への到着を心待ちにする気持ちを明らかにしています。

 オランダ空軍では、すでに受領している2機のF-35Aを使い、アメリカのエドワーズ空軍基地などで機種転換訓練を行なっています。2016年にはオランダ国内へ一度お目見えを果たしており、オランダ空軍としては国内運用が始まるのを楽しみにしているようです。




オランダのマーストリヒト上空を飛ぶF-35A(画像:オランダ国防省)

 ロッキード・マーティンでは、2019年中にフォートワースで製造したF-35Aを5機納入予定。このほかに、イタリアのカメリで製造されたF-35Aも2機納入される予定になっており、2019年末にはオランダ空軍は10機のF-35Aを手にすることになります。オランダ空軍では合計で37機のF-35Aを受領する予定です。

Image:Lockheed Martinオランダ国防省

(咲村珠樹)