ピザを持ち上げた時にのびるチーズ、こんがりと焼かれたピザの耳……。そのクオリティーの高さに「糸でって言われなきゃ間違えて食べてしまいそうです」「本物のチーズみたい」「飯テロ ならぬ 糸テロか?」と、本物そっくりの見た目に惑わされた人も多いようです。

 この作品は、刺繍画家ipnotさんが作った刺繍作品。なんと23万件の「いいね」がつくほど話題を呼んでいました。

 ピザの刺繍は、フレンチノットステッチという技法が使われており、学校の家庭科の授業で初めに習う玉どめのように、針に糸を巻き付けて作る縫い方のことで、主に動物の目や木の実などを表現する時によく使われます。刺繍を始めて間もない人には難しく、綺麗な玉が作れずに苦手意識を持たれやすいステッチとか。

 ipnotさん曰く「私の刺繍では何粒も縫い重ねていくので綺麗に作らなければ!というプレッシャーなく縫い進めることができると思います」とのこと。しかし、刺繍画家のipnotさんでも、フレンチノットのみで刺繍をしようとすると制作に時間がかかるのでそこが障壁になるそうです。

 「凝ってしまうと一日中刺繍しても2cmほどしか進まなかったり。でも少しずつ粒を重ねて絵を描いていく、そこが楽しいところでもあります」とipnotさん。

 このピザには、50種類以上の刺繍糸を使っているそうで、写真や映像など様々なピザの素材を集めて参考にしながら、デザイン案に1か月、刺繍に1か月と計2か月の制作期間がかけられています。

 そして作品の中でもひと際目を引くチーズの部分。つづけて投稿された動画では、ピザのチーズにあたる刺繍が絶妙な色合いで表現され、とても美味しそうに見えたので、どのように本物に見えるように工夫されたのか聞いてみたところ、糸の色以外に光の種類や角度、持ち上げる速度を調節しつつ糸がチーズに見える瞬間を見つけていったとのこと。

 「糸感が出てしまうので様々なタイミングが大事です。その辺りは皆さんに想像して楽しんでいただければ嬉しいです」と撮影時の苦労を語って下さいました。

 実は「今回初めて大きなフレンチノット点描作品にトライしました」という、ipnotさん。今後は「更に大きな作品にも時間をかけて取り組んでみたいです。1年かけて作ったらどんなものができるだろうと興味もあります」と語っていました。次はどんな作品が作られるのか?今後の大作にも注目していきたいと思います。

<記事化協力>
ipnotさん(@ipnot)

(黒田芽以)