アポロ11号が人類初の月面着陸を果たして、2019年でちょうど50年。これにあわせて、アポロ11号に関する映画が複数公開されるなど、月への関心が高まっています。次の世代を担う子供たちに、月や宇宙開発に関心を持ってもらおうと、グリー株式会社と株式会社TBSテレビがJAXAなどの協力のもと、東京にある遊園地よみうりランドで体験型のワークショップ「月面キッズキャンプ」を3月25日から開催しています。3月27日にメディア取材デーが設けられたので、その様子を見に行ってみました。

 よみうりランドで始まった「月面キッズキャンプ」は、よみうりランドと京王よみうりランド駅を結ぶゴンドラ(ロープウェイ)の乗り場に近いオーロラゲートから入場してすぐ、オーロラスペースで開催されています。入場料は600円(別途遊園地入場料がかかります)。

 中に入ると、VR(バーチャルリアリティ)を使って月で色々な実験を行う「ありえなLAB(ラボ)」4種類のワークショップ(1種類500円:4種類セット1300円の参加料が必要)のほか、各種展示や遊べるスペースが設けられています。この「ありえなLAB」を案内するキャラクターは、アリ・エーナイ博士。参加者はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)や様々なデバイスを使い、月の様子を体感します。



 ではまず、月の大きさを実感できる「月ロケットツアー」から。月の大きさはどれくらいなのか、宇宙船に乗って地球にある身近なものから、どんどんスケールアップして月の大きさを実感します。月の直径(約3500km)と、日本列島の長さ(約3000km)が結構近いというのは驚き。


 次に、月の重力を体験できる「月面シュート」へ。地球と月でボールを投げると、どんな違いがあるのかを実感できます。月の重力は地球の約6分の1。このため、同じ力でボールを投げると地球で投げるより遠くまで飛んで行ってしまいます(月には大気がないので厳密には空気抵抗による違いも存在しますが、子供向けにその計算は入っていません)。


 ここには月と地球の重力の違いを体験できる器具も。青いおもりの入った棒と銀色のおもりの入った棒、地球の重力を模した青いおもりの方はすぐに落ちてしまいますが、月の重力を模した銀色のおもりの方はゆっくりと落ちていきます。仕掛けとしては、おもりと棒との隙間が宇宙開発で使われるような精密加工技術で調整してあるのですが、大人はそちらの方にも注目すると面白いですよ。

 また、月に行った時の体重がわかる体重計も置かれていました。以前ネットで話題になったものですね。一般で販売されています。ちなみに、重力によって「重量」は変わりますが「質量」は変わりません。ですから同じ体重計でも、バネばかりや重量センサー(重量を測定する方法)を使った場合と、昔ながらのおもりを使ったはかり(質量を測定する方法)で測定した場合では、地球以外の重力環境では測定値に違いが出てくるのも覚えておくと面白いかも。

 月の環境のうち、重力の違いを知ったら、今度は表面の様子を体験できる「月面ドライブ」へ。月の表面は岩や石のほか、それが隕石の衝突などで細かく砕かれた「レゴリス」という砂でおおわれています。月には大気がないので、地球上で使われる空気が入ったゴムタイヤは破裂して使えません。月面を走るためには、どんな形状のものがいいのか様々な研究で考案されたものを使って、月面車でドライブしてみましょう。この地表面のデータには、JAXAの月探査機「かぐや(SELENE)」が観測したデータが使用されています。




 また、レゴリスと地球で見られる通常の砂との違いを知ることのできる、特別な砂時計も用意されています。月のレゴリスを模した砂と通常の砂では、砂時計の落ち方に違いがあります。サラサラ流れる砂に対し、レゴリスの表面は角ばって相互の粒が引っかかりやすいので、細かいのに落ち方が一定ではありません。

 地球から見ると神秘的な月の満ち欠け。どんな仕組みで起きているのかを知ることができる「月の形のミステリー」では、宇宙空間から見た月と地球、そして光源となる太陽の位置関係で、月がどのように照らされて、地球からはどのように見えるかがわかるようになっています。



 太陽と月の間に地球が入る位置に来た時、満月になるのですが、地球の陰で光が届かないんじゃないの?という疑問には、月の公転面が傾いているため、太陽の光が地球に遮られずに届くという、ちょっと専門的な天文学の知識も披露されるので、大人が見ても楽しめます。

 これらVRを使用した有料の「ありえなLAB」は、7歳以上が対象。それ以下の年齢だとVRで平衡感覚が狂って気分が悪くなる「VR酔い」を起こす危険があるので、3~6歳を対象にした比較的安全な体験コーナーも用意されています。こちらでは立体視ではなく、ひとつの画面をのぞく格好になっています。


 このほかにも、AR(拡張現実)を使った砂遊びスペース「月面で宝探し!」では、砂場に投影されたポイントを掘っていくと、深度センサーで一定の深さまで掘り進めたらアイテムが出てくるという宝探しが楽しめます。この深度センサー、宇宙探査機で表面のデコボコの状態を測定するのにも使われる技術でもあります。



 また、撮影コーナーでは「月面ドライブ」に登場したような月面車に乗って記念撮影することもできます。入り口では宇宙飛行士が身に着けるのとおそろいの飛行服「ブルースーツ」が着られるコーナーも。

 各コンテンツを巡るスタンプラリーも実施しており、コンプリートすると素敵な商品がもらえるそうですよ。

 開催に協力したJAXAの神谷岳志さんは「宇宙食の見本やロケットなどの模型、宇宙服の展示品のほか、かぐやで観測した月面のデータを提供したんですが、観測データそのままではVRの画像にはできないんです。非常に大変だろうなと思っていたのですが、グリーのスーパーエンジニアの皆さんが見事に月面の様子を再現してくれて、その仕事ぶりに驚きました」とコメント。また「お子さんが将来の夢として宇宙に興味を持ってくれることはもちろんですが、親御さんの方でも宇宙や月に関心を高めてもらえるような形にもなっているので、ぜひ親子で楽しんでほしいですね」と語ってくれました。





 ちょうどこの取材をした2019年3月27日、アメリカのトランプ大統領とペンス副大統領は、正式に再び人類を月へ5年以内に送り込む、という計画を発表しました。いよいよ人類が「月へ戻る」将来が明らかになってきた中、親子で月や宇宙を知ってみてはいかがでしょうか。

 よみうりランドの「月面キッズキャンプ」は、2019年3月25日~5月31日(4月23日のみ休館)、平日は開園から17時まで、休日は開園から18時まで開催しています。最終入場はそれぞれ終了時間の30分前までとなっています。

取材協力:グリー株式会社

(取材:咲村珠樹)