空を自由に飛びたい、と思った人は結構いるはず。ジェットエンジン付きの特製スーツで空を飛ぶイギリスの発明家が2019年7月30日(現地時間)、沖合を航行するイギリス海軍の哨戒艇に初めて「着陸」する離れ業を見せてくれました。

 この発明家は“ロケットマン”や“リアル・アイアンマン”の別名で知られる、リチャード・ブローニングさん。航空エンジニアの父を持ち、元イギリス海兵隊という経歴のち主です。

 ブローニングさんが開発したジェットスーツは、背中と両腕に合計5基のジェットエンジン(合計出力1050bhp)を取り付けたもの。ジェット燃料かプレミアム軽油を燃料に、最大時速60km、最大高度1万2000フィート(3600m)、最高で8分間の飛行を可能としています。

 これまでイギリス軍のイベントをはじめ、世界20か国でデモンストレーション飛行を行ってきましたが、それはすべて陸上でのもの。海上での運用を試験するため、イギリス海軍が協力することになりました。

 試験が行われたのは、イギリス本土とワイト島を隔てるソレント海峡。ここにイギリス海軍のP2000(アーチャー)級哨戒艇のダッシャー(P-280)を航行させ、その前部甲板に設けられた踏み台状のプラットホームに降り立つことになりました。

 全長20mのダッシャーとサポートするボートは、20ノット(時速36km)で海上を進みます。上甲板のほとんどが操舵室などで占められているため、前部甲板の長さはほんのわずか。しかも着地するプラットホームはサイドテーブルほどの大きさしかありません。

 動く船、そして波の影響で揺れる不安定な場所にピンポイントで降りられるのか。非常に難しいチャレンジでしたが、ブローニングさんは見事に降り立ち、試験を成功させました。

 ダッシャーが所属する第1哨戒艇隊の隊長、ミリー・インガム中佐は「P2000級は小さい面積しか降りる場所を確保できませんから、今回の試験は大きなチャレンジでしたが、テストパイロットのブローニング氏も哨戒艇の乗組員も、“ロケットマン”のアクションをとても楽しんでいましたね」と試験を振り返っています。

 ダッシャー艇長のローレン・ウェバー大尉は「船が20ノットで航行している中でも、リチャード(・ブローニングさん)はP2000に、いとも簡単に離着陸をしていましたね」と、ブローニングさんのジェットスーツの性能に驚いていたようです。

 試験を成功させたブローニングさんは「私の開発したジェットスーツの試験をイギリス海軍と行えて、とても嬉しく思います。貴重な機会を提供していただき、私たちの技術開発において、また新たなマイルストーンとなりました」と語っています。

 ブローニングさんは今回の試験成功を受けて、今後もっと大きな艦艇への発着艦が可能かどうかを検証するプランも持っています。

 インガム中佐は「イギリス海軍は何百年にわたって、防衛技術の最先端を走ってきました。その歴史に誇りを持つつともに、さらなる新しいアイデアやコンセプトを探求し、海での戦闘に反映できるよう努力しています。またこのような形で、イギリスの科学技術発展に貢献したいと思います」と語り、海軍が協力を惜しまないことを強調しています。

<出典・引用>
イギリス海軍 プレスリリース
Image:Royal Navy Crown Copyright 2019

(咲村珠樹)