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【猫と編集部】子猫を助けてしまった件

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 2019年5月のある日の日曜日。私は近所のそば屋でそばをつまみに日本酒を味わい、てくてく夜道を帰宅しておりました。暑くもなく、寒くもなくちょうどいい季節。ほろ酔い加減ということもあり、自然と鼻歌がもれ、かなりご機嫌気分で歩いていたのです。

  •  そんなとき、ふと耳にはいったのがどこからか聞こえる子猫の鳴き声。耳をすますとどうやら暗い夜道の先から聞こえてきます。少しちかづき、目をこらすと見えてきたのは、何かを探して彷徨う子猫。

    ■ 子猫を助けてしまった件

     場所は裏通りとはいえ、大きい通りへの抜け道に使われているため、そこそこ交通量のある道路。猛スピードで通り過ぎる車すらあります。そこを子猫が、あっちにふらふら、こっちにふらふら~。

     酔っ払いおばさん、その瞬間何かがバチーンとスイッチオン。 後先を考えず猛ダッシュしていたのでした。気づいた子猫はあわてて逃げようとしますが、私の圧にのまれてか、少しした先でフリーズ(硬直)。恐らくこれを見ていた人は、よっぽど気持ち悪かったことでしょう。それまで鼻歌まじりに歩いていたババアがいきなりダッシュし、子猫を捕まえたのですから。

     そんなことはさておき、捕まえた猫をよーくよくよく見てみたら、体全体何かで汚れて真っ黒け。さわるとベタベタしています。しかもしばらく何も食べていないのか体はガリガリ。一応、周囲を見渡すも母猫らしきは見当たらず……。

     はて。どうしたものか……なーんて酔っ払いは考えません。深く考えずに猫を小脇にかかえてそのまま再びご機嫌帰宅。そんなこんなで帰宅し、先代猫の遺品から猫缶を出してきてご飯をあげつつ体を再びよく見てみると、なんだか体にノミがいるようす。これまた何も考えずに、そのまま一緒にお風呂に直行。

     酒の力とはすさまじく、ここまでの私は一切何もためらうことなく行動しているのです。その間、子猫は硬直したまま。そして軽く汚れを流した風呂上がりに、食べ足りない風の子猫におかわり猫缶をあたえつつ、ふと我にかえって気づきました。

    「猫拾っちゃった!」

     このお話は、生き物はもう二度と飼わないと心に誓っていたはずの筆者と、所属する編集部を巻き込んだ猫を拾っちゃった時の実話です。なお、話が長くなりすぎるので、数回・数週に分けて掲載いたします。

    ■ もう二度と飼わないと誓ったのに

     そもそも私は子どもの頃から猫より犬派。大人になっても犬好きはかわらず、一人暮らしで犬が飼える環境になってやっとお迎えできたのが、キャバリアという中型犬。しかし当時の私は仕事が忙しく、犬には大変さみしい思いをさせたと思います。

     そんなこんなで暮らしていたある日の出来事、帰宅すると玄関でぽっくり死んでいたのでした。もともと心臓がわるく、体調が悪くなったら病院に来てね。といわれていたのですが、突然の容態急変が起きたようで……。私が留守の間にひっそり息をひきとっていたのでした。

     以来、もう二度と動物は飼わない。と心に誓いをたて、5年ほどの年月がたったある時、会社で保護猫を引き取る機会が訪れました。それが先にふれた「先代猫」(通称:猫社員)。

    猫社員1号

     メインクーンという大型の猫種で、都内某社の会社猫として飼われていたものの、会社の引っ越しの時に置き去りに。しばらく野良としてすごしていたところ、近所の方に保護をされたという猫でした。このため出会ったときには十数歳。推定13といわれていましたが、歯はすでにほとんどなく、実際はもうちょっと行っていたかもしれません。

     こうして奇しくも再び動物を飼う環境となった私。おじいちゃん猫はそれはそれはおだやかで、昼間は会社の窓辺でうとうと。でも時にはすばしっこく、お昼ご飯を食べている間にうっかり席を立とうものなら、弁当の中からお魚だけ抜かれていた経験も……。

     生まれて初めてこの言葉を使ったのも彼に対してでした。「この泥棒猫!」。知ってはいたけれども、一生使うことはないだろうと思っていたこの言葉を発すると決めた瞬間、妙に感動したことを覚えています。

     そうして夜になったら社長ふくめて誰かの家で面倒みるという暮らし。一人ではなく、みんなで面倒をみるというスタイルを数年にわたりとっていたのでした。

     そんな彼が虹の橋を渡ったのは2019年2月。私にとって初めての猫であり、そして最高の猫との悲しい別れだったのです。社内でも猫社員を失った喪失感はつよく、「もう生き物を飼うのはやめよう」というのがどこかで暗黙の了解になっていました。

     それから3か月ほどたった5月の夜……話は冒頭につながります。

    ■ 子猫を育てた経験ゼロ!

     そば屋に飲みに行っただけのつもりが……子猫を連れて帰ってきていた私。酔いからさめて気が動転しつつ……子猫かわいい~という気持ちの狭間にいました。ついでにその動転のまま会社のTwitterにこのとき写真も投稿しています。

     とはいえ、子猫を育てた経験ゼロの私。ノリで風呂にいれて猫缶あたえたけど、これで良かったのか……。急に焦りが出てきました。そこで速やかに、社内LINEで相談。弊社のスタッフは私以外は猫飼いのベテラン揃いなのです。

     日曜夜ということもあり、唯一反応したのが、2匹の猫と暮らす名古屋の梓川みいなというライター。これこれこうで、猫を道路で助けて、ふと気づけば連れて帰ってきた自分に気づいてびっくり。で、風呂にいれて~。と軽く説明。

     「拾ってすぐに風呂にいれた!?うちの子拾ったときに医者に相談したら、入れずに連れてきてくださいって言われたよ。弱ってる子猫ならなおさらいきなり入れちゃ駄目!!」

     叱られました。今回は無事でしたが、弱った子猫をいきなり風呂に入れるのは時に体調をくずすきっかけになることもあるようです。本稿をお読みの読者の方は、絶対真似をしないでください。完全に「お前が言うな!!」ですが……。ちなみに、拾ってすぐ医者に相談できないけれども、体が汚れて気になる。というときには、一時的処置としてお湯で絞ったぬれタオルなどで体を拭いてあげるというのがいいようです。(猛省)

     こうして一通りの軽い子猫レクチャーをうけた私。でも今更ながら心は不安でいっぱい!だって子猫育てたことないんだもん! にも関わらず、ベテラン母が新米母を突き放すがごとく「ま、大丈夫だから、明日病院でもつれてけば~」というあっさり気味な梓川。しょうがないので、とりあえずその日は2時間おきに起きて子猫を見守りつつ不安いっぱいで過ごしたのでした。

    ■ まさかの事実判明 「子猫じゃないよこの子」

     訪れた翌朝。猫を拾ったと会社に相談するとは決めていたものの、まずは始業前に近所の動物病院へ。そこで「子猫をひろったこと」「状態がわからないので健康診断をしてほしいこと」など事情をはなし、まずは健康状態のチェック。

     痩せている以外は特に問題はなく、気になる点としては猫風邪を持っているかもしれないこと。1週間分の薬が処方されることと、そして飲ませ方に関するレクチャーをうけたのでした。しかし、次の瞬間私は驚くべきことを耳にします。

    先生:これ子猫じゃないよ
    中の人:え!
    先生:歯は全部抜け替わってるし、ガリガリなだけ
    中の人:ガリガリなだけ…
    先生:前何飼ってたの?
    中の人:メインクーン…
    先生:あれと比べちゃだめだからwwwww

     メインクーンがなんたるやをご存じ無い方のために軽く説明しておくと、先代猫である猫社員(メインクーン)は、猫種の中でも最大級といわれる種類の猫でした。体重は10キロ以上になる個体もおり、サイズは中型犬とほぼ同じ。先代猫は毛色が黒ということもあり、一番太っていた時期(13キロ)にはタヌキに間違われるほどの大きさでした。これに慣れていたということもあり、どうやらサイズ感を見誤っていたようです。 

     しかし、私目線ではやはりどうしても子猫。念のため他の人にも聞いたところ「小柄な成猫」「栄養失調気味な成猫」という意見がもっぱら。なるほど。これが普通の猫なのか。と改めてまじまじ見たのは言うまでもありません。でも子猫だろうが、成猫だろうが恐らく当時の私はどちらでも拾ったのも間違いありません。

    次回:社長激怒の初対面 「すぐ里子に出して!もう猫なんかいらない!!」
    ※本稿は、おたくま経済新聞に掲載している連載エッセイです。

    (宮崎美和子)

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